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溺愛彼氏の上手な慰め方
溺愛彼氏の口説き方
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温泉の湯気で体が火照って暑いのか、興奮で熱いのか。
すっかり伊上の膝に載り上がって、彼の首に腕を回してキスを受け入れているいまの天希では、到底理解しきれない。
「あまちゃん、そんなに擦りつけてきて、触ってほしいの?」
「やだ、乳首のほうがいい」
「おねだり、可愛い」
口づけながら、胸の先をいじっていた伊上の指が一瞬だけ遠ざかり、天希は甘え縋る目で見つめる。
いつもの如く、性欲に忠実な天希に伊上は嬉しそうに笑った。
天希の唇から離れ、彼は舌を滑らせると、膨らんだ果実を味わうみたいにそこを舐り出す。
片手でもう一つを、そして空いた手は先ほどから、伊上の腹筋に擦りつけられている昂ぶりへ。
「やぁ、またすぐ、出るっ」
「いくらでも」
「俺、もしたいっ」
「上手にイケたらね」
三ヶ所を同時に攻められて、天希は快感をたくさん味わおうと、伊上の肩口に額を預けながら、達してしまうのをこらえる。
そんな様子で、天希の考えなどお見通しの伊上は意地悪く、すべての場所へ与える刺激をさらに強めた。
「やっだ、イクっ、イキたく、ないっ、もっとほしぃ」
「何回でもイかせてあげるから、ほら」
「あっ、ぁっ、きもち、いぃ……こーいち、お尻も」
「僕のをしてくれるんじゃなかった?」
「する! したい。ひぁっ、駄目、もぉっ――っ」
先ほどからとろとろと、先走りをこぼしていた場所を指の腹でいじられ、天希はこらえきれずに再び吐き出す。
はっはっと短い呼吸を繰り返し、伊上の肩に体を預けながら天希は目を閉じた。
「あまちゃんが女の子だったら、いまごろ下の口はドロドロだね」
「んー、なんだっけ、いまどきのボーイズラブで流行ってるやつ」
「なに? 最近のあまちゃんはその手のジャンルも読んでるの?」
「なんか男でも尻が濡れて、子供ができて、運命のなんとかみたいな、カップルが」
「……随分となんでもありな感じだね」
「うん、でもちょっと羨ましい」
二次元の話だからあり得る世界だけれど、現実ではあり得ない。
それでもいま、天希はなんとなくそう感じたのだ。家族がいないのなら、自分が家族になって、彼に新しい家族を――
「あまちゃんは僕の子供がほしいの?」
「こーいちにそっくりな子供がほしい」
「僕は自分に似た子は嫌だな。あまちゃんに似てたら許せる」
「自分のこと嫌いすぎだし」
本気で嫌そうな声を出されて天希はクスッと笑い、息が整ったのを見計らい伊上の膝から降りた。
湯の中で膝立ちになると、先ほどから密かに主張していた伊上のものへ手を伸ばす。
「すげぇ、バキバキになってる。我慢汁でベタベタ」
「実況はいいから」
「いただきまーす」
反り立つ昂ぶりを両手で撫で回していたら、眉間にしわを寄せた伊上に頭を引き寄せられた。
平然としてるが彼は飢えた狼の如き目をしている。
望まれるままに口を開き、天希はこれから自分を気持ち良くしてくれる存在を、喉の奥まで飲み込む。
最初は大きくて上手くできなかったものの、さすがにやり方のコツは覚えた。
「あまちゃん、すごくおいしそうにするよねぇ」
夢中で天希が奉仕していると褒めるみたいに頭を撫でられる。
伊上の気分も上がってきているのか、手にわずかばかり力がこもった。
(いっそ乱暴にしてくれたらいいのに、あれ全然してくれねぇ。……俺、Mっ気あんのかな?)
