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SSデボラと近衛騎士団情報部

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 近衛騎士団は王都の安全と治安維持、犯罪の予防や捜査取り締まりに関する役割を負っている。
 その中でも情報部は、いくつかの部門に分かれ、捜査関連を担当している部署である。


 そんな情報部の事務所の一室にエリクとアルノー、デボラ、情報部の上層部がいた。もちろん情報部の性質上、全館にきっちり防音魔法が掛けられている。

 「───夫人、尋問で答えさせやすくなるような薬は作れたりしませんか?」
 「いいわよ。手持ちがないから、明日でもいいかしら?ここは何か尋問用の魔法具とか所有していないの?」
 「尋問用……ですか。あることはありますが……部長?」

 エリクは部長に判断を仰いだ。

 「まぁこれからも何かと協力を要請することもあるだろう。誓約魔法で縛ればよかろう。夫人、それでもよいか?」
 「ええ。場所柄、機密事項も多いでしょうし、構いませんわ」


 ──────


 誓約魔法で口外しないことを誓うと、デボラはにこやかに笑みを見せながら言った。

 「───それでは、思ったことを口に出してしまいやすくする魔法薬なんていかがかしら?知られたくない不都合な記憶ほど思い出させる魔法具があるのなら、組み合わせて使えばいいのですわ!」

 ちなみにその薬はマニエ家別邸の使用人に使用したあの香のことである。デボラの好みで花の香りにしたのだが、微香のものもできるのだ。(25話)


 「完全に自白させる薬というものは無いのだけど、不意打ちで使えば十分だと思うわ!そうね……薬を飲ませられる状況には、なかなかならないでしょうから……香にしましょう」
 「お香……ですか……?」
 「ええ、お香と言っても別に香りはそんなにしないのよ。誰か風魔法の使い手は居ないの?思い出させる魔法具を起動した後、セザールやアングラードの方に香を飛ばすの。普通の尋問の時は部屋に焚いてしまえばいいのです」


 ───しーん……


 「えっ……夫人って……天才ですか?」
 「そんな薬があるなら、今まで俺たちが拷問してた意味……」
 「殴って指骨折したアイツもこれがあれば……!」
 「もっと早くに欲しかった!」
 「貴族担当の奴らも欲しがりそうだな」

 情報部とはいえ、拷問や尋問が好きだという物好きなどなかなかいない。
 自白剤の登場に近衛騎士団情報部の面々は明るい希望を持った。


 「夫人……近衛騎士団情報部のアドバイザーにならないか!?所属はしなくてもいい!こうやって薬を卸してアドバイスがいただけたら!!!」
 「あの、お誘いは嬉しいのですが、私は裁かれなければならない身ですので……」


 (((よし!無罪放免!国王陛下に嘆願に行こう!!!!!!そして、夫人にこれからもアドバイスを貰おう)))



 後に、デボラ・メディカ男爵は国王直属の名誉薬学研究員、兼、近衛騎士団情報部の名誉アドバイザーとなった。
 数々の魔法薬を作り、魔法具とのえげつない組み合わせの尋問法を編み出していく。

 付いたあだ名は《尋問の女神》。





 (おわり)
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