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33話 僕のギフトで魔剣を乗っ取ってやる!!
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今の僕にとって、頼りはギフトしかない。あいつは僕に寄生して、余裕で心を乗っ取れると思っているようだけど、ギフト[壁]を甘く見るなよ。[壁]は、物理的にも精神的にも利用される言葉だ。心の中であっても、必ず機能する。そして、その力は物理的な意味合いよりも、遥かに強いはずだ。心の中ならば、余計なものに囚われず、自分の意志の力を100%発揮できるはずだ。
「ほら、その剣を僕に渡せ。どうせ寄生されるのなら、直接持ってお前の全てを掌握してやる」
魔剣ダーインスレイブはソフィア様の顔でニヤッと笑い、こちらへ向かってくる。
「ミズセ、エミルを連れて僕から離れているんだ」
不安げな目で僕を見つめるミズセ、今の彼女にできることは何もないと察したのか頷いてくれた。
「クロード、あんな奴に負けないでね」
「ああ」
ミズセはエミルを必死に持ち上げて、軽く引き摺る形で破壊された側面の壁の方へと歩いていく。あの位置なら、隣の部屋から逃走できる可能性もあるけど、それは限りなく低いだろう。多分、僕が乗っ取られたら、真っ先に殺されるかもしれない。
「覚悟はできたようだね。ほら、私を受け取れ」
僕は、軽く深呼吸をする。さあ、やるか!!
魔剣を受け取った瞬間、僕の中に悍ましい何かが流れ込んできた!!
それと同時に、これまで斬り刻んできた人々の惨殺する瞬間が、次々と脳内にフラッシュバックする。胸を突き刺され絶命する者、首を切断され絶命する者、一刀両断される者、あらゆる斬撃で大勢の人々が次々と地面に倒れ伏す。
これだけじゃない。
魔剣の魔法に魅了され、ダンジョン内で仲間割れを起こし、殺し合いにまで発展し、魔剣の持ち主以外が絶命するものもある。そういった映像が次々と脳内に流れ込んでくるうちに、僕の心は怒りで染まっていく。
こいつだけは、絶対に許してはいけない。
こいつだけは、野放しにしてはいけない。
『どういうことだ? これだけのものを見せられて、何故動揺しない?』
奴の声が、脳内に流れ込んできた!?
『酷く動揺しているよ!! よくもまあ、これだけの人々を殺してきたな!!』
『いいや、お前は全然動じていない。怒ってはいるが、我を忘れるほどではない。普通ならば、これだけの凄惨な場面を見せ続けたら、皆発狂する。ところが、お前はただ普通に怒るだけで、精神に何の異常もきたしていない。耐性スキルを持っていない貴様が、何故この拷問を耐えられる?』
発狂? 全てが生々しく、まるで自分が数百人を殺したかのような錯覚に陥るけど、それだけだな。発狂するほどじゃない。
『そんなことを言われてもわからないよ。僕は小さい頃から両親に、【貴族たるもの、如何なる状況であろうとも、動揺するな、臆するな、前を見ろ】と言われ続けてきた。そんなこと無理だろと思ったけど、命令である以上、それを遂行するため、僕はずっと家族友人をあらゆる意味で殺すイメージだけをやり続け、精神を鍛えてきたつもりだ。やり過ぎて、それが夢に出てくることもあった』
『お前……阿呆なのか、賢いのか…よくわからんな。面白い、実に面白い。お前のような人間とは初めて出会った。それなら、こいつは耐えられるか?』
なんだ!?
急に、僕の心が誰かに噛み付かれたかのような感覚にな……ぐあ痛い!!
もしかして、魔剣に食われているのか?
『クカカカ、美味だ、実に美味だ。お前のような少々変わった人間の心は実に美味い。ほらほら、このまま私に食われ続ける気か?少しは抵抗してみろ』
くそ、言ってくれる!! 奴が僕の中で動くたびに、激痛が走る。
落ち着け、ここからはイメージが重要だ!!
僕の心と奴の心との間に、明確な壁を形成させるんだ。
そして、奴が僕の心を食うというのなら、僕が奴の心を全て食ってやる!!
壁よ、牙で全ての情報を食い尽くし、自分の強度として保管しろ!!
襲いくるもの全てを食い尽くせ!!
今僕が認識している黒くモヤモヤしたもの、これら全てが悪だ!!
全部を食い尽くせ!!
ここは僕の心の中、イメージだけで何でもできる心の世界だ!!
『なんだ? 急に、クロードの心が硬くなった? 何か出現したぞ? ぎゃああ~~~、バカな!? どうして、私にダメージを与えられる? 私は、形のない意志だけの存在だぞ!!』
『お前、僕のギフトを気に入ったと言ってくれたよな? [壁]というものは、現実の世界でも作れるけど、こういった精神的な世界の中にも作れるんだよ。しかも、ここは僕の心の中だ。自分の心の世界なんだから、当然自分が神様だ。神様ならば、何でもできるのさ。お前の全てを食い尽くしてやる!!』
『こんな抵抗の仕方があってたまるか!? 私がお前を食い尽くす!!』
僕は奴の存在を消滅させるため、必死に抗う。でも、奴の魔剣と言われるだけある。奴が僕を食ったら、僕も負けじと奴を食う。魔剣はダメージを受けても身体を回復させ、僕に挑んでくる。それだけ奴の意志の力が強いんだ。今、こいつは僕を食うことに専念し、周囲を見ていない。それならば、今のうちに、奴が他の人に寄生しないよう、魔剣そのものを見えない壁で取り囲み、魔法やギフトを外に発生させないよう隔絶してやる。
絶対に負けない!!
