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しおりを挟む5歳の誕生日が来て、1週間後くらいから僕の勉強は始まった。きっかけはお母さんに魔法を教えて欲しいと言ったから。
僕のお母さんは魔法が得意で、庭で草を刈るのに風の魔法を使ってる。ギルドマスターのデイビットさんに言ったら、
「お前の母ちゃん流石だな。魔法のコントロールはかなりのもんだ。そうじゃなかったら今頃庭は破壊されてめちゃくちゃだな。」
って笑ってお母さんを褒めてた。僕はそれが当たり前だと思ってたから、不思議でお母さんに聞いたんだ。
「へぇ。デイビットさんそんな事言ってたんだ。ま、俺も昔はかなり勉強もしたし訓練もしたからな。そのおかげだな。」
って僕の頭を撫でながら答えてくれた。
「お母さん、どうやって勉強してたの?」
「ん?俺は昔貴族だったんだ。だから子供の時から勉強しなきゃいけなくて。家庭教師の先生がいたんだよ。」
「きぞく?」
「んー…そうだなぁ。この国には王様がいるだろ?王様は国で1番偉い人。そしてその王様を助けたりしているのが貴族。だから貴族も王様ほどじゃないけど偉い人達だな。たまにお爺ちゃま達がくるだろ?お爺ちゃま達は貴族だよ。」
「じゃあお母さんも偉い人だったの?」
「ははっ。俺は貴族としての仕事はしてなかったから偉くはないよ。でもその家の子供だったから扱いは丁寧だったな。…ま、俺の場合はちょっと事情が違うけどな。」
そう言ってお母さんは困ったように笑ったんだ。なんでだろう?
「エレン、アシェルにそんな話はまだ早いでしょう。きっとよく分かっていませんよ。」
「だよなぁ…。っておい、ちゅーすんな!子供が見てるだろ!」
僕のお父さんは、いつもお母さんにちゅーしてる。お母さんの事が大好きなんだって。前にお母さんに、お母さんもお父さんの事が好きなのか聞いたら、当たり前だって言ってた。だから僕とライリーが産まれたんだって教えてくれた。
「ねぇお母さん。僕もお母さんみたいに魔法が使えるようになりたい。」
「え?アシェル、魔法使えるようになりたいの?」
「うん。そしたら僕もお母さんのお手伝いできるでしょ?一緒に庭の草刈りやりたい。」
「アシェル!なんていい子なんだ!」
そう言ってお父さんは僕を抱き上げるとほっぺたをくっつけてぐりぐりした。僕はこれが大好き。大きなお父さんに抱っこされるとすごく安心する。
「あとね、お父さんみたいに強い冒険者になりたい。そしたら、お父さんもお母さんもライリーも守ってあげられるでしょ?」
「「アシェル!!」」
きゃー!お母さんにもぎゅってされてぐりぐりされた!くふふ。
僕のお父さんとお母さんは冒険者をやってる。でもお母さんは僕を産んでから冒険者はお休みしてるんだって。
お父さんも大体は家にいる。だけどたまに強い魔物が出るから、その時はデイビットさんに呼ばれて仕事に行ってる。その時のお父さんは、僕とお母さんとライリーをぎゅってしてなかなか出かけないから、お母さんに早く行けって怒られてる。
お父さんはとっても強いんだ。そんなお父さんがかっこよくて僕の憧れなんだ。でも僕はあんまり早くも走れないし体を動かすのは上手じゃない。だから剣を持って戦うなんて無理。
でも魔法が使えたら剣はなくても戦えるし、大好きな僕の家族を守ってあげられると思うんだ。
「じゃあアシェルが5歳になったら魔法の勉強しようか。」
「ほんと!? やったー!」
魔法の勉強を始める前に僕が持ってる魔力量?ってのを調べるんだって。それがわからないと魔法がどれくらい使えるのかわからないから危ないって。
お母さんに約束してもらった次の日の次の日。僕はお母さんと一緒に教会へ出かけた。そこで調べてもらえるんだって。
「アシェルの魔力量はどれくらいか楽しみだな。俺も多い方だったから、もしかしたらアシェルも多いかもな。」
僕達は平民だから、普通は魔法の勉強とかしないんだって。理由は魔力量があんまり多くないから。たまに魔力量が多い平民もいるから、そういう人は教会で勉強するらしい。
でもお母さんは貴族で魔力量が多いから、僕もそうなる可能性があるって。楽しみだな。
「では、こちらの水晶玉に手を置いてください。」
教会で神官さんにそう言われて手を乗せた。そしたらピカー!って光って僕はびっくりした。
「…なんと。これはかなりの魔力量ですよ!」
「これ、俺よりもかなり多いんじゃ…。」
神官さんとお母さんがびっくりした顔で僕の顔を見る。え?これいいの?だめなの?
