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間章1 勇者達の旅立ち
邪王封印メンバー決定
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○○○ 桜木春人 視点
邪王封印メンバーが決まった。俺、島崎、竜崎、久保、吹山の5人だ。少数精鋭で行くことになった。基礎能力値、魔法、スキル、ユニークスキルの観点から、このメンバーとなった。竜崎と久保は基礎能力値も高く、スキルも豊富にあり、ユニークスキルも強力だ。吹山に関しては、基礎能力値だけで見れば、やや数値は低いものの、なんといっても全魔法に適性があるし、魔法操作と魔法制御能力が極めて高い。現時点で、スキルレベルが8もある。極め付けがユニークスキル『リラクゼーションルーム』。攻撃スキルではないものの、どの場所で使用しても特殊空間のリラクゼーションルームに移動でき、そこで寝泊まり可能という優れものだ。
今回はこの5人だけで、25階層あるCクラスダンジョン制覇を目指す。俺達は、ダンジョン入り口に来ている。
「美香、緊張してきた。今回クリア出来たら、いよいよ旅立ちなんだよね。」
「夕実、そんな堅く考えないで気楽に行こう。」
「そうだぜ、吹山、旅に出たら、精霊に会いに行くんだから、こんな所で緊張してどうすんだよ。気楽にやってけ、気楽に!」
「竜崎君は気楽過ぎます。もう少し緊張感を持った方がいい。」
「竜崎と吹山は足して2で割った感じが丁度いい。」
「久保の言う通りかもな。」
皆んなで笑いあったところで、全員が真剣な表情になった。入り口にいるマーカスさんが激励してくれた。
「これまでの訓練を思い出せば、なんなく突破出来るはずだ。邪族が現れても慌てるな。冷静に行動しろ。ボスであるミノタウルスを討伐しても、ダンジョンコアには触れないように。まあ、ダンジョンコア自体、最下層にある女神像の部屋の奥深くに埋まっているはずだから触れないと思うが、稀にボスに与える強力な攻撃で露出する時があるらしい。ダンジョンコアが破壊されると、ダンジョン自体が崩壊する。現在、このCランクダンジョンは冒険者達にとっても稼ぎ所となっているから注意してくれ。」
「はい、マーカスさん行ってきます。」
○○○
Cクラスダンジョンともなると、罠が卑劣なものがある。
1) ある部屋に入った瞬間、天井自体がゆっくりではなく、すぐに落ちてきた。
2) ある通路を歩いていると、明らかに怪しい紐が垂れ下がっていた。当然無視して通り過ぎようとしたら、床に穴が開き、1つ下のフロアに落とされ、そこはモンスターハウスだった。あの紐は囮だった。
3) 地下への階段を発見したと思い走って行ったら、ただの壁画で壁に激突した。いわゆるトリックアートという罠だった。
など、罠の種類が豊富だった。ちなみに、これは俺の実体験である。
「桜木、わかっていると思うが罠には気をつけろよ。今まで、このダンジョンでどれだけ罠に嵌っているかわかっているだろ。」
久保が俺に注意してきた。まあ、あれだけ嵌っていたら言われるのは当然か。
「ああ、わかってるよ。散々やられてきたからな。」
「桜木は、不用意すぎるんだよ。何もない部屋に簡単に入るし、階段の壁画にも騙されるし、紐の時だって、普通周辺を調べるよ。」
「桜木君は、1人にはしておけませんね。確実に死にます。勇者に、あんなしょぼい罠で死んでもらっては困ります。」
島崎、吹山、その辺りで勘弁して欲しい。
俺の心に、槍がグサグサ刺さっているんだけど。
うん?今、何かいなかったか?
