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スズランの話
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近くの山でただ鳥の鳴き声が聞こえる、通りには人通りも無く、午後になっても訪れる客はなかった。
今年で47歳独身、アトピーで悩み、心も病んでいた。
20年続けてきた花屋も、もう潮時か、心が折れそうだった。
もしここで、「ポキリ」と、音がしたら僕の心のおとだろう。
そんな時、一人の女性が訪れた、
「こんにちは、末永さんの紹介で…。」
その女性は、笑ってた、髪は長くブラウン、目の色さえブラウンに見えた、でも、日本人だろう。
「パリジェンヌ!?」と、僕は驚いて声が上ずってしまった。
そう言えばと、ピンとくるものがあった。
数週間前、東京に住んでる親友の末永秀行、通称「米」と話している中で米が、
「俺が、そっちに居る頃からの知り合いで、パリに20年デザイナーとして活躍していた女性が、地元島原に帰ってる、お前の店の近くに住んでるんだ。」と、教えてくれた。
「是非、紹介してくれ、近くを通った時には、花屋に寄って貰えないだろうか。」と、頼んでいた、注文していた女性が今日、現れたのだ。
パリジェンヌは、店内を軽く見まわし、ガラス張りのフラワーキーパーの中の花を見て、
「キレイな花がいっぱいですね。」と、言う、確かに、キーパーの中は花でいっぱいだ、自分のこだわりで、売れ筋じゃない花、他店には無い花で埋め尽くされ、はっきり言えば、売れ残っていた。
「来てくださってありがとうございます。どうぞお座りになってください。」
と、カウンターの席を勧めた。
うちの店は、バーカウンターのようになっていて、目の前に座っていただいて、花束、アレンジを作って、販売していた
もちろん、急ぎのお客様の場合には、作り置きの分を販売するが、そうじゃ無い場合は、好みを聞いて作ってる。
パリジェンヌが聞き上手なところもあって、1時間ほど話したようなきがする、花の事は、少ししか話さず、心の内側の話まで、話してしまった。母親の介護のために、日本に戻って来ているという彼女は、「そろそろ、帰らないと、母が待っているから。」と、席を立った。
一つ一つの動作が優雅で、まさにパリの女性だ。
「また近いうちに来るから。」と、言い店を出て、表に変な具合に斜めに停めてあった、黒い車に乗り込んだ、見送るために見ていると、何やら危なっかしい、慣れない手つきでハンドルを回し、車はバックを始めた、僕は、道路に出て誘導した、おそらくパリでは運転していなかったのだろう、パリジェンヌは、窓を開けて、笑顔で手を振ってくれた。
可愛いと思いつつ、僕も手を振った。
気づくと、少し心に灯りが点いたようでもあった。
パリの話しも聞いたけど、僕とは別世界のはなしで、上流階級との付き合いが多いようだ、なんか、非現実的に感じられた、しかし、彼女にとっては日常で、鼻にかけてるとか、自慢話には聞こえない、不思議な女性であり、初めて会った人種、やっぱりパリジェンヌだった。
数日後、花の仕入れで、朝5時に起きるとパリジェンヌからメールが届いていた、真夜中の着信で。
「ねえ、起きてる、実は明日、パリから友人がやってくるの、彼女はパリで一人ぼっちになっちゃったの、観光も何もしない、ただ私に会うためだけにやってくるの、彼女の寂しい気持ちを、お花で盛り上げたいの、協力してくれる、ホテルにはウエルカムドリンクをたのんでるの(シャンパンといちご)。」
日本酒にスルメのパリバージョンかぁ、さすが、洒落てるなぁと、感心しつつ、続きを読むと。
「シャンパンの横には薔薇が似合うと思うけど、今の彼女にはちょっと重いのよねぇ、チューリップにしようかしら、それとも大輪のガーベラにしようかしら色を混ぜて、どうしよう、まとまらないわ、明日、何時に帰ってくるの12時半までだったら動けるの、それまでにお花準備出来る?それ以降だったら、今回は残念ね、月曜日は花の仕入れで、昼頃に帰るということは聞いてたけど、早めに帰って来て、お願い。」
まだ、朝早いが、僕はメールを返した、4月27日ことだ。
「おはようございます、是非、協力させてください、チューリップの時期は終わり出荷がありません、大輪のガーベラがいいでしょう、品種、色については任せてください、急げば11時頃には店に戻るでしょう。」
僕は急ぎ、市場から帰り、まだ11時、まだ見ぬパリからの友人をイメージして、ソープという大輪のガーベラを仕入れ、ガラスの花器に生けた、電話でもしようかというところに、ちょうどパリジェンヌがやって来た。
「間に合ってよかった、急いでくれたのね、ありがとう。」
円柱状のガラス花器に生けたガーベラを眺める。
「いいわね、もう少し長さを切ってくれる、それと、色を混ぜようかしら。」
僕は不満だった、少し切るのはいいけど
色を混ぜることに関しては、ちょっと…このなんとも言えない、ベージュのような、ピンクのような色合いが持ち味の大輪ガーベラソープに、色を混ぜることは出来ない。
会ったこともないが、パリジェンヌの友人のイメージは、化粧も控えめ、デニムにリネンのシャツが似合う女性なのだ、明る目の色を混ぜた方が、寂しい気持ちをやわらげるとは思わない。
デザイナーで、信念があり、自分の意見を曲げそうにないパリジェンヌに、反論を試みた。
「僕はこれでいいと思います、色を混ぜると、せっかくのソープの淡い色が消されてしまいます、これでお願いします。」
