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第五章 令嬢は真実を知る
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(レベッカ視点2)
強制力などないはずなのに、何故か攻略対象の一人、リアムとイベント的な事が起きている。
一体どういう事なのだ。
本来学年が違う生徒と会う事は少ないのに、図書館や職員室などでよく遭遇する。
それはゲームのイベントと同じものもあれば違うものもあったりする。
そして最初は顔を合わせるだけだったのが、やがて向こうから話しかけるようになってきたのだ。
ゲームのリアムはとにかく毒舌で言動にトゲがある。
けれど実際のリアムは気の利いた言葉はないけれどそこに悪意はなく、むしろ私への好意すら感じられる…朴訥な青年という印象だ。
そうしてある日、昼食に自分で作ったサンドウィッチをアレクシアと食べていたのを殿下とリアムにおすそ分けするというイベントが発生し、そのお礼にと何故か王宮に招かれ。
さらにその場で何故かリアムと二人きりで庭園を散策し…夜会のパートナーになる事になったのだ。
…いや、おかしくない?
ゲームでリアムのパートナーとなるのは、学年最後に開かれる卒業パーティーだ。
そこでネックレスと、初めての優しい言葉を貰うのだ。
それがどうして…まだ三分の一も経っていない、夏期休暇前の夜会で。
その夜会はとにかく大変だった。
リアムのエスコートにより注目された事も辛かったが…
それよりも大変だったのは、アレクシアがゲームのように、パトリックルートのライバル令嬢に扇子で打たれたのだ。
その時の殿下の反応なども気になったけれど…
見舞いに行ったアレクシアから聞かされた、隠しキャラの事、それから彼女が記憶喪失になった時の症状の話に…胸騒ぎがした。
その症状が、殿下のルートで起きる毒薬事件と似ているのだ。
事件で毒を盛られたのはアレクシアではないはずだが…ゲームに出てこないはずのアレクシアにゲームと同じようなイベントが起きる事や、隠しルートと関わりがある事など…無関係とは思えない。
私はその毒草について調べ出した。
けれど学園の図書館にも、王立図書館にも通ったけれど該当しそうなものはない。
夏期休暇が終わる少し前にアレクシアの元を訪ねると、彼女の身には更に色々な事が起きていた。
アレクシアにゲームでの毒の事を話すと顔を青ざめさせた。
…何か心当たりがあるようだ。
早く毒草が存在するのか見つけなければ。
決意も新たに王立図書館へ行くと、リアムと遭遇した。
彼とは夏期休暇中も何度か会う機会があって…まあ、色々とあったのだけれど。
「そんなものに興味があるのか」
私が手にしていた薬草学の本を見て、リアムは不思議そうな顔をした。
———前は会話がぎこちなかった彼だが、最近は普通に話すようになっていた。
「…ええ…探したい薬草があるのですが、見つからなくて」
さすがに毒草とは言えない。
「もっと詳しい本があればいいのですが…」
ここにある本はあらかた目を通してしまった。
「それなら王宮にある図書館だな。あそこは専門書が充実している」
「…でもそのような場所には入れませんし」
一介の学生が王宮の施設など、使えるはずもない。
「私が一緒なら閲覧許可を出せる」
「え?」
「父の仕事の手伝いでよく利用するから許可証を持っているんだ。私の助手という形にすれば入れる」
「本当ですか?!」
さすが宰相の息子。
そんなコネを持っていたとは。
「でも…リアム様にお付き合い頂くのも申し訳ないです…」
「———では、見返りに私の頼みを聞いてくれるか」
「頼み?」
「…以前もらった、あのパンに具を挟んだものを…また食べたいのだ」
以前…サンドウィッチの事?