なんとかその気にさせようと頑張ってみるけれど、紳士で大人な伊上は衝動的な行動はしてくれなかった。
普段から雑な扱いをされた覚えがない。ゴムだって天希がねだらないと、なしではしてくれないほどだ。
「あまちゃん」
「……やら」
そろそろ限界なのだろう伊上に顎先を軽く掴まれたが、視線だけを上げて天希はなおも続けた。
頭上から少しだけ余裕のない息づかいが聞こえ、ますます天希は目の前の昂ぶりに夢中になる。
視線の先にある格好いい腹筋に力が入ると、口の中に伊上の欲が吐き出された。
「ほら、あまちゃん。出して」
「ん……」
「おいしくないでしょ。無理しなくていいよ」
「なんかほら、ちょっと興奮するだろ」
「困った子だね」
「なあ、こーいち。ベッドに行こ?」
「ほんとに困った子だ」
わざと上目遣いのまま見つめたら、大げさなくらいのため息を吐き出された。
それでも伊上自身も望むところなのだろう。両手を伸ばし「おいで」と言ってくれた。
しかし抱き上げられて脱衣所へ行ったものの、またそこでもいちゃいちゃとしてしまい、ベッドにたどり着いたのは十分くらい過ぎてからだった。
「いますぐほしい!」
「無茶言わないで」
「ふ、ぁっ、……指も、気持ち、いぃけど」
「あまちゃんは体力あって良かったね。こんなにイキまくりじゃ、普通は挿れる前に力尽きるよ」
散々、人を昂ぶらせておいて憎たらしい、と思うものの、きっと伊上でなければこうも良くならないだろう。
天希はキスもセックスも好きだけれど〝伊上とする〟が手前に必ずつく。
いまもゆっくりと、中を優しく解してくれる指、そこを意識するだけで腹の奥が、きゅうっと甘やかな感覚で満たされる。
「こーいち、ちゅーしたい」
「いいよ」
ベッドの上では存分に甘えてしまう天希に、伊上はまんざらではなく、いつも嬉しそうな顔をしていた。
横たわっていた体を起こし、二人で向かい合うと天希はもう一度、伊上の首元へしがみつき、唇と指に与えられる気持ち良さに酔いしれる。
「うぅ、またイキそう。やだ、こーいちのほしい」
「可愛い。ほら泣かないの。そろそろ大丈夫だろうから、あげるよ」
「早く」
外さず気持ち良くなる場所を攻めてくる伊上の手で、三度目を迎えそうになり、駄々をこね始めた天希に彼は至極幸せそうな顔で笑っている。
リップ音を立て、顔や首にキスされながら、準備をしているのを見つめ、ようやくお待ちかねのものを与えられた。
先端がすりすりとローションで濡れた場所に擦りつけられる。
わざと焦らされているのがわかって、天希が文句を言いたげに睨み上げると、くぷっと押し込まれた。
だが絶妙に焦れったく、手前の辺りで止まったままだ。
「意地悪、すんなっ」
「ふふ、だって可愛くてたまらない」
「早く! もう我慢、むりっ」
「ごめんごめん。泣きながら怒らないで、可愛くてもっと意地悪したくなる」
「はっぁ……んぅっ」
ぐっと腰を進められて、一気に腹の中がみっちりと埋められていく。
この圧迫感はいまだに慣れないけれど、伊上を感じられる瞬間でもあり、ある意味とても気持ちが満たされる。
背中に回した手に力を込めて、天希は伊上の首筋に顔を埋めながら、彼のすべてを堪能した。
目の前の首に噛みつくと、伊上が小さく笑う。
「動いても大丈夫?」
「ぅん」
少し熱を持った呼気。耳のフチに口づけながら問いかけてくる、低くて甘い声。
何度も頷く天希の返事を見届けた伊上は、両手で天希の太ももを掴むと、ゆっくりと律動を始めた。
