上 下
18 / 44
極甘彼氏を喜ばせる方法

いつもとは違う眼差し

しおりを挟む
 普段の伊上は飄々とした、捉えどころのない性格だ。少しずつ慣れてきたけれど、近しい天希でもなにを考えているか、わからないことがある。
 それが今日に限って、ひどくわかりやすい顔をしていた。熱っぽい眼差しは雄弁で、見つめられるだけで胸が騒ぐ。

 部屋に向かうあいだも、腰に腕を回されたり、すり寄られたりで、鳴り止まない鼓動がうるさくて仕方がなかった。
 いまにも心臓がはち切れそうで、天希は視線を合わせないよう、必死で俯いた。しかし向けられる目が、まるで夏の陽射しのようで、首筋がじりじりとする。

「あまちゃん」

 部屋の扉が閉まり、オートロックが作動したのとほぼ同時か、後ろから抱き込まれた。予想はしていても、力強い抱擁に容易く胸の音が跳ね上がる。
 うなじに唇が触れ、大きな手に身体をまさぐられるだけで、天希は心臓が壊れてしまいそうだった。

「ま、待った。伊上、ここでは、ちょっ、……っ」

 ふいに首筋に噛みつかれて、天希の口から上擦った声が漏れる。さらにその声を誘うように、伊上は服の下へ手を忍ばせてきた。
 直に触れられると途端に肌が敏感になる。指先が滑らされるだけで熱を持って、じわじわとした心地よさが広がった。

「んっ、伊上、……やだ」

「そんなに嫌?」

「ぁっ、や、……やっぁっ、バカ、揉むなっ」

「あまちゃん、わりと胸が大きいよね」

 肌を撫でる手が胸元までたどり着いて、伊上の大きな手のひらにもてあそばれる。それを止めようと腕を掴んだが、指先で胸の尖りをつままれて、天希は膝を震わせた。

 崩れ落ちそうになる天希の身体を、抱き寄せた伊上は、一向に悪戯を止める気配がない。
 首筋に舌が這うたび、指先が尖りをこね回すたび、肩を跳ね上げてしまい、天希は恥ずかしさに打ち震えた。

「やだ、マジ……で、やっ」

「いやいや言われるのも、なかなかいいね」

「バカ、バカ、マジで馬鹿! ぁっ、触んなっ」

 するりと下りた手に股間を掴まれて、天希はとっさに身をよじる。だが力の入らない身体では、大した抵抗にならない。
 そのままデニムのファスナーを引き下ろされて、侵入を簡単に許してしまった。

「ぁっ、あっ、やだ、そんなにしたら、出る」

「イクところ見せて」

 腰に引っかかっていたデニムがずり落ちて、膝下に溜まる。ますます身動きができなくなった天希の熱が、伊上の手で剥き出しにされ、容赦なく扱かれた。
 いきなり与えられた直接的な刺激に、足がガクガクと震え出し、止まらなくなる。

「あぅっ、……んっ」

 思わずあられもない声を上げそうになり、天希は必死で自分の指を噛んだ。それでも興奮で上がった息が指先から漏れてくる。
 声を殺せば殺すほど、伊上の手は天希を追い詰めて、わざと水音が鳴るように動かされた。その音が耳に響くほどに、羞恥と快感で身体が熱くなっていく。

「い、がみっ、やだ、も、出る」

「いいよ」

「ひぁっ」

 その先を促すように先端を指でこじ開けられて、天希は声を抑えられなくなった。立っていることも辛くなり、必死で恋人の腕にしがみつく。
 口先からは甘え縋るような声が漏れて、無意識に腰を揺らしていた。