必ず、魔剣を消滅させる!!
「ほら、その剣を僕に渡せ。どうせ寄生されるのなら、直接持ってお前の全てを掌握してやる」
魔剣ダーインスレイブはソフィア様の顔でニヤッと笑い、こちらへ向かってくる。
「ミズセ、エミルを連れて僕から離れているんだ」
不安げな目で僕を見つめるミズセ、今の彼女にできることは何もないと察したのか頷いてくれた。
「クロード、あんな奴に負けないでね」
「ああ」
ミズセはエミルを必死に持ち上げて、軽く引き摺る形で破壊された側面の壁の方へと歩いていく。あの位置なら、隣の部屋から逃走できる可能性もあるけど、それは限りなく低いだろう。多分、僕が乗っ取られたら、真っ先に殺されるかもしれない。
「覚悟はできたようだね。ほら、私を受け取れ」
僕は、軽く深呼吸をする。さあ、やるか!!
魔剣を受け取った瞬間、僕の中に悍ましい何かが流れ込んできた!!
それと同時に、これまで斬り刻んできた人々の惨殺する瞬間が、次々と脳内にフラッシュバックする。胸を突き刺され絶命する者、首を切断され絶命する者、一刀両断される者、あらゆる斬撃で大勢の人々が次々と地面に倒れ伏す。
これだけじゃない。
魔剣の魔法に魅了され、ダンジョン内で仲間割れを起こし、殺し合いにまで発展し、魔剣の持ち主以外が絶命するものもある。そういった映像が次々と脳内に流れ込んでくるうちに、僕の心は怒りで染まっていく。
こいつだけは、絶対に許してはいけない。
こいつだけは、野放しにしてはいけない。
『どういうことだ? これだけのものを見せられて、何故動揺しない?』
奴の声が、脳内に流れ込んできた!?
『酷く動揺しているよ!! よくもまあ、これだけの人々を殺してきたな!!』
『いいや、お前は全然動じていない。怒ってはいるが、我を忘れるほどではない。普通ならば、これだけの凄惨な場面を見せ続けたら、皆発狂する。ところが、お前はただ普通に怒るだけで、精神に何の異常もきたしていない。耐性スキルを持っていない貴様が、何故この拷問を耐えられる?』
発狂? 全てが生々しく、まるで自分が数百人を殺したかのような錯覚に陥るけど、それだけだな。発狂するほどじゃない。
『そんなことを言われてもわからないよ。僕は小さい頃から両親に、【貴族たるもの、如何なる状況であろうとも、動揺するな、臆するな、前を見ろ】と言われ続けてきた。そんなこと無理だろと思ったけど、命令である以上、それを遂行するため、僕はずっと家族友人をあらゆる意味で殺すイメージだけをやり続け、精神を鍛えてきたつもりだ。やり過ぎて、それが夢に出てくることもあった』
『お前……阿呆なのか、賢いのか…よくわからんな。面白い、実に面白い。お前のような人間とは初めて出会った。それなら、こいつは耐えられるか?』
なんだ!?
急に、僕の心が誰かに噛み付かれたかのような感覚にな……ぐあ痛い!!
もしかして、魔剣に食われているのか?
『クカカカ、美味だ、実に美味だ。お前のような少々変わった人間の心は実に美味い。ほらほら、このまま私に食われ続ける気か?少しは抵抗してみろ』
くそ、言ってくれる!! 奴が僕の中で動くたびに、激痛が走る。
落ち着け、ここからはイメージが重要だ!!
僕の心と奴の心との間に、明確な壁を形成させるんだ。
そして、奴が僕の心を食うというのなら、僕が奴の心を全て食ってやる!!
壁よ、牙で全ての情報を食い尽くし、自分の強度として保管しろ!!
襲いくるもの全てを食い尽くせ!!
今僕が認識している黒くモヤモヤしたもの、これら全てが悪だ!!
全部を食い尽くせ!!
ここは僕の心の中、イメージだけで何でもできる心の世界だ!!
『なんだ? 急に、クロードの心が硬くなった? 何か出現したぞ? ぎゃああ~~~、バカな!? どうして、私にダメージを与えられる? 私は、形のない意志だけの存在だぞ!!』
『お前、僕のギフトを気に入ったと言ってくれたよな? [壁]というものは、現実の世界でも作れるけど、こういった精神的な世界の中にも作れるんだよ。しかも、ここは僕の心の中だ。自分の心の世界なんだから、当然自分が神様だ。神様ならば、何でもできるのさ。お前の全てを食い尽くしてやる!!』
『こんな抵抗の仕方があってたまるか!? 私がお前を食い尽くす!!』
僕は奴の存在を消滅させるため、必死に抗う。でも、奴の魔剣と言われるだけある。奴が僕を食ったら、僕も負けじと奴を食う。魔剣はダメージを受けても身体を回復させ、僕に挑んでくる。それだけ奴の意志の力が強いんだ。今、こいつは僕を食うことに専念し、周囲を見ていない。それならば、今のうちに、奴が他の人に寄生しないよう、魔剣そのものを見えない壁で取り囲み、魔法やギフトを外に発生させないよう隔絶してやる。
絶対に負けない!!
必ず、魔剣を消滅させる!!
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