君と探すこの上ない幸せ

夜梟

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第二章

ニ、

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 パソコンの画面が眩しい。もうそんな時間かと時計を見るが、まだ二時を少し過ぎた頃だった。

 部屋を見渡してみて気がつく。このどんよりとした暗さは陽が落ちる暗さではない。

 もう降るのか。
 そう思いながらリモコンで電気を点ける。

 しばらくして、やけに静かになった。それが雪であることが、考えずとも分かった。

 雪が降るとはしゃぎたくなるのは大人になっても同じらしい。
 僕はドキドキとワクワクで頬をほころばせながら雪の音に耳を澄ませる。積もるだろうか、と期待にも似た疑問を浮かべ、ノートパソコンを閉じた。

 雪が降るとよく家族で窓の外を眺めていたものだ。家族全員ではしゃいで、積もったら必ず雪だるまを作りに行く。それが僕の一番の楽しみだった。

 ──いや、僕は雪だるまを作ること自体に楽しみを感じていたのではないのかもしれない。今思い返せば、家族と遊んでいるだけであの頃の僕は楽しんでいた気がする。まあ、それも長くは続かなかったのだが。

 離婚すると告げられたとき、僕はさほど驚かなかったのを覚えている。

 まだ小学二年生だった妹はずっと嫌だと泣きわめいていたが、僕はやっぱりそうなるんだなと何故か冷静な気持ちで二人を見つめていた。離婚を悲しむよりむしろ、早く離婚してほしいとすら思っていた。なにせ、父と母は毎日のように喧嘩していたのだ。二人の罵声を毎晩聞くたび僕は苦しくて仕方がなかった。

 その苦しみからやっと開放される──

 そんな気持ちが父と離れることの悲しさを打ち消していた。

 そうして、僕の家族はばらばらになったまま、今に至る。父が今何をしているのか、どこにいるのか、それは誰も知らない。僕もあれっきり音沙汰も何もないまま、その後のことは何も分からなかった。もしかしたらこの世界の何処かでぽっくり逝っているんじゃないかと、頭の片隅で思う。

 ──いや、そうなっていればいいのに。

 ドキッとした。


 しんしんと雪が降る。エアコンを点けていても、痛いほどの寒さは僕を掴んで逃さない。

 そういえば、雪は音が鳴らないのに、何故“しんしん”という擬音語があるのだろう。

 誰かに聞かれたことがあるような疑問がふと浮かぶ。
 この質問に、僕は上手く答えられるだろうか。想像力も何もない今の僕の頭に、その答えは出てこない。

 きみなら答えられていただろうにな……。

 昔を懐かしむ気持ちが心の中でぐるぐると巡る。

 またもう一度会いたい。
 未練がないなんて嘘だ。

 もう一度、また、見つめたい。

 そのきらきらと輝く笑顔を。
 そのふわふわとした髪の毛を。

 しんしんと静かに降り積もる儚い雪のようなきみを。
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