「桜木、どうかしたのか?」
「ああ、竜崎、何か感じなかったか?」
「?別に何も感じないが?」
あれ?気のせいだったのかな?視線を感じたんだけど、一応用心しておくか。現在は3階層、『魔力纏い』のおかげもあって、Cクラス邪族達も比較的楽に倒せるな。
「『魔力纏い』があって助かるね。Cクラスの邪族達なら、私と美香の魔法で、ほぼ一撃で倒せるよ。」
「うん、今ならAクラスとかが来ても大丈夫かもね。」
おいおい、そんな事言っていたら、本当に来るだろうが。
「調子に乗るな!」
《ガン》
「「痛~」」
あー、久保のお叱りがきたか。
「Cクラスでも、たまに邪力を纏ってくる奴がいる事を忘れたのか!そいつらが群れをなして襲ってきたら、さすがに厳しいぞ。油断しないように!」
「「はーい」」
Aクラス、Sクラスか。実際、どの程度の強さなんだろうか?今の俺達で太刀打ち出来るのか、なんにしても邪王が復活した場合討伐しないといけないんだ、もっと強くならないけない。このダンジョンに来るのは、これで3回目だけど、Cクラスの邪族達も強さはかなり異なるな。Bクラスに近い奴と戦った時は、魔力纏いなしだと少し手こずった。それに同じ邪族でも、邪力を纏っていた奴は、完全にBクラスの力があった。こちらも『魔力纏い』で応戦したから手こずる事なく討伐出来た。だが、久保の言う通り、もし群れで来た場合、大きな魔法が使えない分、恐らくかなり手こずるだろう。魔法の規模は小さく、威力の高い魔法を考えないといけないな。
○○○
地下15階層に来たところで、今日の探索は終了となり、『リラクゼーションルーム』の中に入った。今、俺は部屋の中でダンジョンの中に入った時から感じる視線について考えている。俺以外、誰も気がついていない。始めは気のせいかと思い、俺自身も気にも留めなかったが、7階層あたりから視線は1つから3つに増えた。ただ、視線は感じるけど、相手の魔力や邪力がまるで感じられない。
おかしい、妙だ?みんなに言うべきか?いや、もう少し様子を見よう。せめて、魔力か邪力どちらかでもわかれば対処出来るんだが、気配察知のレベルが低いからか?待てよ、そういえば、どうして視線だけを感じる事がわかるんだ。視線察知とかいうスキルはない。----そうか、元の世界でも第6感とかいう感覚で、人の視線や気配を感じ取る人もいたよな。それに優れた技術を持つ人なら、その気配自体を消す事も出来ると聞いたことがある。この異世界には、どういう訳か気配遮断というスキルがない。スキルがなくても、元いた世界と同じ様に感覚で魔力や邪力の気配を遮断する奴等がいるかもしれない。
おいおい、その考えだと探索中にずっと感じていた視線の奴等は、相当強いということになる。不味いな、なんとかして奴等の存在を察知したい。存在察知とかいうスキルはないのか?そもそも、気配察知の気配て厳密にいうと何を指すんだ?魔力?邪力?視線?存在?------もしかして全部か!全部と仮定したら、邪力を遮断しても存在即ち魂を察知することが可能なはずだ。よし、気配察知に集中してみよう。俺の隣には竜崎だったはず、まず普通に気配察知を使って見よう。この魔力の気配、間違いなく竜崎だ。問題はここからだ!いつも、ここで止めてるからな。みんなに危険が迫っているかもしれないんだ。必ず、存在を突き止めてやる。
くそ、駄目だ!全くわからん。何をどう工夫しても、魔力より先が見えてこない。くそ、どうしたらいいんだ?あ、そういえば、似たような状況があったな。あの時は、テスト勉強前で、数学の問題が全くわからず、イライラしていた。そんな時、清水がアドバイスをくれたんだ。
(そういう時は、まず深呼吸。今までの公式を振り返り、思い込みや人の意見といった雑念を捨てて挑めばいい。そうすれば、解ける----かもしれない。)
ふ、あの時、結局解けなかったけど、不思議と悔しい思いはなかった。よし、やってみるか。俺は深呼吸を行い目を閉じた。俺自身の雑念を消して、心が静かになってから全てを気配察知に注いだ。
------あれ?なんだ?急に何も感じなくなった。それになんだろう?何か温かいものを感じる。その方向に集中すると、1つの光があった。その光の周りは荒々しいが、中は温かい、純粋で強い思いみたいなものを感じる。視線、魔力、邪力、どれも違う。なにかもっと奥底にあるものだ、そうか、これが魂の気配か!目を開けると、その方向にいるのは竜崎だ。やったぞ、魂を存在を察知する事が出来た。ステータスを確認すると、気配察知がレベル10(MAX)となっていた。あと、ユニークスキル『精神一到』を獲得していた。
ユニークスキル『精神一到』
機能は-------である。だが、----があった場合は発動しない。
うおお~、凄い強力じゃないか!でも、少しでも-----があったら使用出来ないのか。実戦で、あの時の感覚を思い出せということか。面白い、やってやろうじゃないか!