中を擦られる感覚に天希の口からは自然と甘えた声が漏れる。
「いぃ、きもちいい。奥、奥いっぱいぐりぐりして」
「ここ?」
「ひぁあっ、そこっ、そこ」
ふーふーと獣みたいな荒い息を吐き、伊上の背中に爪を立ててしまい、視線の先にうっすらと爪痕が残った。
思わずぺろりと天希が彼の肌を舐めれば、かすかに笑った気配を感じる。
「わんこみたい」
「う、うるせぇ――あっぁ」
「可愛い。あまちゃん、可愛いね」
気分が高まったのだろう伊上の腰使いが荒くなる。
少しだけ乱暴になる瞬間が天希は好きだ。雑には扱わないけれど、思わずといった感じで激しく揺さぶられる。
「こーいち、俺と、りゆーなく、別れるとか言ったら――マジでぶん、殴る」
「あまちゃん?」
「俺を、こんなに好きにさせておいて、逃げんな」
ふいに込み上がった感情。この男が自分のものでなくなる、そう考えた途端に天希の瞳から涙がこぼれ出した。
ぎゅうっと先ほどよりきつく抱きしめ、簡単に離れてやらない意思表示をする。
「……なるほど、覚悟しておけっていうのは、これか」
「志築が言ってた。俺と、別れる気だったんだって?」
予想外な天希の言葉に驚いて、動きを止めた伊上の顔を見れば、ふっと息をこぼされた。
余計な真似を、と副音声がついていそうな表情に、天希は不服をあらわにして口を尖らせる。
「それは、その可能性もあるかもしれないと」
「ねぇよ! あんたが本当に俺に愛想尽かして、ガキのお守りはごめんだとか、思わない限り、ねぇよ! 俺は死ぬまであんたといる気だった! 馬鹿……バカ野郎」
「あまちゃん」
「地獄だろうがなんだろうが一緒に堕ちる。でも俺は、あんたを俺なりに幸せにしたいって……思ってたのに」
「あまちゃん、君のことは愛しているし。誰よりも大切だ。けど僕は一生、いまの場所からは抜け出せない」
「俺と、一緒にいる覚悟は、もうできないのか?」
伊上にきつく抱きしめ返されて、天希は応えるため、彼の肩にすり寄った。
中途半端だけれど、絶対的。おかしな立場に据えられている伊上が、足を洗うなんてできないと天希も理解できている。
「覚悟は、しているつもりだったよ。ただ、いまは以前より――」
「俺のこと好きになった? だから怖くなった? そういうのは俺と共有しろよ。そしたらマシになるから」
「…………」
「最後まで、一緒にいる」
天希は顔を上げ、口を噤んでしまった伊上の顔をまっすぐと見つめる。そして手を彼の頬へあてがい、そっと口づけをした。
口先から愛情が伝わるように、何度も。
「自分が信じられねぇなら、俺を信じて」
伊上の指先に力が入ったのを感じ、天希はもう一度、正面から見つめる。
じっと自分を見る瞳からこぼれたものを見て、驚きもしたが、それ以上になぜか嬉しかった。
「大丈夫だ。俺はあんたが望む限り傍にいる。だからもっと、俺を愛してくれ。できたら一生――」
最後まで言葉を紡ぐ前に唇を塞がれてしまった。
感情をぶつけるみたいなキスに、自然と天希の唇が緩む。先ほど伝えた気持ちが伝わったと確信できたのだ。
そのままベッドへ押し倒されて、再び体を揺さぶられる。
遠慮の抜け落ちた動きで、天希も余裕がどんどんとなくなっていく。
頭の中は気持ちいいと愛おしいしかない。
気が済むまで抱き合って、二人がいまいる場所と時間を思い出したのは、二十時を回った頃だ。
のんびりと事後を過ごしていた甘い空間に、ぐうぅっと天希の腹の音が響いた。
伊上と二人、顔を見合わせて笑い、天希はすぐさま「ご飯」とリクエストをする。