「あ、あっんっ」

 ビクンと腰が跳ね、吐き出された体液が勢いよく飛び散る。そしてぱたぱたとこぼれ落ちるものが、艶やかに磨き上げられた床を汚した。

「いっぱい出たね。気持ち良かった?」

 肩で息をする天希の耳朶を噛んで、小さく笑った伊上は、きつく首筋に吸いついてくる。痕を残されたことに気づきはしたが、怒る余裕も抵抗する余裕もない。

「もう一回、イケそうだね」

「だ、駄目だっ、まだ、待って」

 吐き出して萎えたはずのものが、伊上の手でまた芯を持ち始める。ぬめりを帯びて、先ほどよりも気持ちがいい。気づかぬうちに腰を突き出すようにしていて、天希は顔が熱くなった。

「あまちゃん、横、見てみて。すごくエッチだよ」

「え? ……っ、あっ、やだっ」

 ふいに顎を掴まれて、横を向かされたそこには大きな姿見がある。
 下半身を剥き出しにして、惚けた顔をしている自分が目に飛び込み、天希はとっさに目を背けた。

 だが意地の悪い恋人は、それを許してはくれず、鏡に向かい合わされる。さらには真正面を向かされて、恥ずかしい自分の姿がそこに映し出された。

「いつもこんな可愛い顔して、僕におねだりするんだよ。たまらないよね」

「ふ、……ぁっ、やだ、恥ずかしいから、やだ」

「でも恥ずかしくて気持ち良くなってきた?」

 鏡の中で薄く笑う伊上と目が合うと、天希の中にゾクゾクとした快感が湧いてくる。彼の手の内で、自分のものがどんどんと、硬さを取り戻していくのがわかる。
 溢れ出してきた蜜がくちゅくちゅと音を立て、たまらず天希は熱い息を吐く。

「気持ちいい? すぐイケそうだね」

「伊上、これや、だ。俺ばっかり気持ちいいの、やだ。……したい」

「ん? あまちゃんはなにがしたいの?」

「うっ、……セックス、あんた、と、……セックスがしたいっ」

「ほんとに、たまらないね」

「んぅっ」

 ため息とともに無理矢理に上向かされて、唇を塞がれた。舌をねじ込まれて、口の中で暴れるそれに翻弄される。
 そのあいだも昂ぶりへの愛撫は止まず、天希は気持ちの良さに頭がショートしかけた。こぼれたものが太ももを伝う感触にも、興奮を煽られる。

「伊上、はやく」

「可愛いね。だけどそんなにいきなりは入らないよ」

「あっ」

「せめてちゃんとほぐしてあげないと、あまちゃんのここ、怪我するよ」

 天希の身体を鏡に押しつけた伊上は、ヌルつくものを掬い、それを孔に塗り込めていく。そのたび少しずつ指が入り込んでくるのを感じ、天希は何度も甘い声を上げて鏡を引っ掻いた。

「すごい、もうヒクついちゃってるね」

「……もっと、奥、足りねぇよ」

「僕も早く入りたいけど、ちょっとだけ我慢して」

「ゆび、指だけ、でイキそ……」

「あまちゃんって、ほんとお尻いじられるの好きだよね」

 必死で鏡にしがみついて、尻を突き出しながら腰を揺らしている。そんな自分には気づいていたが、天希の頭の中はそれ以上に、気持ち良さに埋め尽くされていた。
 指を増やされて拡げられるだけで、そこがひくんと収縮する。

 もっと太くて硬いもので、中を思いきり擦り上げられたい。めちゃくちゃに揺さぶられたい。
 浮かぶのはそればかりで、いまどんな声を上げているのかも、わからなかった。

「ごめんね。ゴムとか用意してる余裕、ないな」

「んっ、こ、いちっ、紘一、はやくっ」

「それ、ちょっとずるい。可愛すぎて、困る」

「あぁっ!」

 乱雑に腰を鷲掴みされると、一気に奥まで熱いものが入り込んできた。押し広げるように、ねじ込まれる質量で息苦しさを覚えるが、快感にメーターが振り切れる。
 身体が跳ねるほど激しく揺さぶられて、天希の口からひっきりなしに嬌声がこぼれた。