「そんな事でよろしければ」
いくらでも作るけど。
「そうか」
そう言ってリアムは…嬉しそうに笑った。
その貴重な笑顔に思わずドキリとしてしまったけれど。
———何故かそのサンドウィッチを持って侯爵家の別邸に行く事になってしまった。
…いや…本来ならば入れない王宮の図書館に入れるんだから…友人のためと思えば…それくらい…
そうして今、私は王宮図書館に来ている。
目の前には見た事のない貴重な本がずらりと並んでいる。
目移りしてしまいそうになるのを堪えて、薬草関係の棚へ向かった。
王立図書館と同じ本が多いけれど…一冊の、古そうな本に目を止めた。
それは国内外の珍しい薬草を集めた本で、個人で研究したものをまとめたもののようだった。
閲覧席に座り、パラパラとめくっていく。
毒草のページは丁寧に…見逃さないように…
「…あった」
柑橘系の香りを持ち、麻痺や発熱の作用のある植物。
そして…過剰に摂取すると記憶障害が起きる事もある…
「———本当にあったんだ…」
「見つかったのか」
不意に背後から声が聞こえてびくりとする。
振り返るとリアムが本を覗き込んでいた。
「毒草?そんなものを調べていたのか」
「あ…ええと…」
しまった…見られてしまった。
「———稀少な植物でレスタンクール領にしか生えない、と」
リアムの言葉にはっとして本を見る。
「レスタンクール…って…」
聞いた事ないけれど…
「北部にある伯爵領だな。確か王妃様の姉君の嫁ぎ先だ」
さすが未来の宰相候補。
全ての領土を把握しているのだろうか。
あれ、王妃様の姉君って…
「そこの下の息子が君のクラスにいるだろう。ベルティーニ家の養子に入った」
「…テオドーロ様?」
アレクシアの弟の…
「え…待って…」
アレクシアは…部屋の水にレモンの香りがしていたと言わなかった?
まさか…
待って…思い出さなきゃ。
王子ルートで毒を与えた犯人は分からなかったけれど…その犯人じゃないと手に入らない場所に生えてるって…
ネットで…確か隠しルートでその謎が明かされると…
隠しルートにはアレクシアも出ていて…
アレクシアに固執するテオドーロ…
隠れキャラは…ヤンデレで…後は確か———シスコン…?
「そんな…まさか」
「レベッカ?」
青ざめた私をリアムが訝しげに見た。
強制力などないはずなのに、何故か攻略対象の一人、リアムとイベント的な事が起きている。
一体どういう事なのだ。
本来学年が違う生徒と会う事は少ないのに、図書館や職員室などでよく遭遇する。
それはゲームのイベントと同じものもあれば違うものもあったりする。
そして最初は顔を合わせるだけだったのが、やがて向こうから話しかけるようになってきたのだ。
ゲームのリアムはとにかく毒舌で言動にトゲがある。
けれど実際のリアムは気の利いた言葉はないけれどそこに悪意はなく、むしろ私への好意すら感じられる…朴訥な青年という印象だ。
そうしてある日、昼食に自分で作ったサンドウィッチをアレクシアと食べていたのを殿下とリアムにおすそ分けするというイベントが発生し、そのお礼にと何故か王宮に招かれ。
さらにその場で何故かリアムと二人きりで庭園を散策し…夜会のパートナーになる事になったのだ。
…いや、おかしくない?