「あっ、ちゃんと志築に前言撤回しておいてな」
「……そうだね」
一瞬だけ明後日の方向を向いた気はしたけれど、苦笑しながらも頷いたので天希は満足である。
豪勢な夕食の前に、どうやら無事に目的は達成できたようだ。
end
すっかり伊上の膝に載り上がって、彼の首に腕を回してキスを受け入れているいまの天希では、到底理解しきれない。
「あまちゃん、そんなに擦りつけてきて、触ってほしいの?」
「やだ、乳首のほうがいい」
「おねだり、可愛い」
口づけながら、胸の先をいじっていた伊上の指が一瞬だけ遠ざかり、天希は甘え縋る目で見つめる。
いつもの如く、性欲に忠実な天希に伊上は嬉しそうに笑った。
天希の唇から離れ、彼は舌を滑らせると、膨らんだ果実を味わうみたいにそこを舐り出す。
片手でもう一つを、そして空いた手は先ほどから、伊上の腹筋に擦りつけられている昂ぶりへ。
「やぁ、またすぐ、出るっ」
「いくらでも」
「俺、もしたいっ」
「上手にイケたらね」
三ヶ所を同時に攻められて、天希は快感をたくさん味わおうと、伊上の肩口に額を預けながら、達してしまうのをこらえる。
そんな様子で、天希の考えなどお見通しの伊上は意地悪く、すべての場所へ与える刺激をさらに強めた。
「やっだ、イクっ、イキたく、ないっ、もっとほしぃ」
「何回でもイかせてあげるから、ほら」
「あっ、ぁっ、きもち、いぃ……こーいち、お尻も」
「僕のをしてくれるんじゃなかった?」
「する! したい。ひぁっ、駄目、もぉっ――っ」
先ほどからとろとろと、先走りをこぼしていた場所を指の腹でいじられ、天希はこらえきれずに再び吐き出す。
はっはっと短い呼吸を繰り返し、伊上の肩に体を預けながら天希は目を閉じた。
「あまちゃんが女の子だったら、いまごろ下の口はドロドロだね」
「んー、なんだっけ、いまどきのボーイズラブで流行ってるやつ」
「なに? 最近のあまちゃんはその手のジャンルも読んでるの?」
「なんか男でも尻が濡れて、子供ができて、運命のなんとかみたいな、カップルが」
「……随分となんでもありな感じだね」
「うん、でもちょっと羨ましい」
二次元の話だからあり得る世界だけれど、現実ではあり得ない。
それでもいま、天希はなんとなくそう感じたのだ。家族がいないのなら、自分が家族になって、彼に新しい家族を――
「あまちゃんは僕の子供がほしいの?」
「こーいちにそっくりな子供がほしい」
「僕は自分に似た子は嫌だな。あまちゃんに似てたら許せる」
「自分のこと嫌いすぎだし」
本気で嫌そうな声を出されて天希はクスッと笑い、息が整ったのを見計らい伊上の膝から降りた。
湯の中で膝立ちになると、先ほどから密かに主張していた伊上のものへ手を伸ばす。
「すげぇ、バキバキになってる。我慢汁でベタベタ」
「実況はいいから」
「いただきまーす」
反り立つ昂ぶりを両手で撫で回していたら、眉間にしわを寄せた伊上に頭を引き寄せられた。
平然としてるが彼は飢えた狼の如き目をしている。
望まれるままに口を開き、天希はこれから自分を気持ち良くしてくれる存在を、喉の奥まで飲み込む。
最初は大きくて上手くできなかったものの、さすがにやり方のコツは覚えた。
「あまちゃん、すごくおいしそうにするよねぇ」
夢中で天希が奉仕していると褒めるみたいに頭を撫でられる。
伊上の気分も上がってきているのか、手にわずかばかり力がこもった。
(いっそ乱暴にしてくれたらいいのに、あれ全然してくれねぇ。……俺、Mっ気あんのかな?)