「そうかしら。」少し、考える素振りを見せたけど
「そうね、何も入れない方がいいね。」予想に反して、にっこり笑って頷いてくれた。
今年で47歳独身、アトピーで悩み、心も病んでいた。
20年続けてきた花屋も、もう潮時か、心が折れそうだった。
もしここで、「ポキリ」と、音がしたら僕の心のおとだろう。
そんな時、一人の女性が訪れた、
「こんにちは、末永さんの紹介で…。」
その女性は、笑ってた、髪は長くブラウン、目の色さえブラウンに見えた、でも、日本人だろう。
「パリジェンヌ!?」と、僕は驚いて声が上ずってしまった。
そう言えばと、ピンとくるものがあった。
数週間前、東京に住んでる親友の末永秀行、通称「米」と話している中で米が、
「俺が、そっちに居る頃からの知り合いで、パリに20年デザイナーとして活躍していた女性が、地元島原に帰ってる、お前の店の近くに住んでるんだ。」と、教えてくれた。
「是非、紹介してくれ、近くを通った時には、花屋に寄って貰えないだろうか。」と、頼んでいた、注文していた女性が今日、現れたのだ。
パリジェンヌは、店内を軽く見まわし、ガラス張りのフラワーキーパーの中の花を見て、
「キレイな花がいっぱいですね。」と、言う、確かに、キーパーの中は花でいっぱいだ、自分のこだわりで、売れ筋じゃない花、他店には無い花で埋め尽くされ、はっきり言えば、売れ残っていた。
「来てくださってありがとうございます。どうぞお座りになってください。」
と、カウンターの席を勧めた。
うちの店は、バーカウンターのようになっていて、目の前に座っていただいて、花束、アレンジを作って、販売していた
もちろん、急ぎのお客様の場合には、作り置きの分を販売するが、そうじゃ無い場合は、好みを聞いて作ってる。
パリジェンヌが聞き上手なところもあって、1時間ほど話したようなきがする、花の事は、少ししか話さず、心の内側の話まで、話してしまった。母親の介護のために、日本に戻って来ているという彼女は、「そろそろ、帰らないと、母が待っているから。」と、席を立った。
一つ一つの動作が優雅で、まさにパリの女性だ。
「また近いうちに来るから。」と、言い店を出て、表に変な具合に斜めに停めてあった、黒い車に乗り込んだ、見送るために見ていると、何やら危なっかしい、慣れない手つきでハンドルを回し、車はバックを始めた、僕は、道路に出て誘導した、おそらくパリでは運転していなかったのだろう、パリジェンヌは、窓を開けて、笑顔で手を振ってくれた。
可愛いと思いつつ、僕も手を振った。
気づくと、少し心に灯りが点いたようでもあった。
パリの話しも聞いたけど、僕とは別世界のはなしで、上流階級との付き合いが多いようだ、なんか、非現実的に感じられた、しかし、彼女にとっては日常で、鼻にかけてるとか、自慢話には聞こえない、不思議な女性であり、初めて会った人種、やっぱりパリジェンヌだった。
数日後、花の仕入れで、朝5時に起きるとパリジェンヌからメールが届いていた、真夜中の着信で。
「ねえ、起きてる、実は明日、パリから友人がやってくるの、彼女はパリで一人ぼっちになっちゃったの、観光も何もしない、ただ私に会うためだけにやってくるの、彼女の寂しい気持ちを、お花で盛り上げたいの、協力してくれる、ホテルにはウエルカムドリンクをたのんでるの(シャンパンといちご)。」
日本酒にスルメのパリバージョンかぁ、さすが、洒落てるなぁと、感心しつつ、続きを読むと。
「シャンパンの横には薔薇が似合うと思うけど、今の彼女にはちょっと重いのよねぇ、チューリップにしようかしら、それとも大輪のガーベラにしようかしら色を混ぜて、どうしよう、まとまらないわ、明日、何時に帰ってくるの12時半までだったら動けるの、それまでにお花準備出来る?それ以降だったら、今回は残念ね、月曜日は花の仕入れで、昼頃に帰るということは聞いてたけど、早めに帰って来て、お願い。」
まだ、朝早いが、僕はメールを返した、4月27日ことだ。
「おはようございます、是非、協力させてください、チューリップの時期は終わり出荷がありません、大輪のガーベラがいいでしょう、品種、色については任せてください、急げば11時頃には店に戻るでしょう。」
僕は急ぎ、市場から帰り、まだ11時、まだ見ぬパリからの友人をイメージして、ソープという大輪のガーベラを仕入れ、ガラスの花器に生けた、電話でもしようかというところに、ちょうどパリジェンヌがやって来た。
「間に合ってよかった、急いでくれたのね、ありがとう。」
円柱状のガラス花器に生けたガーベラを眺める。
「いいわね、もう少し長さを切ってくれる、それと、色を混ぜようかしら。」
僕は不満だった、少し切るのはいいけど
色を混ぜることに関しては、ちょっと…このなんとも言えない、ベージュのような、ピンクのような色合いが持ち味の大輪ガーベラソープに、色を混ぜることは出来ない。
会ったこともないが、パリジェンヌの友人のイメージは、化粧も控えめ、デニムにリネンのシャツが似合う女性なのだ、明る目の色を混ぜた方が、寂しい気持ちをやわらげるとは思わない。
デザイナーで、信念があり、自分の意見を曲げそうにないパリジェンヌに、反論を試みた。
「僕はこれでいいと思います、色を混ぜると、せっかくのソープの淡い色が消されてしまいます、これでお願いします。」
「そうかしら。」少し、考える素振りを見せたけど
「そうね、何も入れない方がいいね。」予想に反して、にっこり笑って頷いてくれた。
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