平成最後の夏

神崎文尾

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あれはだれ?

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 あの日、梅雨に入ったばかりのころだった。私たちは学校をサボって長者婆の家まで来ていた。歩くたびにずきずき痛む足を引きずりながらだったけど、真奈美はそんなことお構いなしに、私を長者婆の屋敷に連れ出した。
 祖母の家なの、とかなんとか言っていたっけ。真奈美の家は大きくて、資産家なんだろうと思ったけど、長者婆の屋敷も噂に違わぬ大きさだった。違うのはぼろくてじめじめして壊れかけた廃屋だったって事だけ。
「おばあちゃん、どこか行っちゃってさ。でも、良い感じじゃ無い?別荘で二人きりなんて」
 くすくすと気味悪く笑っていた。折から曇り空だったせいでしめった土に足を取られ、ここまで来るのにひどく難儀したというのに真奈美はいつも通り笑っていた。
 ぽつり。
 したたるような遠慮気味の雨粒が一つ二つと続くと、あっという間に車軸を流すような大雨に変わった。私はギプスがとれたばかりの足の痛みを感じ、顔をしかめた。
「あら」
 大変、とばかりに真奈美は屋敷の中に入る。そこは真奈美なりに飾り付けられていた。
「あまり掃除はできないんだけどね」
「そう……」
 やや強引に連れてこられた私にとって、なぜここに居るのか分からなかった。どうせなら、町中のラブホテルでもよかった。この村のどこかでなにかしらやるより、町中の方が、学校をサボっている分ばれる可能性も少ないはずだった。
「そんな堅い顔しないでよ。楽しみましょ」
 楽しいのはそっちだけじゃないか。
 その言葉をなんとかのみこんだ。ここでもし、いらないことを言うと今度は何をされるか分からない。キスだけなら、冗談だと自分でも一笑に付すことが出来る。だけど、それ以上になると戻ってこれなくなりそうで怖かった。
「何を、するの?」
「簡単よ。楽しむ、寝っ転がる、気持ちの良い思いを。この三つがルールね」
「ラブホテルみたい」
「そうね。それが一番近いかも。楓もそんな言葉知っているのね」
「何よそれ。子ども扱いしないで」
 くすくすと笑って、奥に向かって私を連れて行く。廊下は埃が少々あるくらいで控えめだけど掃除されていた。
「ここが私の部屋。ちょっと狭いけど、楽しみましょ」
 引き戸を開けるとそこだけ別の世界みたいだった。畳敷きだけど、出来る限り真奈美の理想に近づけたんだろう。小物が並び、人形が雁首を揃えていた。
「ちょっと、難しいんだけどね。アレンジって」
「どうだろ……わかんないな」
 実際こんな女の子の部屋なんてろくろく見たことが無い。興味がないのもあったし、陸上ばかりやっていたから細かい部分はさっぱりだった。ただ、甘い柑橘系のにおいが漂っていて、湿気がとんでもないことになるこの季節にぴったりのにおいだった。
「さ…………はじめましょ」
 ここで起きたことは、言いたくない。もちろん、消したい記憶でもある。ただ、それでも一言で言い表すなら。
 気持ちよかった。これにつきる。
「結構、乗り気じゃない。実は待ちわびてた?」
「……うるさいよ」
 肌着を整える。真奈美との経験の差を感じながら、真っ赤な顔をどうにか見られないようにとばかり考えていた。行為の間中、真奈美は私の顔と、なめらかさがほとんど無い私の髪を触っていた。
「そんな恥ずかしがらないで、すっごくよかった。明日の目覚めは最高だと思うわ。たぶん」
「………どう、かな」
 私は最悪だ。やってはいけないことでも法律違反でも無い。だというのに、この後ろめたさはたぶん、村に自分が縛り付けられているからだ。村の常識で自分の善し悪しを決めてきたからだ。
「あ、もうこんな時間ね。楽しい時間はすぐ過ぎちゃう。楽しい時間のたったひとつの欠点ね」
「美点、だよ。それは」
 楽しい時間は短いから良いのだ。長く楽しい時間が続くとそれは苦痛に変わる。
 私の楽しい時間の象徴は缶蹴りだ。足が速かったから、確かに鬼でも逃げる方でも楽しかった。だけど缶蹴りの特徴として鬼はなかなか上がれない。楽しい時間は誰かにとって苦痛な時間だ。私はそれが嫌で、好きな缶蹴りもたまに自分からやめた。
 真奈美には、そういう意識はないらしい。自分の楽しいことは人も楽しい。独善的でどことなくわがままな考え方。
「そう?じゃあ、その美点を感じながら帰りましょうか。雨も上がったし、ちょうどいいわ」
「そうだね………あ」
 腰が抜ける。真奈美はそれに笑いを含めながら手を伸ばした。

