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6 絶対に暴いてやるからな
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( クロヴィスside)
「あら!クロちゃんおはよう。なんだか元気ね!傷が塞がって治ってきたけど、今日もご飯を食べたら塗り薬塗りましょうね」
──くっ……今日も眩しいその笑顔。だが餌はもう自分で食えるぞ!
アルベルティーヌから過去を打ち明けられた俺は、努めて明るく元気に振る舞うようにしていた。
──俺はもう元気だってことを伝えないと、ベルはいつまで経っても俺の事を怪我鷹扱いするからな。
その甲斐あって、やっと少し邸内を自由に歩き回る時間ができた。
気になるのはアルベルティーヌの母セレスティーヌの病のこと。
セレスティーヌが亡くなる少し前、フォートリエ国内で流行病が問題になった。
母、王妃アデリエンヌも一年後同じく流行病で34歳という若さで亡くなった。俺が15歳の時だった。
だが、そこまで急激に病状は悪化しなかった。最初は風邪のようで、ジワジワと一年程かけて進行し亡くなった。
セレスティーヌが病弱とはいえ、本当に同じ流行病で亡くなったのだろうか?
そして、アルベルティーヌは明るく元気な様子ではあるものの、やはり見た目がかなり幼く見えることが心配だった。
過去を打ち明けられた時に、ベルがアルベルティーヌだと気づき愕然とした。
彼女がアルベルティーヌだと気付いていなかった時、15歳くらいの少女だと思っていた。
さすがに年頃の女性の体を見るわけにはいかない。しかし、きっと拘束されていたということは、令嬢としては致命的な傷が刻まれているに違いない。
──ベルは刺繍やレース編みしたものを街に売りに出しているというが、この別邸の予算はどうなっているんだ?まさか鳥たちの餌代もベルが捻出しているんじゃ……?
明らかな虐待の証拠があれば貴族裁判ができる。だがベルの弱り傷付いた体を裁判員の面前に晒すのは避けたい。
そして、優先順位は下にはなるが、妹コリンヌのことだ。もし虐待の証拠が出てきた場合、両親ともに確実に牢獄行きだ。
お人好しで妹のことを気にかけているアルベルティーヌのことだ。もし、妹が処刑されてしまったなら、自分のせいだときっと悲しむだろう。
それだけは絶対に避けたかった。自虐して悲しむ彼女はもう見たくなかった。
とにかく出来るだけ多くの証拠集めと根回しが必要だな……!
何か、アルベルティーヌに有利になる物的、人的な証拠が。そして裁判になる前に、コリンヌとベルをマニエ家から離したい。
──ちっ。こうなると一層早く人間に戻りたいが、今は鷹の姿でよかったな。伯爵が鳥獣愛好家だったことも助かった。邸で動きやすい。
「しっしっ!あっちに行きな!鳥なんかあの子の部屋だけで十分なんだよ!」
「本邸から『死なれたら困るからちゃんと食べさせろ』『風邪を引かれて死なれても困るから衣服を着せてやれ』って言われてるけどさあ、あんなガリガリじゃあそのうち野垂れ死ぬわよ!母親も病弱だったんだし!」
「旦那様には鳥を押し付けられて、媚びを売ろうと世話してるんだろうけど、鳥は綺麗で本人はガリガリでボロボロだなんて!本当に滑稽だわ!」
──アハハ、アハハ……
遠ざかる使用人たちの声を聞きながら、必死に逆立つ羽を抑えた。胸糞悪さにどうにかなりそうだった。
両親が存命で、こんな古びた別邸に追いやられていなければ、今頃華やかな舞踏会やお茶会に出ていたはずだ。
きっと年相応に成長し綺麗に着飾ったアルベルティーヌは美しいに違いない。
良い男性と出会い恋をして、夢だと言っていた幸せな結婚だってできていただろう。
──チクッ
『……結婚、か』
俺はずっとこんな姿だし、結婚なんてもんはとっくに諦めているが。ベルは年頃の女性だから辛いだろう。
10歳で大好きな両親を亡くして、義父義母と仲良くしたいという健気な気持ちも、幸せな結婚をしたいという当たり前の願いも……全て踏みにじった……
『……絶対に許さん。俺が絶対に暴いてやるからな』
「あら!クロちゃんおはよう。なんだか元気ね!傷が塞がって治ってきたけど、今日もご飯を食べたら塗り薬塗りましょうね」
──くっ……今日も眩しいその笑顔。だが餌はもう自分で食えるぞ!