なんとかその気にさせようと頑張ってみるけれど、紳士で大人な伊上は衝動的な行動はしてくれなかった。
普段から雑な扱いをされた覚えがない。ゴムだって天希がねだらないと、なしではしてくれないほどだ。
「あまちゃん」
「……やら」
そろそろ限界なのだろう伊上に顎先を軽く掴まれたが、視線だけを上げて天希はなおも続けた。
頭上から少しだけ余裕のない息づかいが聞こえ、ますます天希は目の前の昂ぶりに夢中になる。
視線の先にある格好いい腹筋に力が入ると、口の中に伊上の欲が吐き出された。
「ほら、あまちゃん。出して」
「ん……」
「おいしくないでしょ。無理しなくていいよ」
「なんかほら、ちょっと興奮するだろ」
「困った子だね」
「なあ、こーいち。ベッドに行こ?」
「ほんとに困った子だ」
わざと上目遣いのまま見つめたら、大げさなくらいのため息を吐き出された。
それでも伊上自身も望むところなのだろう。両手を伸ばし「おいで」と言ってくれた。
しかし抱き上げられて脱衣所へ行ったものの、またそこでもいちゃいちゃとしてしまい、ベッドにたどり着いたのは十分くらい過ぎてからだった。
「いますぐほしい!」
「無茶言わないで」
「ふ、ぁっ、……指も、気持ち、いぃけど」
「あまちゃんは体力あって良かったね。こんなにイキまくりじゃ、普通は挿れる前に力尽きるよ」
散々、人を昂ぶらせておいて憎たらしい、と思うものの、きっと伊上でなければこうも良くならないだろう。
天希はキスもセックスも好きだけれど〝伊上とする〟が手前に必ずつく。
いまもゆっくりと、中を優しく解してくれる指、そこを意識するだけで腹の奥が、きゅうっと甘やかな感覚で満たされる。
「こーいち、ちゅーしたい」
「いいよ」
ベッドの上では存分に甘えてしまう天希に、伊上はまんざらではなく、いつも嬉しそうな顔をしていた。
横たわっていた体を起こし、二人で向かい合うと天希はもう一度、伊上の首元へしがみつき、唇と指に与えられる気持ち良さに酔いしれる。
「うぅ、またイキそう。やだ、こーいちのほしい」
「可愛い。ほら泣かないの。そろそろ大丈夫だろうから、あげるよ」
「早く」
外さず気持ち良くなる場所を攻めてくる伊上の手で、三度目を迎えそうになり、駄々をこね始めた天希に彼は至極幸せそうな顔で笑っている。
リップ音を立て、顔や首にキスされながら、準備をしているのを見つめ、ようやくお待ちかねのものを与えられた。
先端がすりすりとローションで濡れた場所に擦りつけられる。
わざと焦らされているのがわかって、天希が文句を言いたげに睨み上げると、くぷっと押し込まれた。
だが絶妙に焦れったく、手前の辺りで止まったままだ。
「意地悪、すんなっ」
「ふふ、だって可愛くてたまらない」
「早く! もう我慢、むりっ」
「ごめんごめん。泣きながら怒らないで、可愛くてもっと意地悪したくなる」
「はっぁ……んぅっ」
ぐっと腰を進められて、一気に腹の中がみっちりと埋められていく。
この圧迫感はいまだに慣れないけれど、伊上を感じられる瞬間でもあり、ある意味とても気持ちが満たされる。
背中に回した手に力を込めて、天希は伊上の首筋に顔を埋めながら、彼のすべてを堪能した。
目の前の首に噛みつくと、伊上が小さく笑う。
「動いても大丈夫?」
「ぅん」
少し熱を持った呼気。耳のフチに口づけながら問いかけてくる、低くて甘い声。
何度も頷く天希の返事を見届けた伊上は、両手で天希の太ももを掴むと、ゆっくりと律動を始めた。
中を擦られる感覚に天希の口からは自然と甘えた声が漏れる。
「いぃ、きもちいい。奥、奥いっぱいぐりぐりして」
「ここ?」
「ひぁあっ、そこっ、そこ」
