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最終章 アキト、隣接する2つの辺境伯領の架け橋となる

27話 品質管理の可能性

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フリオさんが帰ったところで、僕はレンヤさんと合金について、本格的に話し合う事になる。

「アキト、合金について知っている知識はあるか?」
「ステンレスしか知らないです」
「ステンレス?」

「理屈がよくわかりませんけど、鉄を主軸にした合金で、耐食性の強い金属を少量混ぜることで、錆びにくくなるんです。複数存在して、硬度も普通の鉄より少し高かったと思います」

そう言うと、レンヤさんが興味を持ったのか、目を光らせる。

「そいつはいい。鉄と錆に強い金属ならこの場にあるし、まずはそのステンレスという合金を、ミオンの持つスキル[合成]で製作してみよう。具体性に欠ける情報だが、試しに製作してみる価値はある」

合成? そんなスキルがあるんだ。

「どうして、誰も金属を合成に使わないの?」

「このスキルの用途は、魔法や武器と様々ある。武器防具類の場合、結合させたい箇所を取り外し可能にしたいのなら、加工を必要とする。完全一体化させたい場合は、鍛治か合成を必要とするが、通常は手間の少ない合成を使う」

へえ、色々な使い方があるんだ。 

「話を戻すが、武器防具類に使う様々な素材を合成に使用しても、素材同士が喧嘩してしまい、互いの長所を打ち消し、短所だけが残ってしてしまうケースが多い。多くの研究者が合成スキルの秘めたる可能性を信じ、研究しているようだが、成功例はゼロだ。おっと、子供には難しい話だったか。要は、金属の場合、稀少価値の高い物もあるから、100%失敗するとわかる実験に誰も利用しないってことさ」 

なんとなくだけど、わかった。

前世の家の台所とかでよく見かけるステンレスも、研究過程で幾つもの失敗を重ねて出来上がったものなんだね。お金とかも、いっぱい必要な気がする。

「今はミオンもいないし、アキトの品質管理の力を見たい。そうだな…」

急に、レンヤさんがキョロキョロしだすと、徐に歩き出す。到着した場所には、様々な剣が壁に立てかけられていて、倒れないよう専用の器材で固定されている。彼は、そこから一振りの細身のロングソードを持つ。

「コイツがいい。アキト、ギフトを使って、剣の品質をどこまで変えられるかを教えてくれ」

「え!? でも、失敗するかも」
「心配いらん。この剣は、初心者用に製作したもので、そこまで高くない」
「わ、わかりました。やってみます」

今の時点で、この剣の品質をどこまで変えられるかな? この時間、マグナリアはアーサム様と話し合っているだろうから、トウリの魔力を使わせてもらおう。

『トウリ、聞こえる?』
『アキト、どうしたの?』
『今から、僕の品質管理で、武器屋にある剣の品質をどこまで変えられるのか試そうと思うんだ。君の魔力を使っていいかな?』
『面白そう!! 私の魔力を使って!! あとで、結果を聞かせてね』
『うん、ありがとう』

よ~し、早速やってみよう!!
マグナリアから、スキルの扱い方も教わったもんね。
まずは、スキル[鑑別]発動!!

武器名:ロングソード(軽量タイプ)
製作者:鍛治師レンヤ
品質:S
ソマルトリア王国辺境伯領から産出された鉄鉱石から錬金術を使い、純粋な鉄のみを抽出し、剣として仕立て上げたもの。超一流の鍛治師の腕を持つレンヤによって製作されている。靱性、強度、斬れ味、魔力伝導性など剣の持つ力を98%引き出しているが、鉄のみで製作されているため、力量としてはFランク冒険者(初心者)に相応しいだろう。

品質がSになってる。バランスも整っていて、武器の性能としてはこれ以上上げられないと思う。僕の品質管理でいじれる箇所は、どこだろう? あ、品質なんだから、このバランスを色々といじれるんじゃ?

☆計 13個
靱性      ☆☆☆
強度      ☆☆☆☆
斬刃性     ☆☆☆
魔力伝導性   ☆☆
魔力伸縮性   ☆
結合魔石       なし
空きスロット数     0
スキル付与
魔石が接続されていないため付与不可
魔法付与   
魔石が接続されていないため付与不可
靱性・強度・魔力伝導性が一定値に到達していないため付与不可

なんか、すっごく細かい。あ…合計の星数を変えられないけど、5項目に振られた星の位置を自由に変更できる!! 僕は急いでこのデータを、テーブルに置かれている紙に書いていく。

「アキト、これは剣の性能か?」
「はい」
「驚いたな。上位の鑑別でも、ここまで詳しく表記されないぞ」

そうなの? 品質管理にある鑑別は、普通のと違うのかな?

「この星の部分ですけど、合計数を変えられないけど、品質管理で振り分けを自由に設定できるんです」
「なんだって!?」「本当ですか!?」

レンヤさんとケイナが揃って驚いているってことは、品質管理にしか出来ないことなんだ。

「試しに、靱性と強度を星1つに、その分を斬刃性に加えられるか?」
「やってみます」

そうなると、斬刃性が星8つになる。

「あ、出来そうです」
「よし、それなら実行してくれ。壊れても構わない」

僕が品質管理を実行すると、剣が光り、形状が少しずつ変化していく。光が収まると、レンヤさんがすぐに剣を右手で持つ。

「こいつは…刃がかなり鋭利になっているが、剣の強度ともいえる中心部がかなり薄くなっている。どれ」

レンヤさんが小さなマルタを持ってきて真上に放り投げると、剣を十字に振るう。マルタは、綺麗な形状で十字に割れる。

「凄い斬れ味!」
「ケイナもやってみろ」

続けて、ケイナさんが同じような動作で振ると、丸太が見事に割れたけど、2人の表情が優れない。

「レンヤ様、剣が…」
「ああ、次やったら折れるな。ここまで思惑通りにいくとは」

そっか、斬れ味を増加させた分、強度をかなり下げたから、もう限界を迎えたんだ。

「この品質管理、かなり有用だぞ。物体の絶対量を超えない範囲内であれば、自由度がかなり高い。ミオンが帰り次第、鉄と錆に強い金属の配合を変えて、合金をいくつか製作してみよう。まあ、全て失敗するだろうが…」

レンヤさんの意図を掴めたのか、ケイナさんがパンっと手を叩く。

「なるほど、そこをアキト様の品質管理で調整するのですね」

「配合方法が適当である以上、製作した後は全てを品質管理に任せる。成功すれば、新作眼鏡に1歩近づく。アキト、今日はゆっくり休んで明日、今日と同じ時間に来てくれ。明日から品質管理の本領発揮だ」

「はい!」

僕の品質管理って、制限こそあるけど、自由度がかなり高いみたいだ。やる気が漲ってきた。早速、マグナリアやトウリに教えてあげよう。
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