ゲームでリアムのパートナーとなるのは、学年最後に開かれる卒業パーティーだ。
そこでネックレスと、初めての優しい言葉を貰うのだ。
それがどうして…まだ三分の一も経っていない、夏期休暇前の夜会で。
その夜会はとにかく大変だった。
リアムのエスコートにより注目された事も辛かったが…
それよりも大変だったのは、アレクシアがゲームのように、パトリックルートのライバル令嬢に扇子で打たれたのだ。
その時の殿下の反応なども気になったけれど…
見舞いに行ったアレクシアから聞かされた、隠しキャラの事、それから彼女が記憶喪失になった時の症状の話に…胸騒ぎがした。
その症状が、殿下のルートで起きる毒薬事件と似ているのだ。
事件で毒を盛られたのはアレクシアではないはずだが…ゲームに出てこないはずのアレクシアにゲームと同じようなイベントが起きる事や、隠しルートと関わりがある事など…無関係とは思えない。
私はその毒草について調べ出した。
けれど学園の図書館にも、王立図書館にも通ったけれど該当しそうなものはない。
夏期休暇が終わる少し前にアレクシアの元を訪ねると、彼女の身には更に色々な事が起きていた。
アレクシアにゲームでの毒の事を話すと顔を青ざめさせた。
…何か心当たりがあるようだ。
早く毒草が存在するのか見つけなければ。
決意も新たに王立図書館へ行くと、リアムと遭遇した。
彼とは夏期休暇中も何度か会う機会があって…まあ、色々とあったのだけれど。
「そんなものに興味があるのか」
私が手にしていた薬草学の本を見て、リアムは不思議そうな顔をした。
———前は会話がぎこちなかった彼だが、最近は普通に話すようになっていた。
「…ええ…探したい薬草があるのですが、見つからなくて」
さすがに毒草とは言えない。
「もっと詳しい本があればいいのですが…」
ここにある本はあらかた目を通してしまった。
「それなら王宮にある図書館だな。あそこは専門書が充実している」
「…でもそのような場所には入れませんし」
一介の学生が王宮の施設など、使えるはずもない。
「私が一緒なら閲覧許可を出せる」
「え?」
「父の仕事の手伝いでよく利用するから許可証を持っているんだ。私の助手という形にすれば入れる」
「本当ですか?!」
さすが宰相の息子。
そんなコネを持っていたとは。
「でも…リアム様にお付き合い頂くのも申し訳ないです…」
「———では、見返りに私の頼みを聞いてくれるか」
「頼み?」
「…以前もらった、あのパンに具を挟んだものを…また食べたいのだ」
以前…サンドウィッチの事?
「そんな事でよろしければ」
いくらでも作るけど。
「そうか」
そう言ってリアムは…嬉しそうに笑った。
その貴重な笑顔に思わずドキリとしてしまったけれど。
———何故かそのサンドウィッチを持って侯爵家の別邸に行く事になってしまった。
…いや…本来ならば入れない王宮の図書館に入れるんだから…友人のためと思えば…それくらい…
そうして今、私は王宮図書館に来ている。
目の前には見た事のない貴重な本がずらりと並んでいる。
目移りしてしまいそうになるのを堪えて、薬草関係の棚へ向かった。
王立図書館と同じ本が多いけれど…一冊の、古そうな本に目を止めた。
それは国内外の珍しい薬草を集めた本で、個人で研究したものをまとめたもののようだった。
閲覧席に座り、パラパラとめくっていく。
毒草のページは丁寧に…見逃さないように…
「…あった」
柑橘系の香りを持ち、麻痺や発熱の作用のある植物。
そして…過剰に摂取すると記憶障害が起きる事もある…
「———本当にあったんだ…」
「見つかったのか」
不意に背後から声が聞こえてびくりとする。
振り返るとリアムが本を覗き込んでいた。
「毒草?そんなものを調べていたのか」
「あ…ええと…」
しまった…見られてしまった。
「———稀少な植物でレスタンクール領にしか生えない、と」
リアムの言葉にはっとして本を見る。
「レスタンクール…って…」
聞いた事ないけれど…
「北部にある伯爵領だな。確か王妃様の姉君の嫁ぎ先だ」
さすが未来の宰相候補。
全ての領土を把握しているのだろうか。
あれ、王妃様の姉君って…
「そこの下の息子が君のクラスにいるだろう。ベルティーニ家の養子に入った」
「…テオドーロ様?」
アレクシアの弟の…
「え…待って…」
アレクシアは…部屋の水にレモンの香りがしていたと言わなかった?
まさか…
待って…思い出さなきゃ。
王子ルートで毒を与えた犯人は分からなかったけれど…その犯人じゃないと手に入らない場所に生えてるって…
ネットで…確か隠しルートでその謎が明かされると…
隠しルートにはアレクシアも出ていて…
アレクシアに固執するテオドーロ…
隠れキャラは…ヤンデレで…後は確か———シスコン…?
「そんな…まさか」
「レベッカ?」
青ざめた私をリアムが訝しげに見た。
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