ふーふーと獣みたいな荒い息を吐き、伊上の背中に爪を立ててしまい、視線の先にうっすらと爪痕が残った。
思わずぺろりと天希が彼の肌を舐めれば、かすかに笑った気配を感じる。
「わんこみたい」
「う、うるせぇ――あっぁ」
「可愛い。あまちゃん、可愛いね」
気分が高まったのだろう伊上の腰使いが荒くなる。
少しだけ乱暴になる瞬間が天希は好きだ。雑には扱わないけれど、思わずといった感じで激しく揺さぶられる。
「こーいち、俺と、りゆーなく、別れるとか言ったら――マジでぶん、殴る」
「あまちゃん?」
「俺を、こんなに好きにさせておいて、逃げんな」
ふいに込み上がった感情。この男が自分のものでなくなる、そう考えた途端に天希の瞳から涙がこぼれ出した。
ぎゅうっと先ほどよりきつく抱きしめ、簡単に離れてやらない意思表示をする。
「……なるほど、覚悟しておけっていうのは、これか」
「志築が言ってた。俺と、別れる気だったんだって?」
予想外な天希の言葉に驚いて、動きを止めた伊上の顔を見れば、ふっと息をこぼされた。
余計な真似を、と副音声がついていそうな表情に、天希は不服をあらわにして口を尖らせる。
「それは、その可能性もあるかもしれないと」
「ねぇよ! あんたが本当に俺に愛想尽かして、ガキのお守りはごめんだとか、思わない限り、ねぇよ! 俺は死ぬまであんたといる気だった! 馬鹿……バカ野郎」
「あまちゃん」
「地獄だろうがなんだろうが一緒に堕ちる。でも俺は、あんたを俺なりに幸せにしたいって……思ってたのに」
「あまちゃん、君のことは愛しているし。誰よりも大切だ。けど僕は一生、いまの場所からは抜け出せない」
「俺と、一緒にいる覚悟は、もうできないのか?」
伊上にきつく抱きしめ返されて、天希は応えるため、彼の肩にすり寄った。
中途半端だけれど、絶対的。おかしな立場に据えられている伊上が、足を洗うなんてできないと天希も理解できている。
「覚悟は、しているつもりだったよ。ただ、いまは以前より――」
「俺のこと好きになった? だから怖くなった? そういうのは俺と共有しろよ。そしたらマシになるから」
「…………」
「最後まで、一緒にいる」
天希は顔を上げ、口を噤んでしまった伊上の顔をまっすぐと見つめる。そして手を彼の頬へあてがい、そっと口づけをした。
口先から愛情が伝わるように、何度も。
「自分が信じられねぇなら、俺を信じて」
伊上の指先に力が入ったのを感じ、天希はもう一度、正面から見つめる。
じっと自分を見る瞳からこぼれたものを見て、驚きもしたが、それ以上になぜか嬉しかった。
「大丈夫だ。俺はあんたが望む限り傍にいる。だからもっと、俺を愛してくれ。できたら一生――」
最後まで言葉を紡ぐ前に唇を塞がれてしまった。
感情をぶつけるみたいなキスに、自然と天希の唇が緩む。先ほど伝えた気持ちが伝わったと確信できたのだ。
そのままベッドへ押し倒されて、再び体を揺さぶられる。
遠慮の抜け落ちた動きで、天希も余裕がどんどんとなくなっていく。
頭の中は気持ちいいと愛おしいしかない。
気が済むまで抱き合って、二人がいまいる場所と時間を思い出したのは、二十時を回った頃だ。
のんびりと事後を過ごしていた甘い空間に、ぐうぅっと天希の腹の音が響いた。
伊上と二人、顔を見合わせて笑い、天希はすぐさま「ご飯」とリクエストをする。
「あっ、ちゃんと志築に前言撤回しておいてな」
「……そうだね」
一瞬だけ明後日の方向を向いた気はしたけれど、苦笑しながらも頷いたので天希は満足である。
豪勢な夕食の前に、どうやら無事に目的は達成できたようだ。
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