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27 やっと終わったのね
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(アルベルティーヌside)
「──陛下、私からも一言よろしいでしょうか?」
「よい、クロヴィス、述べてみよ」
「このように自分の行いのせいだと心を痛めたマニエ夫人の計らいで、アルベルティーヌ嬢は環境の整っている彼女の実母の生家であるオーバン侯爵家に養女に出され療養しております」
──見られているわ……!
国王陛下をはじめ、この場の貴族たちの視線が集まる。
視線をさまよわせ、思わずクロヴィス殿下のほうを見やると、優しく微笑まれた。
「彼女は継母のマニエ夫人を慕っており、罰して欲しくないとのこと。──元々、私が内密にマニエ夫人に研究を頼んだことから巻き込んでしまったことです。どうか、寛大な御配慮を賜りますようお願い致します」
──デボラ様、大丈夫かしら……!
「デボラ・マニエには余が植物の研究を命じた。彼女の研究と夫を疑う冷静な目がなければ、こうして真相は暴かれなかっただろう」
──国王陛下……!協力してくださったのだわ……!ありがとうございます……
「──よって、デボラ・マニエは無罪。流行病と違法植物 《魔女殺し》の研究、中和薬と治療薬の開発、王妃殺害の真相を暴いた功績により──余の直属の名誉薬学研究員とし、男爵位を授ける」
国王陛下はデボラ様と私をそれぞれ見た後、傍聴席の貴族たちを見回し手を挙げた。
「──異論のあるものはいるか!」
──しーん……
「セザール・マニエ、アシル・アングラードは磔の刑に処す。アングラード家は取り潰し、国外に追放せよ。近衛よ、こやつらを磔の丘に連れて行け」
──磔の刑……!市街地外れの磔の丘に生きたまま魔法鎖で繋がれる一番残酷な処刑だわ……!
やっと……やっと、終わったのね……
「──ふっ……うう……」
「アルベルティーヌ、よく頑張ったわね、これでもうあなたを狙う者はいないわ!今日からあなたは自由よ!」
「もう大丈夫だ。きっとおじい様はかなりお怒りだからね。奴らはじわじわと痛めつけられるだろう。──君もおじい様と一緒に行って石でも投げつけるかい?」
「まぁ……!お義父様ったら……」
ひょうきんな仕草で、石を投げつける真似をするシリル様はとってもおかしかった。ちょっとお猿さんに似ていたわ!
先日のラクール様のおどけた様子といい、私の周りにはこんなに明るくて素敵な方たちがたくさんいらっしゃる……!
────
「──お話中に失礼します。アルベルティーヌ嬢、お久しぶりです」
「クロヴィス殿下……!っあの、この度は本当にありがとうございました……!ラクール様やポートリエ様やコリンヌに聞いて、ずっと直接お礼を申し上げたくて!」
遠くから見ている時でもかっこよかったのに、近くで見ると本当に素敵だわ……!
オーバン侯爵家で大切にされて、少し健康そうな見た目にはなってきたけれど、まだ全然見られる見た目ではないから……恥ずかしいわ……
「いや、伯爵夫妻が亡くなったと聞いてから心配はしていたんだが……気が付かず君に辛い思いをさせてしまった。もっと早くに調べていれば良かった。──すまない」
「……クロちゃん」
ちょっと気まずそうに首を動かした殿下の仕草が、何故かクロちゃんに重なった。
「──す……すみません!少し前にお世話をしていた黒鷹を思い出してしまいまして……!丁度、黒い翼に金色の瞳だったものですから……!決して殿下に馴れ馴れしくしようとしたわけではっ……っ」
「あっ……あぁ、大丈夫だ。君はクロの手当をしてくれたのだろう?あれは王族の鷹なんだ。改めて礼を言う。助けてくれてありがとう」
一瞬驚いた表情をされていたクロヴィス殿下もまたクロちゃんに似ていた。
──飼い主に似るってよく言いますし、クロヴィス殿下がクロちゃんに似ているのではなく、クロちゃんがクロヴィス殿下に似ているのね……!
同じ名前を付けるくらいですもの、殿下はきっとクロちゃんをとても可愛がっていらっしゃるのでしょうね……!
