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襲撃
しおりを挟む夜間もネアンは見張りを立てる。
しかし悲しいかな、
しょせんは動物に近い我々のこと、
本能には逆らえず
見張りの者の意識の半分は眠りに落ちている。
しかし、
その意識をすべて目覚めさせるものが
見張りの目に入った。
炎だ!
点々と小さく輝く炎の群れが
森に近づいていた。
「ウォーーーーーン!」
見張りの長い叫び声が響く。
部族は飛び起きた。
しかし、我々には光がない。
各々が手探りで暗闇を歩き回る。
平地人類の襲撃だ。
彼らはたいまつを手に森に侵入を図る。
夜間では、ネアンが満足に行動できないことを
知っているからだ。
「ガハーッ!」
森の端でネアンの悲鳴が聞こえた。
平地人の武器は
砕いた石のつぶて、
鋭い木の棒を削った槍、
動物の骨の尖った部分、
石の斧を持つものなどだ。
ネアンのうち、
雌や子供たちは炎から離れるように逃げる。
強いネアンは逆に炎へと向かう。
戦うためだ。
「逃げろ!」
僕の家族で最も大きいネアン、
つまり父が僕に叫ぶ。
母と妹は炎から逃げ出すべく動き始めていた。
僕はもはや、ただのネアンではない。
「戦う!」
人類の様子を、
今の目覚めた自分自身の目で見てみたい。
「バカ、逃げよう!」
母が手を引っ張るが、
僕はそれを振りほどいた。
ネアンの言葉数は少ない。
父はもう何も言わず、炎の方へと歩き出した。
僕もそれについていく。
ネアンは基本は素手で戦う。
力の勝負では、平地人には負けないからだ。
しかし僕は、
暗がりの中を父についていきながら、
途中で目に入った棍棒状の枝と、
手頃な大きさの石を拾った。
炎に近づくにつれ、
争いの声がより大きくなってきた。
平地人よりもネアンの方が、
大きく野太い声を上げる。
襲撃当初はネアンの悲鳴の方が多かったが、
徐々に平地人の悲鳴も聞こえてくるようになった。
いよいよ炎がすぐそこまで迫ってきた。
僕の胸の鼓動は早まる。
「あっ!」
思わず声が出た。
頭から血を流し、倒れるネアンの、
つまり仲間の体につまづいたからだ。
そのネアンは石で打ち付けられたのだろう、
頭の半分が砕けて、
そこから血だけではなく、
脳の髄液のような透明なものまで流れていた。
ここまで逃げてきて力尽きたのだ。
恐怖で足が止まる。
しかし、父は構わず炎の中に飛び込んでいった。
森の中にあって、
わずかに草原状になっている広場。
樹間の戦いではネアンが有利だが、
平地ではその優勢は失われる。
平地人はそれを知っているから、
ネアンたちをここに引き付けている。
そこには、
倒されたネアン数人が既に転がっていた。
平地人は10人あまり、
たいまつを手にする者と、
武器を持つ者に分かれ、
父が飛び込むと、
平地人たちは石つぶてを交互に投げつける。
少し遅れてしまった自分が恨めしい。
結果として、父が一人で飛び込んだ形になった。
石つぶてで怯んだ父に、
平地人の一人が鋭い槍を突き出した。
「父さん!」
枝は下腹部の辺りに吸い込まれた。
ただ、現世のような鋭さに欠けるだけに
先端が少し食い込んだに過ぎない。
その辺りを腕でおさえた父に、
大きな石斧をもった平地人の一人が近づく。
その石斧が、血塗られているのが見えた。
「あいつがさっきの…。」
頭を割られた僕の仲間を
殺したのだろう。
僕は手にした石つぶてを投げた。
命中!
とはいかず(ちゃんと野球をやっておけば良かった!)、
しかし、男は怯んだ。
僕はチャンスとばかり
「ワアーッ!」
大声を上げて飛び込むと、
手にした棍棒を振るった。
バシン!
ネアンの力は…凄い!
あの太い棍棒を、
まるでフォークでも操るように振ることができた。
棍棒は、
石斧をもった男の腕に叩き込まれ、
グシャリ
と男の腕が逆に曲がるのが見えた。
その時、別のネアンも二人ほど飛び込んできた。
その仲間たちと力を呼吸を合わせるように、
私も踏み込んで、
平地人が持つ槍を棍棒で叩き折った。
遠くで石を投げようとする平地人が見える。
「やっ!」
と僕はそれより早く石つぶてを投げる。
当たらない。
くそっ、野球をしとけば…
あっ!
でも、相手の投げたつぶても外れた。
踏み込め!
私は棍棒を片手に、平地人の群れへと躍り込んだ。
後ずさりする平地人たち。
勝てる!