○○○
翌日、リラクゼーションルームを出る前に、俺は3つ視線の事を話した。いち早く反応したのは久保だ。
「なるほど、3つの視線か。何者なのかは、わからないのか?」
「今は、まだわからない。魔力もしくは邪力を完全に消しているからだろう。次に、視線を感じた時、探ってみるつもりだ。」
「魔力もしくは邪力を自分の感覚で消しているという事は、相当な強者だよな。探って大丈夫なのか?というか探れるのか?」
「竜崎、それについては昨日解決した。」
ここで、俺は気配察知がレベル10になったことと、ユニークスキル『精神一到』を獲得したことを伝えた。
「桜木、凄い!魂を感じとれるんだったら、その視線が何者かもわかるんだね。しかも、ユニークスキル『精神一到』、凄く強力じゃん。」
「凄いです、桜木君。それで、罠も察知出来たら言うことなしでしたね。」
グサ、吹山、一言多いよ。
「いや、探った時点で悟られる危険性もあるから、探る時は前もって言うよ。それと、『精神一到』に関しては、まだ実戦で使用出来ない。----があれば、発動しないんだ。」
「おいおい、それでも凄いぞ。使いこなせれば、邪王の討伐方法もわかるかもしれないな。」
そう、竜崎、そこなんだ。邪王を完全に討伐いや消滅出来る方法がわかるかもしれない。色々と越えるべき壁があるけどな。
「まあ、なんにしても桜木が強くなれたんだ、良いことじゃないか。『精神一到』に関しては、使いこなせる様、訓練していくしかない。魂の察知に関しては、視線を感じた時点で行おう。」
久保がまとめたところで、探索を再開した。
20階層となったところで、再びあの3つの視線を感じた。大方、『リラクゼーションルーム』に入った瞬間、気配を感じとれなくなって焦って探しまくっていたんだろう。
「みんな、視線を感じるぞ。」
「桜木、確かに誰かに見られているわ。」
「ええ、見られてますね。でも、人数まではわかりません。」
「お前ら凄いな、俺と久保は全くわからん。」
「魂の気配を探ってみる。周りを警戒しておいてくれ。」
全員頷いた後、俺は相手の魂を探った。
おいおい、なんだよこれ!魂を確認したら、3つとも憎悪、悪意といったドス黒い闇だぞ。これが邪族か、それもかなりの強者だ。
「みんな、気を付けろ。視線の正体は邪族だ。しかも、このダンジョンの奴らより明らかに格上だ。」
「えー、ということは、B以上てことだよね。」
「そうなると、狙いは明らかに俺達だぞ。なぜ、襲ってこないんだ?」
竜崎の言う通りだ。B以上となると、知能の高い邪族が多い。今までに、襲う機会はあったはすだ。
「もしかしたら、俺達が消耗するのを待っているのかもしれない。B以上だと、知能も高い。相手は勇者だから、まともに戦えば、こちらも深手を負う可能性があると判断しているんだ。」
久保は、本当に冷静に判断しているな。
ここで、珍しく吹山から質問が来た。
「あの1つ質問があります。このダンジョンは王都郊外にある。それでも、王都の中に変わりない。いつの間に、侵入したんだろう。」
その質問に、みんな答えられなかった。ここに侵入してきたということは、外は戦争になっているのかもしれない。
「ちょっと、桜木、考える必要ないて!早く地上に戻ろうよ。」
「待て、島崎!ここは、冷静に行動を起こさないといけない。」
地上には、マーカスさんやクロードさんがいる。今、俺達がすることは、
「このダンジョンの中で、あいつらを始末するぞ。潜んでいる奴らは強い。ダンジョンの外に出すわけには行かない。」
「言うと思ったぜ。だが、どこでやる?」
竜崎は、すでに戦闘モードだな。
「ここは、20階層。女神像があるのは、10階層と最下層の25階だ。地上に戻るにしても、ボス部屋に行くしかない。そこで始末して、地上に戻るぞ。」
島崎、吹山、久保も頷き、全員の意見が一致した。
初めてのBクラス以上の邪族と戦うのか。
----面白い、やってやるぜ!
