上 下
26 / 57

第26話 南条征次郎さんとの出会い (生後46日目)

しおりを挟む
前回のあらすじ
  驚きです。和葉ちゃん、依澄ちゃんは有希ちゃんとお知り合いだったのです。でも、何故でしょう?今、とてつもなく嫌な予感するのですが------。

☆☆☆

  コンコンとドアのノックが聞こえた。

「和葉お嬢様、依澄お嬢様、南条様がお見えになられました。リビングでお待ちになっています。」

え、メイドさん、今なんて言った?南条様?

(あの和葉ちゃん、南条様て、まさか!)
(ラッキー、そのまさかよ。征次郎さん、明希さんと有希ちゃんがこちらに来たのよ。)

「わかりました。今から向かいます。」

なんというタイミング!
俺が遠方憑依してて、今からここにいるのを知っているんじゃないのか?

そんなことを思ったからか、依澄ちゃんが心配そうに尋ねてきた。

(ラッキー、大丈夫?ちゃんと、フォローしてあげるから安心してね。)

なんか依澄ちゃんが神様に見えるぞ。とうとうリビングに到着してしまった。この扉の向こうに3人がいるのか。そういえば、征次郎さんに会うのは初めてだな、きちんと挨拶しておこう。そして、扉が開いた。


--------しばらくは、和葉ちゃん、依澄ちゃんが誘拐事件の?莖末を話した。当然、俺、カイ達、カラス達による犯人達の撃退作戦の話もしてある。2人とも、俺のことを色々フォローしてくれている。ただ、俺が入りにくい。話すタイミングが掴めないぞ。話が終わり、一息ついたところで征次郎さんが動いた。

(ラッキー、和葉に今憑いているんだね。守ってくれてありがとう。)
(え、わかるんですか。あ、初めまして、征次郎さん、パピヨンのラッキーと言います。)

(こちらこそ、初めまして、南条征次郎だ。)

征次郎さんか、見た感じ、厳格そうな雰囲気を感じるな。

(ラッキー、ある程度、霊力を持っているものならわかるぞ。明希や有希にも見えているよ。)

(え、そうなんですか。有希ちゃん、言ってくれればいいのに。)

(凄く言いづらかったのよ。和葉さんの頭の上にちょこんといるんだもの。ふざけてやっているのかなて思ったわ。)

あれ、依澄ちゃんの目が凄く輝いているんだけど、

(姉さんの頭の上にいるんですか。私も見たいんですけど、征次郎さん可能ですか。)
(ああ、可能だよ。少し待ってなさい。)

すると、征次郎さんが和葉ちゃんと依澄ちゃんの前に来て、手を依澄ちゃんの両目に触れて、何かやったぞ。あ、そうか、霊力をほんの少し流し込んでいるんだ。なるほど、ああすれば、短い間、霊を見ることができるんだな。

(あー、ラッキーが見える。凄く可愛い!抱き締めたい!)
(ちょっと、依澄、目が怖いんだけど、私も見たいのに~。)

征次郎さんが手を和葉ちゃんの目に触れて、霊力を軽く流し込んだ。
和葉ちゃんの頭の上にいるから、鏡越しで俺を見ていた。

(ラッキー可愛い!鏡越しなのがちょっと悔しい。)

(そっか、遠方憑依していた時の自分の状態を確認したことがなかったけど、こうなってたのか。ここから動けないかな、ちょっと試してみます。)

(え、ちょっとラッキー、)

有希ちゃんが何か言いかけてるけど、まあいいか。
お、自分の姿を認識したら、ある程度動けるぞ。この感覚からして動ける範囲は憑依者から半径20m程度か。あ、でも、少し動いただけで自分の霊力が少し消費した。過度に動くのは厳禁だな。

(征次郎さん、ありがとう。自分の姿を認識出来たら、多分憑依者の半径20m程度なら歩けることがわかったよ。て、あれ、みんなどうしたの?なんで、目を見開いているの?この感じ、もしかして、また、俺やちゃったの?)