「あ、そういえば髪を切ったのね。もったいない。綺麗だったのになあ」
「………別に、綺麗なんかじゃ無いよ戸は。そんなに」
「手入れもろくにしてないって言ってたけど。そんなこと無かったわよ。綺麗で、なめらかな髪だった。嫉妬しちゃうくらいにはね」
 真奈美から言われたって、そんなの嫌みにしか聞こえない。それくらい、真奈美の長くこまめな手入れを忘れない艶のある黒髪は綺麗だった。私がやったことは櫛を通すくらいのものだ。特別なことなんて何もしていない。
 智は、いや、真奈美は笑いを絶やさない。ただただ、笑って私の方を見ている。
「でも可愛かったわ。死んでからもそう思う。だって楓は私に無いもの全て持っているもの。それに比べたら私くらいの顔の子なんてそこらに溢れているわ。テレビでもそれ以上がいくらでも見ることが出来る」
「ないものね………」
 汗臭さか、それとも鍛えすぎて太くなったハムストリングか。あばらが浮くくらい絞った細身の身体だろうか。そんなものはいくらでも悪く言えるのだ。私の長所はすでにミソがついていた。
 テレビでいくらでも、と真奈美は言う。でもそれこそ自嘲の言葉としてはおかしい。テレビで見るような綺麗な存在はそれ自体が異次元だ。すくなくとも私はそうした存在が、私の生活の延長線上にあるとは思ってない。
 だが、真奈美は実際に居た。柔らかな唇と、抱くと気持ちの良い体を持っていた。
「ええ、誇れば良いんじゃない?というか、怪我一回くらいで挫折するなんてね、もったいないわよ」
「ああ、そう……」
 幽霊に励まされてもな、そう思った。
「ま、そのおかげなんだけどね。楓を私のものに出来たのは」
「え………」
 時が止まる。
「すっごく意識していたの分かるもん。キスしてから、私を避けまくってたじゃん。そんなのすぐ分かるよ。ちらちら見られるのって、すごくわかりやすいからね。本人が思っている以上に」
「…………」
「でさ。本人はそんなことつゆ知らずなのよね。こっそりやってるからばれないだろうなんて考えて、だんだん大胆になる。ま、それはよかったけどね」
「………ばれてたんだ」
「当たり前よ」
「ほおっておいてくれればよかったのに。そうすれば」
「つまらない退屈な日常が続いたわね、間違いなく。だってあなた、喜んでいたもの。にこにこ笑ってさ。私の方向いてた」
 気のせいだ。そう言いたいのに、真奈美の目は私から離れず、じっと目線を合わせ続けている。
「刺激的だったでしょ。退屈な糞みたいな日常とは違った高揚感。あなたに会えたことだけで、こんな閉塞的な村でも楽しかった」
「…………」
 刺激的だったのは間違いない。村が閉塞的だったのも同じだ。逃げ出せれば良いと思っていた。その手段は陸上だったはずだった。
「でも、あなたが一番好きだったのは陸上。私のキスよりも、一番でゴールテープを切る方がよっぽど好きだったんだもん。勝てないな、って思った。勝てない以上」
 真奈美はそこで初めて顔を曇らせた。
「奪っちゃうしか無いって思った」