邪王封印メンバーが決まった。俺、島崎、竜崎、久保、吹山の5人だ。少数精鋭で行くことになった。基礎能力値、魔法、スキル、ユニークスキルの観点から、このメンバーとなった。竜崎と久保は基礎能力値も高く、スキルも豊富にあり、ユニークスキルも強力だ。吹山に関しては、基礎能力値だけで見れば、やや数値は低いものの、なんといっても全魔法に適性があるし、魔法操作と魔法制御能力が極めて高い。現時点で、スキルレベルが8もある。極め付けがユニークスキル『リラクゼーションルーム』。攻撃スキルではないものの、どの場所で使用しても特殊空間のリラクゼーションルームに移動でき、そこで寝泊まり可能という優れものだ。
今回はこの5人だけで、25階層あるCクラスダンジョン制覇を目指す。俺達は、ダンジョン入り口に来ている。
「美香、緊張してきた。今回クリア出来たら、いよいよ旅立ちなんだよね。」
「夕実、そんな堅く考えないで気楽に行こう。」
「そうだぜ、吹山、旅に出たら、精霊に会いに行くんだから、こんな所で緊張してどうすんだよ。気楽にやってけ、気楽に!」
「竜崎君は気楽過ぎます。もう少し緊張感を持った方がいい。」
「竜崎と吹山は足して2で割った感じが丁度いい。」
「久保の言う通りかもな。」
皆んなで笑いあったところで、全員が真剣な表情になった。入り口にいるマーカスさんが激励してくれた。
「これまでの訓練を思い出せば、なんなく突破出来るはずだ。邪族が現れても慌てるな。冷静に行動しろ。ボスであるミノタウルスを討伐しても、ダンジョンコアには触れないように。まあ、ダンジョンコア自体、最下層にある女神像の部屋の奥深くに埋まっているはずだから触れないと思うが、稀にボスに与える強力な攻撃で露出する時があるらしい。ダンジョンコアが破壊されると、ダンジョン自体が崩壊する。現在、このCランクダンジョンは冒険者達にとっても稼ぎ所となっているから注意してくれ。」
「はい、マーカスさん行ってきます。」
○○○
Cクラスダンジョンともなると、罠が卑劣なものがある。
1) ある部屋に入った瞬間、天井自体がゆっくりではなく、すぐに落ちてきた。
2) ある通路を歩いていると、明らかに怪しい紐が垂れ下がっていた。当然無視して通り過ぎようとしたら、床に穴が開き、1つ下のフロアに落とされ、そこはモンスターハウスだった。あの紐は囮だった。
3) 地下への階段を発見したと思い走って行ったら、ただの壁画で壁に激突した。いわゆるトリックアートという罠だった。
など、罠の種類が豊富だった。ちなみに、これは俺の実体験である。
「桜木、わかっていると思うが罠には気をつけろよ。今まで、このダンジョンでどれだけ罠に嵌っているかわかっているだろ。」
久保が俺に注意してきた。まあ、あれだけ嵌っていたら言われるのは当然か。
「ああ、わかってるよ。散々やられてきたからな。」
「桜木は、不用意すぎるんだよ。何もない部屋に簡単に入るし、階段の壁画にも騙されるし、紐の時だって、普通周辺を調べるよ。」
「桜木君は、1人にはしておけませんね。確実に死にます。勇者に、あんなしょぼい罠で死んでもらっては困ります。」
島崎、吹山、その辺りで勘弁して欲しい。
俺の心に、槍がグサグサ刺さっているんだけど。
うん?今、何かいなかったか?
