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10 鳥だからって舐めんなよ

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 (姫様親衛隊side)


 モニエ家別邸の鳥たち(自称『姫様親衛隊』)の結束は固い。

 「──みんなも知ってのとおり、姫さんは本邸で散々虐められてきた!俺たちもまぁ主人に見捨てられた存在だ。アイツらをギャフンと言わせてやりたくないか?目に物見せてやりたい奴は翼を挙げろ!」

 ──ビシッ!!!!!

 大鷲のブランが問うと、大小様々な色とりどりの羽が軍隊の如く揃った。


 ある者は森の中で仲良く暮らしていた母と引き離され。
 ある者は川べりで仲良く水浴びをしていた恋人と引き離され。
 ある者は美しさのためだけに、よく分からない鳥と交配されアイデンティティを失っていたり。

 まだモルヴァド伯爵が加虐趣味の持ち主だったり、美しい羽や剥製に興味のあるタイプの人間でなくて良かった。
 とはいえ、人間の都合で捕獲され売買され、鳥生を狂わされた鳥たちにとって、人間は身勝手な醜い存在である。

 しかし、毎日美味しい餌をくれ、優しげな眼差しで毛繕いをしてくれ、日中は窓を開け自由に空を飛ばせてくれる……
 そんなアルベルティーヌはまさに鳥たちにとって女神だった。


 「あの新入り、クロはな、実は先祖返りで鷹になってしまった人間らしい。人間だが俺はアイツのことは信用できると思うんだが。みんなはどうだ……?」

 「「信用できると思う!!!!」」


 「なんたって姫さんにめちゃくちゃ可愛がられてるし?」
 「最初は新入りの癖に生意気な!と思ったけど、アイツが姫様のこと大事に思ってるの伝わるし?」
 「姫様が良い奴だと思うなら、良い奴に違いない!」

 「「そーだそーだ!!アイツは良い奴!」」


 興奮した鳥たちを宥めるようにブランは声を張り上げた。

 「よーし、静粛に!みんなの気持ちは分かった」
 「──アイツは姫さんを助けようと動き始めた!これはチャンスだ!!……っちゅーことで俺たちも何かやるぞ!何か手伝えることがないか?考えがある奴は翼を挙げろ!」


 ──バサッ!!

 真っ先に翼を挙げたのは藍色の翼を持つオウムのオーちゃんだった。

 「はいっ!僕とヨウムのヨーちゃんは姫様の虐められているときの声を再現できます!!いつか役に立たないでしょうか?」

 「「──おおっ!オーちゃんでかした!!」」


 「僕は本邸で殴られた姫様の声を覚えています!」

 『オクサマ!モウヤメテクダサイ!』
 『イウコトキキマスカラ、ブタナイデ』

 『イイ?トリタチ、イッショニイテヤルノヨ?』


 「……デボラは僕たちに酷いセリフを覚えさせて、姫様の前で再現させることで……姫様の心に傷を負わせようとしたに違いないんです!!!」
 「……なんて陰湿で酷いやり方なんだ……!ギャフンと言わせてやりたいな!!」


 ──バサッ!!

 「どーしたヨーちゃん?お前さんも何か覚えているのか?」

 「私はセザールに虐められてる姫様を見た。あいつは姫様が大事にしているご主人様からの指輪を何度も取ろうとした」

 『オイ、オマエノユビワヨコセ』
 『チッ、トウロクマホーカヨ』


 「……あのやろー、姫さんがめちゃくちゃ大事にしている形見を奪おうとするなんて……嘴つつきの刑!いや、嘴ドリルの刑に処したいな」

 「「──処す!!!!!」」

 「俺は眼球」
 「僕は髪の毛まだらに引っこ抜いてやる」
 「じゃあ私は腕に」
 「じゃあ僕は脚に」
 「じゃあ私は急所に」
 「じゃあ俺は顔に」


 「よーっし!いい感じだな!いっちょ合言葉で会議を締めるぞ~」


 せーのっ
 「「鳥だからって舐めんなよ!!!!」」


 「よし、クロに俺たちのアイデアを聞かせてやらねぇとな!!」
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