「アシェル!すごいぞ!しっかり勉強して練習もいっぱいやったら俺よりすごい魔法使いになれるぞ!」
「え、本当!?僕すごいの!?」
え、うそ。すごい!やった!僕、魔法使いになれるんだ!いっぱい勉強して、いっぱい練習してすごい魔法使いにならなきゃ!
そしたらお父さんもお母さんもライリーも、皆守ってあげられるよね!
お母さんはすごく喜んでくれて、「ばんざーい!ばんざーい!俺の子天才!!」って言ってた。
帰りはまたお母さんと手を繋いで家へ帰る。お父さんもきっと、びっくりして喜んでくれるよね、って話しながらうきうきして歩いた。
「ねぇ!待って!待って!止まって!そこの…銀色の髪の君!」
銀色の髪?僕とお母さんのことかな?僕たちの髪の色は珍しいらしくて、僕はお母さん以外でこの髪の色の人に会ったことがない。
お母さんと2人、歩くのやめて後ろを振り返る。そしたら、知らない子が走って僕たちのところへやってきた。
「お母さん、知ってる子?」
「いや、俺も知らない。誰だ??」
その子は近くまで来ると、はぁはぁと少しだけ休憩して僕の方を見た。
「あのっ!君の事が好きです!俺と結婚してください!」
「やだ。」
「「え…。」」
お母さんと知らない子の声が一緒に聞こえた。
「え、あの…俺、君の事見て好きになったんだ!だから!」
「でも僕は君の事知らないし。僕は君の事好きじゃない。…ねぇお母さん、早く帰ろ?」
「え…?ちょっ、アシェル!待って、いいの?あの子そのままにしていいの!?」
いいよ、別に。僕には関係ないもん。
僕はお母さんとよく似てる。髪の色は同じ銀の髪。目はお父さんと一緒で青いけど、顔はお母さんに似てるってよく言われる。
僕のお母さんはすごく綺麗な人なんだ。昔、変な人に攫われそうになった事があるから、僕も気をつけるように言われてる。
だから僕の顔を見て好きだなんて言われても怪しい人だと思っちゃう。僕、間違ってないよね?
家に帰ってお父さんに僕の魔力量が多い事を教えた。そしたらお父さんもすんごく喜んでくれて、さすがはエレンと俺の子だ!ってまた抱っこしてくれた。
ライリーはまだちっちゃいから調べられないけど、5歳になったら調べるって言ってた。ライリーの魔力量はどんなかな?楽しみだな。
* * * * * * *
~その日の夜の親の会話~
「ライアス、今日教会からの帰り道にさ、アシェルが知らない子に告白されてた。」
「は?なんだと?」
「でね、俺もびっくりしたんだけど、アシェルたった一言『やだ。』って即断ってた。」
「よし。よくやった!」
「ホントに親バカだなぁ。なんかその子、一目惚れしたっぽくて。……ただ、あの子貴族の子供だと思うんだよな。」
「え?本当ですか?」
「うん。着てる物がかなり良いものだったから、多分上級貴族の子じゃないかな。」
「……なんだか、昔の事を思い出しますね。」
「ホントにな。俺誘拐未遂事件の時も上級貴族だったし。親子揃って目をつけられるとはね。」
「アシェルはエレンによく似ていますからね。…ギルドの皆もその辺分かってますから、危ないことは少ないとは思いますが…。より気をつけた方が良さそうですね。」
「だな。ややこしいことにならなきゃいいけど。」
「……じゃあ話も終わって、子供達も寝た事ですし…。」
「ちょ、ライアス!………ったく、しょうがないな。ほら……ちゅ…。」
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