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しおりを挟む王宮から出て、また宿へと戻る。もうお爺ちゃま達は着いているだろう。
「エレン、ライアス!それに可愛い子供達!お疲れ様!」
「お爺ちゃま!」
お爺ちゃまにお婆ちゃま、伯父様達夫夫にカイル兄上もローレンス兄上も皆集合してる!
「アシェルにライリー、久しぶりだね!なかなか会えないから寂しかったよ。本当にローレンスが羨ましいよ。」
カイル兄上は本当に久しぶりだ!すごく大人になっていてビックリだ。カッコいい!
「さ、積もる話もあるだろうが先に食事にしよう。」
ランドルフ伯父様に言われて食事会場へ。家族皆集合しての食事はいつ以来だろうか。でももう皆に会おうと思ったらいつでもクリステン王国に行けるんだよね。
僕はもう大きくなったから、自分1人で行こうと思えば行けたんだけど母さんを置いて自分だけ行くのは気が引けたんだ。でももう母さんだっていつでも行けるようになったんだもんね。
今度、アーネスト様と一緒に行ってみようかな。2人で旅行とか。…うわぁ、どうしよう!行きたい!アーネスト様と2人でなんてドキドキしちゃうけど行きたい!今度お話ししてみよう。
「兄ちゃん、どうしたの?…もしかしてアーネスト様の事考えてる?」
ひゃっ!ライリーなんでわかるの!?
「…やっぱり。もう僕は兄ちゃんにとって必要ない?ずっと一緒に居たのに…。」
「まさか!そんな事あるわけないよ!ライリーはずっと僕の大事な自慢の弟だよ!」
「うんそうだよね!良かった!」
ライリーが必要ないなんてあるわけない!大事な自慢の弟だもん!なのになんでそんな事…あ、もしかして僕が婚約しちゃったから寂しくなったのかな。まだまだ甘えん坊なんだから。
「ふふ。ライリー大好きだよ。」
僕がそう言うとふにゃりとした顔になって「僕も!」と。あーもう可愛いなぁ!
「エレン、今日聞いたと思うがお前の国外追放は無くなった。」
楽しく食事をしながらランドルフ伯父様が語る。
「お前はいつでも戻ってくる事が出来る。…それと陛下からも戻ってきてほしいと言われていてな。元は殿下との事が発端だ。あちらもエレンの事を気にしていたようで、是非祖国へと戻って欲しいと。その時は爵位も与えるとも仰っていた。」
「兄上…。」
「…陛下はお前の意思に任せるそうだ。エレン、どうしたいかお前が決めろ。」
母さんはどうするんだろう。クリステン王国へ戻るのかな。
「…大変有り難いお話です。ですが僕はこのままソルズの街に残ろうと思います。」
「そうか。」
「僕はソルズの街で冒険者になりました。ここが僕にとっての出発点なんです。ライアスと結婚して、子供が産まれて、信じられないですがドラゴン討伐にも成功して。
僕が今こうしていられるのは全て周りの協力があったからです。ソルズの街の皆の。だから僕はソルズの街に残って冒険者を続けます。」
誰も驚いてない。皆分かってたんだ。母さんがここに残ることを。
「…お前ならそう言うと思っていた。陛下にはそう伝えておこう。だが、お前はもう自由に行き来出来るんだ。今度は公爵邸へ帰っておいで。」
「はい。必ず。ありがとうございます、兄上。」
母さんの笑顔が凄く綺麗だった。今までずっと心に残っていた蟠りが解けたんだ。すっきりとした顔で、子供の僕でも見惚れるくらいの綺麗な笑顔だった。
「ではエレン様が戻られる時は、カイル。貴方がもてなしなさい。時期公爵家当主として、叔母様をきちんともてなすのですよ。」
「はい、母上。畏まりました。」
それからはまた皆で楽しく食事して、宿に泊まった。
今日からまた学園でいつもの日常が始まる。
いつもの通り授業を受けて、皆と練習して、課題をやって。でもそんないつも通りの日常に変化が出た。
いつもはハミッシュ様とノーマン様と練習するんだけど、最近は一緒にさせてほしいと他のクラスからも人が集まってきた。
「英雄効果だな。皆アシェルに憧れて少しでも魔法が上手くなりたいって火がついたっぽいぞ。」
「うふふ~。そんな人気者のアシェルとずっと前から友達だなんて、僕家でも自慢しちゃった~。」
恐縮しちゃうけど皆上手くなりたい気持ちは一緒だし、僕も力になれることがあるならなりたいから、色々相談しながら練習するようになった。
それからセイルズ様の事なんだけど、あれから僕に謝ってきた。凄く驚いたと同時に凄く嬉しかった。
「平民だと馬鹿にするような態度をとってすまなかった。…俺は悔しかったんだ。家では天才だなんだと持て囃されてその気になって。でもお前の存在を知って俺は浮かれていたんだと恥ずかしくなって。でも認められなくて…。
今更だが、俺も参加してもいい、だろうか…?」
「もちろんです!嬉しいです、セイルズ様!一緒に魔法、勉強しましょう!」
きっとセイルズ様もどんどん上手くなって強くなって、きっと魔法師団で活躍する魔法使いになる。そんな気がする。
たまにラッシュフォース先生も混ざって色々研究したりしている。皆でわいわい魔法について話したり実践したり本当に楽しいんだ!本当にこの学園に来て良かった。
「アーネスト様、今度クリステン王国へ1泊2日で行きませんか?」
今日も寮で食事を取ったあと、アーネスト様のお部屋にお邪魔している。クリステン王国に行ってみたくて誘ってみたんだ。
「そ、れは2人で、ということか?」
「? はい。母さんの国外追放も無くなって、自由に行き来できるようになったので、僕も一度行ってみたくて。…ダメ、なんでしょうか。」
「いや、そんな事は!…嬉しい。俺も楽しみにしてる。」
良かったぁ。なんか一瞬様子がおかしかったけど、一緒に行ってくれる事になった。今度ローレンス兄上にクリステン王国のおすすめスポット教えてもらお!
「…本来貴族は、出かける時は護衛なども付けていくんだ。俺たちは冒険者としても活動しているし、今回は護衛は無くても大丈夫だ。うん。問題ない。だが宿なんかはちゃんとしたところを選ばないと行けない。宿は俺に任せてもらえないだろうか?」
あ、そっか。貴族の人ってお出かけするのも護衛が必要なのか。気軽にお出かけできないのも不便だな。でも今回は護衛なしで2人で行ってくれるって。
確かにそういう場合の宿を選ぶ基準は僕にはわからないからアーネスト様にお任せしよう。
「はい、よろしくお願いします!」
うわぁ、楽しみだ!初めてのクリステン王国への旅行にアーネスト様と行けるなんて!
早くその日が来ないかな!
* * * * * * *
~アーネストside~
え、旅行に誘われた。え、これはそういう事でいいんだよな。
実際、アシェルを抱いたのはあの1回だけだ。もう婚約も成立したし、正直我慢の限界だ。
確かにお互いの部屋へ行き来もしていて口付けもしているが、なぜかその先になかなか踏み込めない…。
がっついてると思われそうで…そう思われて嫌われたらと思うと…。
俺ってなんてヘタレ野郎なんだ…。
だが、2人っきりでクリステン王国へ旅行に行くのはそれを期待してもいいよな?というか期待したし、実現させる!
だって同じ部屋に泊まるんだぞっ!こんなの我慢しろとか無理だろうっ!
だから宿は任せてほしいと言ったんだ。高級宿で防音がしっかりしていて、サービスが充実している宿を探さねば。
やるぞ、俺はやるぞ!やってやる!
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