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第6章 お披露目
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ルーチェはユークに手を引かれて庭園を歩いていた。
(ここは…ゲームで来たわ)
遠い記憶にある通路や花壇の配置と一致する、王太子のための庭園。
ユークルートの終盤、いくつものイベントをこなして彼からここに誘われるとハッピーエンド確定、という場所だった。
(ハッピーエンド…なのかなあ)
わざわざコーヒーを手に入れてくれたり、これまでのユークの言動を見る限り、彼の自分への好意は本物なのだろう。
———けれど…ロゼの問題はまだ何も解決していないし、何よりも。
ルーチェがユークを受け入れる覚悟がまだ出来ていないのだ。
この会わなかった一カ月以上の間、彼がずっと努力をしていた事はフェールたちから聞いている。
ようやく王太子としての自覚が出たと、陛下や家臣たちも喜んでいるという。
ルーチェに宣言した通り変わろうとしているのだろう。
そしてロゼも含めた周囲はルーチェがユークの妃になる事を既に認定しているようだった。
———だけど。
王太子にそこまで想われて拒否できるはずもないし、未だ彼に恋をしているとはいえないけれど、彼に抱く感情は以前よりずっと好意的になった。
おそらくこのまま彼を受け入れる事が皆にとって良い事なのだろう。
だが前世で庶民だった、現世でも田舎子爵の娘という立場からすると…妃というものになるのはハードルが高すぎるのだ。
ふとユークの足が止まった。
「ここは私の一番好きな場所だ」
目の前には小さな噴水があった。
中央に置かれた水が流れる瓶を肩に載せた女性の石像はとても繊細で、噴水の中に咲き乱れる水蓮も美しかった。
「水の流れはいいな。心を鎮めてくれる」
噴水を見つめてユークは言った。
火の魔力を持つ彼はその気性も炎のように激しくなりやすい。
そんな火気を鎮めてくれるのが水…それはゲームでも彼の口から語られた事だった。
「だから私の妃になるのは水のように私を鎮めてくれる者が好ましいと思っていたし、母上もそう思い水魔法を持つロゼを望んでいたようだが」
ユークは振り返った。
「ロゼはさっさとヴァイスが手に入れたし、私も君を望んだ。…だから私は自分で自分を制御しなければならない」
ユークはルーチェの前に立った。
「毎日考えている。どうすれば良き王になれるか、ルーチェが認める男とはどういうものか。望ましい姿に変わろうと考えているけれど、正解が分からないんだ…」
困ったようにユークは眉根を下げた。
「君は私に、どんな王になって欲しい」
それはゲームでもあった問いかけだった。
幾つかある選択肢のうち、どれを選んでも結ばれるけれど…選んだセリフで二人の関係性が変わる、大事な質問だった。
自分はユークに何を望んでいるのだろう。
どうすれば良き王となれるのか。どうして欲しいのか。
いや、彼がずっと考えても分からないのに自分に分かるはずもない。
…自分の事ですら迷い、覚悟も出来ていないのに。
(…そう…二人とも迷っているんだ……)
「———それは私にも分かりません」
ルーチェはユークを見上げた。
「ですから、これから二人で考えていきたいと思います」
「二人で?」
「はい…殿下が王位を継ぐまでまだ時間はあるのですから、それまで二人で迷いながら考えて、答えを見つけられたらいいと」
ユークを見つめてルーチェは言った。
「二人で…そうか、そうだな」
しばらく思案してユークはふ、と笑みを漏らした。
「一人では分からなくとも、二人で考えれば分かるかもしれないな」
「はい」
「それはつまり、私の傍にいてくれるという事だな」
ユークはルーチェの目の前に手を差し出した。
「……はい」
躊躇いながらも手を重ねたルーチェの腰に片方の手を回して引き寄せる。
「ちょっと…!」
「ここは大人しく抱きしめられる所だろう」
そう言ってユークは息がかかるほどルーチェに顔を近づけた。
「私の顔が好きだそうだな」
「…!」
かあっとルーチェの顔が赤くなった。
「そ、それは…」
「私も君の顔も好きだぞ」
剣の訓練もきちんとこなしているのだろう、綺麗な顔立ちに似合わないしっかりした硬い指がルーチェの頬を撫でた。
「あんな鉄拳を振るうとは思えないほど可愛らしい顔だ」
思わず視線を外らせたルーチェに笑みをもらすと、ユークは目の前の赤い頬に口付けた。
「…そうやってすぐに…」
「中身も好きだと思えるように努力するが、こればかりは変えるつもりはないからな」