「桜木、どうかしたのか?」
「ああ、竜崎、何か感じなかったか?」
「?別に何も感じないが?」
あれ?気のせいだったのかな?視線を感じたんだけど、一応用心しておくか。現在は3階層、『魔力纏い』のおかげもあって、Cクラス邪族達も比較的楽に倒せるな。
「『魔力纏い』があって助かるね。Cクラスの邪族達なら、私と美香の魔法で、ほぼ一撃で倒せるよ。」
「うん、今ならAクラスとかが来ても大丈夫かもね。」
おいおい、そんな事言っていたら、本当に来るだろうが。
「調子に乗るな!」
《ガン》
「「痛~」」
あー、久保のお叱りがきたか。
「Cクラスでも、たまに邪力を纏ってくる奴がいる事を忘れたのか!そいつらが群れをなして襲ってきたら、さすがに厳しいぞ。油断しないように!」
「「はーい」」
Aクラス、Sクラスか。実際、どの程度の強さなんだろうか?今の俺達で太刀打ち出来るのか、なんにしても邪王が復活した場合討伐しないといけないんだ、もっと強くならないけない。このダンジョンに来るのは、これで3回目だけど、Cクラスの邪族達も強さはかなり異なるな。Bクラスに近い奴と戦った時は、魔力纏いなしだと少し手こずった。それに同じ邪族でも、邪力を纏っていた奴は、完全にBクラスの力があった。こちらも『魔力纏い』で応戦したから手こずる事なく討伐出来た。だが、久保の言う通り、もし群れで来た場合、大きな魔法が使えない分、恐らくかなり手こずるだろう。魔法の規模は小さく、威力の高い魔法を考えないといけないな。
○○○
地下15階層に来たところで、今日の探索は終了となり、『リラクゼーションルーム』の中に入った。今、俺は部屋の中でダンジョンの中に入った時から感じる視線について考えている。俺以外、誰も気がついていない。始めは気のせいかと思い、俺自身も気にも留めなかったが、7階層あたりから視線は1つから3つに増えた。ただ、視線は感じるけど、相手の魔力や邪力がまるで感じられない。
おかしい、妙だ?みんなに言うべきか?いや、もう少し様子を見よう。せめて、魔力か邪力どちらかでもわかれば対処出来るんだが、気配察知のレベルが低いからか?待てよ、そういえば、どうして視線だけを感じる事がわかるんだ。視線察知とかいうスキルはない。----そうか、元の世界でも第6感とかいう感覚で、人の視線や気配を感じ取る人もいたよな。それに優れた技術を持つ人なら、その気配自体を消す事も出来ると聞いたことがある。この異世界には、どういう訳か気配遮断というスキルがない。スキルがなくても、元いた世界と同じ様に感覚で魔力や邪力の気配を遮断する奴等がいるかもしれない。
おいおい、その考えだと探索中にずっと感じていた視線の奴等は、相当強いということになる。不味いな、なんとかして奴等の存在を察知したい。存在察知とかいうスキルはないのか?そもそも、気配察知の気配て厳密にいうと何を指すんだ?魔力?邪力?視線?存在?------もしかして全部か!全部と仮定したら、邪力を遮断しても存在即ち魂を察知することが可能なはずだ。よし、気配察知に集中してみよう。俺の隣には竜崎だったはず、まず普通に気配察知を使って見よう。この魔力の気配、間違いなく竜崎だ。問題はここからだ!いつも、ここで止めてるからな。みんなに危険が迫っているかもしれないんだ。必ず、存在を突き止めてやる。
くそ、駄目だ!全くわからん。何をどう工夫しても、魔力より先が見えてこない。くそ、どうしたらいいんだ?あ、そういえば、似たような状況があったな。あの時は、テスト勉強前で、数学の問題が全くわからず、イライラしていた。そんな時、清水がアドバイスをくれたんだ。
(そういう時は、まず深呼吸。今までの公式を振り返り、思い込みや人の意見といった雑念を捨てて挑めばいい。そうすれば、解ける----かもしれない。)
ふ、あの時、結局解けなかったけど、不思議と悔しい思いはなかった。よし、やってみるか。俺は深呼吸を行い目を閉じた。俺自身の雑念を消して、心が静かになってから全てを気配察知に注いだ。
------あれ?なんだ?急に何も感じなくなった。それになんだろう?何か温かいものを感じる。その方向に集中すると、1つの光があった。その光の周りは荒々しいが、中は温かい、純粋で強い思いみたいなものを感じる。視線、魔力、邪力、どれも違う。なにかもっと奥底にあるものだ、そうか、これが魂の気配か!目を開けると、その方向にいるのは竜崎だ。やったぞ、魂を存在を察知する事が出来た。ステータスを確認すると、気配察知がレベル10(MAX)となっていた。あと、ユニークスキル『精神一到』を獲得していた。
ユニークスキル『精神一到』
機能は-------である。だが、----があった場合は発動しない。
うおお~、凄い強力じゃないか!でも、少しでも-----があったら使用出来ないのか。実戦で、あの時の感覚を思い出せということか。面白い、やってやろうじゃないか!