 キスをした後、私と真奈美は少しだけ雨宿りして、家に帰ろうとした。雨は上がっていて足下がぐずつき、もやもやした空気が周りを包んでいた。真奈美は充実したようににこにこ笑っていたが、私はそんな気分になれなかった。
「ああ、楽しかった」
「そう……」
 それだけを返すのが精一杯だった。初めての事で疲れていたし、それ以上にいけない一線を渡ってしまった意識が私の中に徒労感をもたらしていた。
 やってしまったやってしまったやってしまった。
 あんなあんな、あんな――。
 少女同士のキス。それだけの事では無い。身体を重ね、お互いの身体をなめ合った。それが気持ちよく言葉には出来ないことだっただけに、考えるだけでも顔が赤くなった。そしてその後、真っ青になった。真奈美が手慣れた様子で布団の戻すのを見るだけで気が狂いそうだった。
「また、やりましょうね。今度は、そう。夏が良いわ」
「な、なんで……」
 出来ればもう二度とやりたくない。だけど真奈美はそうではなかった。一度かみついたら二度と離さない。絡め取った蜘蛛の巣から離してくれない。
「なんで?当たり前よ。だってすっごく楽しかったじゃない」
 充実感に満ちた笑顔だった。私は、それがなんとなく嫌だった。
 私を食む蜘蛛が味を確かめて、思い通りの美味だったような、そんな笑い。
「だめ、もう……これきりにして」
「は?」
 私の言葉に真奈美が目を見開いてすり寄ってくる。
毒が足りない。噛み直さなくては。
複眼ではない分、真奈美の目は二つでさまざまな思いを浮かべていた。
あなたも否定する?
おかしいのは私?それとも世界?
受け入れたはずなのに。
 気持ちよかったでしょう?
 毒は甘くて長持ち。
 巣から出て行くなんて赦さない。
 私とあなたは一緒。
 効きが悪い毒なら――もう一度。
「ひ………」
 顔を近づけ、口が開いて一つも乱れない真っ白な歯並びが見えた。あごの下。首ののど仏にそれが近づく。私の腰を溶かす溶解液。それをもう一度、入れられたら。
 戻れない。
 その瞬間、私は真奈美を押した。とん、と軽く。ただ引き離すだけの目的で。
 真奈美が驚いたような顔で、後ろにたたらを踏む。
ずるり。
ぐずついた足元が、真奈美をお仕置きするみたいに滑った。仕方なし程度に整備された山道から、真奈美が滑り落ちる。磨き上げられたローファーを履いた右足が最後に見えた。
「あ」
 間抜けな私の声。小枝をへし折りながら滑っていく真奈美の音。最後にばりりと変な音がした。
「まな、み?」
 滑らないよう注意して、下を覗き込む。
 真奈美は、少し遠くに居た。霧がかる視界をめんどくさく思いながら、目をこらすと、木によりかかるようにしている真奈美が居た。でも、それは寄りかかっているんじゃなかった。
 小枝では無い。両手でようやくつかめるような枝。それは落雷か何かで割れたようで、大きなささくれの一本一本がとがって刃物のようだった。
 真奈美は、その枝に貫かれていた。おなかだろうか胸だろうか。そこから鋭い枝のささくれが真っ赤になっている。吐血し、控えめな表情のまま死んでいた。
「あ、ああっ………」
 私は、そのまま山道をかけだした。
 殺した、ころ、こ、殺した。真奈美を、あの、真奈美を。蜘蛛を。
 逃げなくちゃ、巣から、ここから。
 それ以外の事なんて、頭の中からすっ飛んでしまっていた。ただ逃げなくてはとしか思っていなかった。
「は……はっはは……あははははははっ!」
 山道から降りたとき、さっきまで小康状態だった空が急にご機嫌ななめになった。夏の夕立。ただそれだけ。なのに、急に降ってきたこの雨が、いとおしくてしょうがなかった。
 洗い流してくれ。何もかも。真奈美との思い出もあの家での出来事も。甘いにおいも。
 そうすれば私は、戻れる気がした。つまらなく、退屈な、愛しい愛しい日常に。

「振り払われたときの私の気持ち分かる?死んですごくつまらなかった。死後の世界ってね。本当に何も無いの。真っ暗で寒くて、冷たくて寂しい。それだけの場所。たぶん想像もつかないわ」
「ここよりも?じめじめしてぼろぼろで、後は腐っていくだけの建物より?」
「目的と結果がつくだけ、ここの方がよっぽどましだわ。あなたもいる」
「いないよ。私はここにはいない。ここはただ腐っていくだけ。それだけの場所だよ」
「でも、私はあなたに会ったわ。あなたがいるだけで、ここがただ腐るだけの場所とは違う。意味のあるものになった」
「真奈美。やめようよ。私が殺したのは、その、ごめん。でも………」
 ああしなければだめだと思ったのだ。ああしないことには、私がつぶれてしまうと思った。真奈美の蜘蛛の巣に絡め取られたまま死んでしまうと思えてしまうほど、私は真奈美におびえていた。
「人を殺しておいて、良いわよね。あなたは反省すれば良い。これを公表しても、あなたの人生は大回転するだけ。証拠も無い。警察はすでに諦めていたもん。だから、あなたが私を殺したなんて伝えてもだめ」
 ちょっとほっとした気分だった。それは私がくずだという証拠だった。
「だからさ………」
 ごろりと私を倒しにかかる。のしかかられたとき、真奈美の漆黒の目が私とかち合った。
「あなたも、こっちに、来てよ」
 区切って言いながら強調し、なめらかな手が。
 あ。

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