俺がとことこと歩いてたら、全員驚愕の表情をしていた。一番始めに話し出したのは征次郎さんだ。

(いや、ラッキーよくやってくれた。精霊が森に引きこもって以降、悪霊を浄化もしくは滅する術以外が使用不可能となっているのは明希や有希から聞いているな。私は、そういった術を復元させる研究を行っている。)

そう言えば、前にそれらしいことを聞いたな。
なんか、急に張り詰めた雰囲気になったぞ。

(以前聞いた遠方念話、私はその復元をずっと研究していた。遠距離のどの条件や場所においても連絡可能な手段、それを生後1ヶ月の犬が開発したと聞いた時は、とても驚いたよ。そして、今回の遠方憑依、ラッキーすまないが、君が開発した経緯と取得条件、能力を教えてくれないか。頼む。)

え!、征次郎さんがお辞儀をした。

(征次郎さん、やめて下さい。犬にお辞儀なんてしないで下さい。技術でよければ、なんでも教えますから。)

俺は、遠方憑依について、開発経緯と取得条件、能力について全て教えた。

-------また、この雰囲気だ。俺、またとんでもない事をしたのだろうか。

しばらくの沈黙の後、明希さんが話しだした。

(ふふふ、有希、これじゃあラッキーを怒るに怒れないわね。)

有希ちゃんの顔が赤いぞ。

(うー、ラッキー反則よ。目立つ行動は、あれ程しちゃいけないて言ったはずよ。でも理由が-----、本当に怒れないよ。)

ここで、依澄ちゃんが征次郎さんに質問した。

(ラッキーが遠方憑依で、私達を助けてくれたのは凄く嬉しいんです。でも、陰陽師にとって、この技は、どの程度の価値があるのですか?)

おー、今まさに俺も、それが知りたい!

(あー、すまない。あまりに術の性能が良すぎたものでね。簡単に言うと、遠方憑依は、------現時点で新型の術だ。現在において、新たに考案された術というのは、精霊が関わっていないため、必ずデメリットがある。例えば、霊力を莫大に消費するとかだね。だが、この術はデメリットが殆どなく、メリットの方が多すぎるんだよ。最大のメリットは2つある。1つは憑依者と協力することで、憑依者が使えない陰陽の術を使用可能とすること、もう1つが憑依者からある程度離れて活動することが可能ということだ。)

和葉ちゃんも、遠方憑依の真価を理解したみたいだ。

(そうなると、これって公表しない方がいいのでは?)

(無論だ。現時点で公表するつもりはない。この術は訓練すれば、霊力を扱える者なら誰にでもできるからな。悪用される可能性が非常に高い。だが、使用法を間違えなければ、多くの人々の救いの術ともなる。)

げ、そこまでか!有希ちゃんのことだけしか考えてなかった。
そんな俺を明希さんが微笑ましい表情で見ていた。

(ふふ、ラッキーは本当に有希のことしか考えてなかったのね。)

(あ、はい。有希ちゃんの笑顔が見たかったので、何か出来ることはないかと、ずっと模索して考えたのが遠方憑依なんです。まさか、そこまでの価値があるとは。)

そんな有希ちゃんを見ると、顔を真っ赤にしていた。俺、変なこと言ったか?
和葉ちゃんが呆れた表情で、俺を見て言った。

(ラッキーが前世の姿のままで、私達を助けてたら、間違いなく惚れてたわね。)

(姉さんの言ってることわかるよ。ラッキーが人間だったらて思ったよ。有希ちゃんは、そんなラッキーに凄く愛されてるのね。)

(ふぇ、あ、あのそのありがとうございます。ラッキーもありがとう。)

その言葉、本当に前世の時に聞きたかったよ。
あれ、征次郎さんが腕組みをして何かを考えていた。どうしたんだろう?

(ふむ、今後の行動が決まったな。ラッキー、私達と一緒に有希の両親の行方不明の現場に行ってみないか?)
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

処理中です...