そう思った僕の目に映ったのは、
たいまつを森に投げ込んで
引いていく平地人の姿だった。
たいまつの炎が、
草原の草をめらめらと燃やし始めた。
ー続くー
しかし悲しいかな、
しょせんは動物に近い我々のこと、
本能には逆らえず
見張りの者の意識の半分は眠りに落ちている。
しかし、
その意識をすべて目覚めさせるものが
見張りの目に入った。
炎だ!
点々と小さく輝く炎の群れが
森に近づいていた。
「ウォーーーーーン!」
見張りの長い叫び声が響く。
部族は飛び起きた。
しかし、我々には光がない。
各々が手探りで暗闇を歩き回る。
平地人類の襲撃だ。
彼らはたいまつを手に森に侵入を図る。
夜間では、ネアンが満足に行動できないことを
知っているからだ。
「ガハーッ!」
森の端でネアンの悲鳴が聞こえた。
平地人の武器は
砕いた石のつぶて、
鋭い木の棒を削った槍、
動物の骨の尖った部分、
石の斧を持つものなどだ。
ネアンのうち、
雌や子供たちは炎から離れるように逃げる。
強いネアンは逆に炎へと向かう。
戦うためだ。
「逃げろ!」
僕の家族で最も大きいネアン、
つまり父が僕に叫ぶ。
母と妹は炎から逃げ出すべく動き始めていた。
僕はもはや、ただのネアンではない。
「戦う!」
人類の様子を、
今の目覚めた自分自身の目で見てみたい。
「バカ、逃げよう!」
母が手を引っ張るが、
僕はそれを振りほどいた。
ネアンの言葉数は少ない。
父はもう何も言わず、炎の方へと歩き出した。
僕もそれについていく。
ネアンは基本は素手で戦う。
力の勝負では、平地人には負けないからだ。
しかし僕は、
暗がりの中を父についていきながら、
途中で目に入った棍棒状の枝と、
手頃な大きさの石を拾った。
炎に近づくにつれ、
争いの声がより大きくなってきた。
平地人よりもネアンの方が、
大きく野太い声を上げる。
襲撃当初はネアンの悲鳴の方が多かったが、
徐々に平地人の悲鳴も聞こえてくるようになった。
いよいよ炎がすぐそこまで迫ってきた。
僕の胸の鼓動は早まる。
「あっ!」
思わず声が出た。
頭から血を流し、倒れるネアンの、
つまり仲間の体につまづいたからだ。
そのネアンは石で打ち付けられたのだろう、
頭の半分が砕けて、
そこから血だけではなく、
脳の髄液のような透明なものまで流れていた。
ここまで逃げてきて力尽きたのだ。
恐怖で足が止まる。
しかし、父は構わず炎の中に飛び込んでいった。
森の中にあって、
わずかに草原状になっている広場。
樹間の戦いではネアンが有利だが、
平地ではその優勢は失われる。
平地人はそれを知っているから、
ネアンたちをここに引き付けている。
そこには、
倒されたネアン数人が既に転がっていた。
平地人は10人あまり、
たいまつを手にする者と、
武器を持つ者に分かれ、
父が飛び込むと、
平地人たちは石つぶてを交互に投げつける。
少し遅れてしまった自分が恨めしい。
結果として、父が一人で飛び込んだ形になった。
石つぶてで怯んだ父に、
平地人の一人が鋭い槍を突き出した。
「父さん!」
枝は下腹部の辺りに吸い込まれた。
ただ、現世のような鋭さに欠けるだけに
先端が少し食い込んだに過ぎない。
その辺りを腕でおさえた父に、
大きな石斧をもった平地人の一人が近づく。
その石斧が、血塗られているのが見えた。
「あいつがさっきの…。」
頭を割られた僕の仲間を
殺したのだろう。
僕は手にした石つぶてを投げた。
命中!
とはいかず(ちゃんと野球をやっておけば良かった!)、
しかし、男は怯んだ。
僕はチャンスとばかり
「ワアーッ!」
大声を上げて飛び込むと、
手にした棍棒を振るった。
バシン!
ネアンの力は…凄い!
あの太い棍棒を、
まるでフォークでも操るように振ることができた。
棍棒は、
石斧をもった男の腕に叩き込まれ、
グシャリ
と男の腕が逆に曲がるのが見えた。
その時、別のネアンも二人ほど飛び込んできた。
その仲間たちと力を呼吸を合わせるように、
私も踏み込んで、
平地人が持つ槍を棍棒で叩き折った。
遠くで石を投げようとする平地人が見える。
「やっ!」
と僕はそれより早く石つぶてを投げる。
当たらない。
くそっ、野球をしとけば…
あっ!
でも、相手の投げたつぶても外れた。
踏み込め!
私は棍棒を片手に、平地人の群れへと躍り込んだ。
後ずさりする平地人たち。
勝てる!
そう思った僕の目に映ったのは、
たいまつを森に投げ込んで
引いていく平地人の姿だった。
たいまつの炎が、
草原の草をめらめらと燃やし始めた。
ー続くー
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