アルベルティーヌから過去を打ち明けられた俺は、努めて明るく元気に振る舞うようにしていた。
──俺はもう元気だってことを伝えないと、ベルはいつまで経っても俺の事を怪我鷹扱いするからな。
その甲斐あって、やっと少し邸内を自由に歩き回る時間ができた。
気になるのはアルベルティーヌの母セレスティーヌの病のこと。
セレスティーヌが亡くなる少し前、フォートリエ国内で流行病が問題になった。
母、王妃アデリエンヌも一年後同じく流行病で34歳という若さで亡くなった。俺が15歳の時だった。
だが、そこまで急激に病状は悪化しなかった。最初は風邪のようで、ジワジワと一年程かけて進行し亡くなった。
セレスティーヌが病弱とはいえ、本当に同じ流行病で亡くなったのだろうか?
そして、アルベルティーヌは明るく元気な様子ではあるものの、やはり見た目がかなり幼く見えることが心配だった。
過去を打ち明けられた時に、ベルがアルベルティーヌだと気づき愕然とした。
彼女がアルベルティーヌだと気付いていなかった時、15歳くらいの少女だと思っていた。
さすがに年頃の女性の体を見るわけにはいかない。しかし、きっと拘束されていたということは、令嬢としては致命的な傷が刻まれているに違いない。
──ベルは刺繍やレース編みしたものを街に売りに出しているというが、この別邸の予算はどうなっているんだ?まさか鳥たちの餌代もベルが捻出しているんじゃ……?
明らかな虐待の証拠があれば貴族裁判ができる。だがベルの弱り傷付いた体を裁判員の面前に晒すのは避けたい。
そして、優先順位は下にはなるが、妹コリンヌのことだ。もし虐待の証拠が出てきた場合、両親ともに確実に牢獄行きだ。
お人好しで妹のことを気にかけているアルベルティーヌのことだ。もし、妹が処刑されてしまったなら、自分のせいだときっと悲しむだろう。
それだけは絶対に避けたかった。自虐して悲しむ彼女はもう見たくなかった。
とにかく出来るだけ多くの証拠集めと根回しが必要だな……!
何か、アルベルティーヌに有利になる物的、人的な証拠が。そして裁判になる前に、コリンヌとベルをマニエ家から離したい。
──ちっ。こうなると一層早く人間に戻りたいが、今は鷹の姿でよかったな。伯爵が鳥獣愛好家だったことも助かった。邸で動きやすい。
「しっしっ!あっちに行きな!鳥なんかあの子の部屋だけで十分なんだよ!」
「本邸から『死なれたら困るからちゃんと食べさせろ』『風邪を引かれて死なれても困るから衣服を着せてやれ』って言われてるけどさあ、あんなガリガリじゃあそのうち野垂れ死ぬわよ!母親も病弱だったんだし!」
「旦那様には鳥を押し付けられて、媚びを売ろうと世話してるんだろうけど、鳥は綺麗で本人はガリガリでボロボロだなんて!本当に滑稽だわ!」
──アハハ、アハハ……
遠ざかる使用人たちの声を聞きながら、必死に逆立つ羽を抑えた。胸糞悪さにどうにかなりそうだった。
両親が存命で、こんな古びた別邸に追いやられていなければ、今頃華やかな舞踏会やお茶会に出ていたはずだ。
きっと年相応に成長し綺麗に着飾ったアルベルティーヌは美しいに違いない。
良い男性と出会い恋をして、夢だと言っていた幸せな結婚だってできていただろう。
──チクッ
『……結婚、か』
俺はずっとこんな姿だし、結婚なんてもんはとっくに諦めているが。ベルは年頃の女性だから辛いだろう。
10歳で大好きな両親を亡くして、義父義母と仲良くしたいという健気な気持ちも、幸せな結婚をしたいという当たり前の願いも……全て踏みにじった……
『……絶対に許さん。俺が絶対に暴いてやるからな』
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