不敵な笑みを浮かべると、ユークはルーチェの唇を優しくふさいだ。
(ここは…ゲームで来たわ)
遠い記憶にある通路や花壇の配置と一致する、王太子のための庭園。
ユークルートの終盤、いくつものイベントをこなして彼からここに誘われるとハッピーエンド確定、という場所だった。
(ハッピーエンド…なのかなあ)
わざわざコーヒーを手に入れてくれたり、これまでのユークの言動を見る限り、彼の自分への好意は本物なのだろう。
———けれど…ロゼの問題はまだ何も解決していないし、何よりも。
ルーチェがユークを受け入れる覚悟がまだ出来ていないのだ。
この会わなかった一カ月以上の間、彼がずっと努力をしていた事はフェールたちから聞いている。
ようやく王太子としての自覚が出たと、陛下や家臣たちも喜んでいるという。
ルーチェに宣言した通り変わろうとしているのだろう。
そしてロゼも含めた周囲はルーチェがユークの妃になる事を既に認定しているようだった。
———だけど。
王太子にそこまで想われて拒否できるはずもないし、未だ彼に恋をしているとはいえないけれど、彼に抱く感情は以前よりずっと好意的になった。
おそらくこのまま彼を受け入れる事が皆にとって良い事なのだろう。
だが前世で庶民だった、現世でも田舎子爵の娘という立場からすると…妃というものになるのはハードルが高すぎるのだ。
ふとユークの足が止まった。
「ここは私の一番好きな場所だ」
目の前には小さな噴水があった。
中央に置かれた水が流れる瓶を肩に載せた女性の石像はとても繊細で、噴水の中に咲き乱れる水蓮も美しかった。
「水の流れはいいな。心を鎮めてくれる」
噴水を見つめてユークは言った。
火の魔力を持つ彼はその気性も炎のように激しくなりやすい。
そんな火気を鎮めてくれるのが水…それはゲームでも彼の口から語られた事だった。
「だから私の妃になるのは水のように私を鎮めてくれる者が好ましいと思っていたし、母上もそう思い水魔法を持つロゼを望んでいたようだが」
ユークは振り返った。
「ロゼはさっさとヴァイスが手に入れたし、私も君を望んだ。…だから私は自分で自分を制御しなければならない」
ユークはルーチェの前に立った。
「毎日考えている。どうすれば良き王になれるか、ルーチェが認める男とはどういうものか。望ましい姿に変わろうと考えているけれど、正解が分からないんだ…」
困ったようにユークは眉根を下げた。
「君は私に、どんな王になって欲しい」
それはゲームでもあった問いかけだった。
幾つかある選択肢のうち、どれを選んでも結ばれるけれど…選んだセリフで二人の関係性が変わる、大事な質問だった。
自分はユークに何を望んでいるのだろう。
どうすれば良き王となれるのか。どうして欲しいのか。
いや、彼がずっと考えても分からないのに自分に分かるはずもない。
…自分の事ですら迷い、覚悟も出来ていないのに。
(…そう…二人とも迷っているんだ……)
「———それは私にも分かりません」
ルーチェはユークを見上げた。
「ですから、これから二人で考えていきたいと思います」
「二人で?」
「はい…殿下が王位を継ぐまでまだ時間はあるのですから、それまで二人で迷いながら考えて、答えを見つけられたらいいと」
ユークを見つめてルーチェは言った。
「二人で…そうか、そうだな」
しばらく思案してユークはふ、と笑みを漏らした。
「一人では分からなくとも、二人で考えれば分かるかもしれないな」
「はい」
「それはつまり、私の傍にいてくれるという事だな」
ユークはルーチェの目の前に手を差し出した。
「……はい」
躊躇いながらも手を重ねたルーチェの腰に片方の手を回して引き寄せる。
「ちょっと…!」
「ここは大人しく抱きしめられる所だろう」
そう言ってユークは息がかかるほどルーチェに顔を近づけた。
「私の顔が好きだそうだな」
「…!」
かあっとルーチェの顔が赤くなった。
「そ、それは…」
「私も君の顔も好きだぞ」
剣の訓練もきちんとこなしているのだろう、綺麗な顔立ちに似合わないしっかりした硬い指がルーチェの頬を撫でた。
「あんな鉄拳を振るうとは思えないほど可愛らしい顔だ」
思わず視線を外らせたルーチェに笑みをもらすと、ユークは目の前の赤い頬に口付けた。
「…そうやってすぐに…」
「中身も好きだと思えるように努力するが、こればかりは変えるつもりはないからな」
不敵な笑みを浮かべると、ユークはルーチェの唇を優しくふさいだ。
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