○○○
翌日、リラクゼーションルームを出る前に、俺は3つ視線の事を話した。いち早く反応したのは久保だ。
「なるほど、3つの視線か。何者なのかは、わからないのか?」
「今は、まだわからない。魔力もしくは邪力を完全に消しているからだろう。次に、視線を感じた時、探ってみるつもりだ。」
「魔力もしくは邪力を自分の感覚で消しているという事は、相当な強者だよな。探って大丈夫なのか?というか探れるのか?」
「竜崎、それについては昨日解決した。」
ここで、俺は気配察知がレベル10になったことと、ユニークスキル『精神一到』を獲得したことを伝えた。
「桜木、凄い!魂を感じとれるんだったら、その視線が何者かもわかるんだね。しかも、ユニークスキル『精神一到』、凄く強力じゃん。」
「凄いです、桜木君。それで、罠も察知出来たら言うことなしでしたね。」
グサ、吹山、一言多いよ。
「いや、探った時点で悟られる危険性もあるから、探る時は前もって言うよ。それと、『精神一到』に関しては、まだ実戦で使用出来ない。----があれば、発動しないんだ。」
「おいおい、それでも凄いぞ。使いこなせれば、邪王の討伐方法もわかるかもしれないな。」
そう、竜崎、そこなんだ。邪王を完全に討伐いや消滅出来る方法がわかるかもしれない。色々と越えるべき壁があるけどな。
「まあ、なんにしても桜木が強くなれたんだ、良いことじゃないか。『精神一到』に関しては、使いこなせる様、訓練していくしかない。魂の察知に関しては、視線を感じた時点で行おう。」
久保がまとめたところで、探索を再開した。
20階層となったところで、再びあの3つの視線を感じた。大方、『リラクゼーションルーム』に入った瞬間、気配を感じとれなくなって焦って探しまくっていたんだろう。
「みんな、視線を感じるぞ。」
「桜木、確かに誰かに見られているわ。」
「ええ、見られてますね。でも、人数まではわかりません。」
「お前ら凄いな、俺と久保は全くわからん。」
「魂の気配を探ってみる。周りを警戒しておいてくれ。」
全員頷いた後、俺は相手の魂を探った。
おいおい、なんだよこれ!魂を確認したら、3つとも憎悪、悪意といったドス黒い闇だぞ。これが邪族か、それもかなりの強者だ。
「みんな、気を付けろ。視線の正体は邪族だ。しかも、このダンジョンの奴らより明らかに格上だ。」
「えー、ということは、B以上てことだよね。」
「そうなると、狙いは明らかに俺達だぞ。なぜ、襲ってこないんだ?」
竜崎の言う通りだ。B以上となると、知能の高い邪族が多い。今までに、襲う機会はあったはすだ。
「もしかしたら、俺達が消耗するのを待っているのかもしれない。B以上だと、知能も高い。相手は勇者だから、まともに戦えば、こちらも深手を負う可能性があると判断しているんだ。」
久保は、本当に冷静に判断しているな。
ここで、珍しく吹山から質問が来た。
「あの1つ質問があります。このダンジョンは王都郊外にある。それでも、王都の中に変わりない。いつの間に、侵入したんだろう。」
その質問に、みんな答えられなかった。ここに侵入してきたということは、外は戦争になっているのかもしれない。
「ちょっと、桜木、考える必要ないて!早く地上に戻ろうよ。」
「待て、島崎!ここは、冷静に行動を起こさないといけない。」
地上には、マーカスさんやクロードさんがいる。今、俺達がすることは、
「このダンジョンの中で、あいつらを始末するぞ。潜んでいる奴らは強い。ダンジョンの外に出すわけには行かない。」
「言うと思ったぜ。だが、どこでやる?」
竜崎は、すでに戦闘モードだな。
「ここは、20階層。女神像があるのは、10階層と最下層の25階だ。地上に戻るにしても、ボス部屋に行くしかない。そこで始末して、地上に戻るぞ。」
島崎、吹山、久保も頷き、全員の意見が一致した。
初めてのBクラス以上の邪族と戦うのか。
----面白い、やってやるぜ!
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