「とても可愛がっていらっしゃるのですね!殿下のお役に立てて嬉しいですわ!」
「──陛下、私からも一言よろしいでしょうか?」
「よい、クロヴィス、述べてみよ」
「このように自分の行いのせいだと心を痛めたマニエ夫人の計らいで、アルベルティーヌ嬢は環境の整っている彼女の実母の生家であるオーバン侯爵家に養女に出され療養しております」
──見られているわ……!
国王陛下をはじめ、この場の貴族たちの視線が集まる。
視線をさまよわせ、思わずクロヴィス殿下のほうを見やると、優しく微笑まれた。
「彼女は継母のマニエ夫人を慕っており、罰して欲しくないとのこと。──元々、私が内密にマニエ夫人に研究を頼んだことから巻き込んでしまったことです。どうか、寛大な御配慮を賜りますようお願い致します」
──デボラ様、大丈夫かしら……!
「デボラ・マニエには余が植物の研究を命じた。彼女の研究と夫を疑う冷静な目がなければ、こうして真相は暴かれなかっただろう」
──国王陛下……!協力してくださったのだわ……!ありがとうございます……
「──よって、デボラ・マニエは無罪。流行病と違法植物 《魔女殺し》の研究、中和薬と治療薬の開発、王妃殺害の真相を暴いた功績により──余の直属の名誉薬学研究員とし、男爵位を授ける」
国王陛下はデボラ様と私をそれぞれ見た後、傍聴席の貴族たちを見回し手を挙げた。
「──異論のあるものはいるか!」
──しーん……
「セザール・マニエ、アシル・アングラードは磔の刑に処す。アングラード家は取り潰し、国外に追放せよ。近衛よ、こやつらを磔の丘に連れて行け」
──磔の刑……!市街地外れの磔の丘に生きたまま魔法鎖で繋がれる一番残酷な処刑だわ……!
やっと……やっと、終わったのね……
「──ふっ……うう……」
「アルベルティーヌ、よく頑張ったわね、これでもうあなたを狙う者はいないわ!今日からあなたは自由よ!」
「もう大丈夫だ。きっとおじい様はかなりお怒りだからね。奴らはじわじわと痛めつけられるだろう。──君もおじい様と一緒に行って石でも投げつけるかい?」
「まぁ……!お義父様ったら……」
ひょうきんな仕草で、石を投げつける真似をするシリル様はとってもおかしかった。ちょっとお猿さんに似ていたわ!
先日のラクール様のおどけた様子といい、私の周りにはこんなに明るくて素敵な方たちがたくさんいらっしゃる……!
────
「──お話中に失礼します。アルベルティーヌ嬢、お久しぶりです」
「クロヴィス殿下……!っあの、この度は本当にありがとうございました……!ラクール様やポートリエ様やコリンヌに聞いて、ずっと直接お礼を申し上げたくて!」
遠くから見ている時でもかっこよかったのに、近くで見ると本当に素敵だわ……!
オーバン侯爵家で大切にされて、少し健康そうな見た目にはなってきたけれど、まだ全然見られる見た目ではないから……恥ずかしいわ……
「いや、伯爵夫妻が亡くなったと聞いてから心配はしていたんだが……気が付かず君に辛い思いをさせてしまった。もっと早くに調べていれば良かった。──すまない」
「……クロちゃん」
ちょっと気まずそうに首を動かした殿下の仕草が、何故かクロちゃんに重なった。
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「あっ……あぁ、大丈夫だ。君はクロの手当をしてくれたのだろう?あれは王族の鷹なんだ。改めて礼を言う。助けてくれてありがとう」
一瞬驚いた表情をされていたクロヴィス殿下もまたクロちゃんに似ていた。
──飼い主に似るってよく言いますし、クロヴィス殿下がクロちゃんに似ているのではなく、クロちゃんがクロヴィス殿下に似ているのね……!
同じ名前を付けるくらいですもの、殿下はきっとクロちゃんをとても可愛がっていらっしゃるのでしょうね……!
「とても可愛がっていらっしゃるのですね!殿下のお役に立てて嬉しいですわ!」
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