「ぁっ、いい、気持ちいいっ……すげぇあつ、いっ」

「あまちゃんの中も、うねってすごく気持ちいいよ」

「んっ、なんか、いつもよりデカい」

「これ、一番奥まで挿れてあげようか?」

「やっ、駄目、あれ、おかしくなる、からっ」

「でも気持ちいいよね?」

「やだっ、当てんなっ」

 ぐりぐりと最奥を切っ先で擦られて、天希は慌てて振り返る。押し止めるように伊上の腕を掴んだが、中への刺激をまったく止めようとしない。
 それどころか泣きそうに顔を歪めた天希に、笑みを深くした。

「簡単に奥まで、抜けちゃいそうだよね」

「ひ、っ、やだ」

「あまちゃんのえっちな泣き顔を見てると、新しい扉を開きそうになる。お漏らしとか潮吹き、させてみたいよね」

「……ぁ、っ」

 いまにも奥を広げて結腸まで入り込みそうな感覚に、天希は歯を食いしばった。鏡を掴む指先は白くなり、じわりと涙が浮かぶ。

「こら、唇を噛んじゃ駄目だよ。ほら、もうしないから声出して。……ほんと可愛くてたまらないな」

「ほんとに、もう、しねぇ?」

「うん、ちゃんと気持ち良くしてあげるから、いっぱい啼いてごらん」

「そ、いう、変態くさいこと、言うな。……や、ぁっ、そんなにしたら、すぐイ、クっ」

「何回でも気持ちよくしてあげるよ」

 いつもより熱さを感じるもので、身体の内側を擦られるたびに、快感が込み上がる。遠慮の欠片もなく腰を使われて、天希は髪を振り乱して甘ったるい声を上げた。
 気持ち良さで力が抜けると、再び鏡に身体を押しつけられる。

「ふ、ぁっ、……だ、めっ、……こう、いちっ、待って、激しいっ、あっぁっ、気持ち良くて、頭、ばかに、なる」

「こういうの、好きだろう? さっきから中、すごいことになってる」

「いいっ、きもち、いいっ、……ぁっ、やっ、イキそうっ」

「可愛い。いいよ、お尻だけでイってごらん」

 うなじに噛みつかれた途端、快感の波がじわじわと押し寄せて、開きっぱなしになった天希の口から唾液がこぼれる。
 チカチカと目の前で星が瞬くような感覚に、限界を感じる。それでも腹の奥に吐き出された欲の熱さに、天希は身体を震わせた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】

彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。 「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

どうも俺の新生活が始まるらしい

氷魚彰人
BL
恋人と別れ、酔い潰れた俺。 翌朝目を覚ますと知らない部屋に居て……。 え? 誰この美中年!? 金持ち美中年×社会人青年 某サイトのコンテスト用に書いた話です 文字数縛りがあったので、エロはないです ごめんなさい

暗殺者のおれが命じられたのは、夫の殺害でした。

おもちDX
BL
暗殺者のアクアはいつも通り仕事を請け負った……はずだった。 ターゲットはなんと夫のブラッド。仮面夫婦だけど、でも……どうしよう⁉︎ 契約結婚だった夫婦の関係性は、暗殺の依頼をきっかけに大きく変わる。 無自覚カップルのすれ違いハッピーラブコメです。ゆるっとファンタジー。 R18オメガバース。 大きな商家を経営する(?)アルファ(26)×暗殺業を隠しているオメガ(18) ※表紙イラストはpicrewのおさむメーカーを使用させていただきました。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

俺(受け)に容赦ないダーリンをどうにかしたい

丸井まー(旧:まー)
BL
受けに物理的に容赦ない攻めのちょっとしたお話。 超絶照れ屋な童貞攻め✕溺愛誘い受け。 ※ツイノベで書いたものです。

その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました

海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。 しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。 偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。 御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。 これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。 【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】 【続編も8/17完結しました。】 「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785 ↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。

処理中です...