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最終章 ティアナの夢

三十三話 往生際の悪いウィンドル

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 お兄様が反論を入れようとした時、私がすかさずラプアスによる監視を宣言すると、途端に顔色を悪くし、何も言わないまま座り落ちる。私の身分が貴族であれば、このまま口論を続け、王族の権力を乱用し発表を中止させ、ここから追い出すことも可能だろうけど、私はあなたの妹で、兄の傍にいる父と母も静観していることから、兄は反撃できず、もう一人の初老の男フロイド・オグリード侯爵もそのまま私を睨むだけで終わっている。

 だから、私は証拠映像を次々と壁に映し出していく。

・夜中の何処かの個室にて、私から盗んだ魔導具のことで話し合う兄とオグリード侯爵

『よく盗み出せたものだ』
『あははは、私も顧問をしたことがありますからな。ああいった設計図を何処に保管するかは知り尽くしておりますよ。ティアナ様の設計図と高等部の技術があれば…』

『ティアナたち中等部は何も開発できず出席を辞退、中等部の威信も崩れ落ち、逆に高等部の未来は明るくなる。全ての国々が、あの魔導具の購入を望むだろう』
『しかし…宜しいのですか? ウィンドル様自身には、何のメリットもございませんよ?』

『あるさ。妹の悔しがる顔…それを見るだけでも、大きなメリットだ』
『そこまでして…いえ、問いませんよ』

 私の見た限りだと、殿様と悪代官が何処かの料亭で密談しているかのような光景だわ。これだけで決定的証拠となるのだけど、まだまだ出すわよ。

 次は、これよ。
 ルミネの操作により、映像が切り替わる。
 場所は学園の生徒会室。
 兄は生徒会長、誰もいない時に、こんな愚痴を溢すなんてね。

『王城の警備とはいえ、騎士の端くれだ。泥酔して任務を忘れるとはおかしいと思ったが、まさかルミネが絡んでいたとはな。一体、何処からティアナ誘拐の件を知ったんだ? あいつに魔導具を無理矢理製作させて、それとなく高等部の部室にある魔導具とすり替えようと思ったが、もう日数的に無理だ。くそ、どうすればいい?』

 私を誘拐している時点で、兄はベイツ様たちのことを全く信用していない。彼は、兄の言葉が信じられないのか、何も言わず、じっと映像を見続けているけど、二人の関係にヒビが入ったことは間違いないわね。

 次の映像を見て、どう思うかしら?
 ミルフィア様とクリス様には悪いけど、これも映させてもらうわ。

 事前に二人から許可を得ているとはいえ、正直見せたくないのだけど、最後までやり通す。

 次の映像も、場所は生徒会室ね。

『ミルフィアは俺を真に愛してくれている。あいつは優秀で、王子妃として申し分ないが、その愛に応えてやれそうにない。やはり俺が愛するのは………クリスだけだ。ミルフィアを王妃に、クリスを側妃にするのがベストか。俺の理想としては、ティアナをここから追い出し、二人を迎え入れたいところだ』

 最低な男よね。
 あそこまでミルフィア様に愛されていてもなお、クリス様しか見ていないのだから。
 こういう男には、天誅を下さないといけないわ。

「うわあああああ~~~~やめろやめろやめろやめろやめろ~~~~見るな見るな見るな見るな見るな~~~」

 映像の途中で、兄がいきなり奇声を発する。相当混乱しているのか、自分が王族というのを忘れて、席から急に立ち上がり、映し出されている映像目掛けて走り出す。

「これは、全て出鱈目だ~~~。ティアナが俺を出し抜くために、仕掛けた罠だ~~~~~~」

 はあ、往生際の悪い人ね。

「だったら、何故そんなに焦るのですか? 罠だと断言するのなら、証拠を見せてください」
 今の兄の目には、憎しみが宿っている気がする。
 私を殺したいという殺意が感じ取れるもの。

「キューブだ‼︎ お前はデモンズキューブに魅入られている‼︎ あのキューブなら可能だ‼︎ 貴様、こんな映像を製作してまで、そこまでして女王の座が欲しいのか!?」

 アホだ。
 まあ、デモンズキューブの力を行使すれば、兄の言ったことも可能でしょうね。

「私は、王位継承権を放棄しています。女王にはなれません」
「は‼︎ 国を揺るがすほどの実績があれば、復権は可能だ‼︎ 去年と今年の品評会、そしてデモンズキューブ、これらがあるだろうが‼︎ お前は、私を陥れてまで女王の座が欲しいのか‼︎」

『陥れようとしているのは、お前だろう?』と、見学者たちは思っているでしょうね。
兄の目が血走っている。
騎士やルミネたちが動こうとしているけど、私が彼女たちを見て、その行動を目だけで諌める。

「逆のことをいいますが、あなたは王位継承権のない私を陥れてまで国王になりたいのですか? まあ、答えなくても結構ですわ。とりあえず、これだけは言っておきます。たとえ、何が起ころうとも、復権はありえません」

「な……ここまでの事をしておいて、そんな与太話が信じられるか‼︎」

 兄が講義室全体に轟くほどの大声で叫んだ時、ドス黒い巨大な魔力が不意に感じ取れるようになる。私だけじゃなく、ここにいる全員がそれを感じ、声をあげようとするものの、その魔力からは畏怖のような圧力を感じたので、誰もが身体を震わせ身動き一つできない状態となる。でも、そんな状態ながらも、ルミネや騎士たちはその正体を必死に掴もうとしている。

 私は、この気配と魔力を知っている。
 久しぶりの登場ね、デモンズキューブ‼︎

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