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第8章
第8章:ストラディゴス四股事件3(別視点:回想)
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フィリシスは、今まで気付いていないだけであった事に気付いた。
ストラディゴスは戦場から帰ってくると、昼夜問わずに団員達のテントを忙しく訪ねていた。
その大半は、真面目に仕事をしているか、団員との交流をしている。
傭兵団長と言う仕事は、自傭兵団の団員達の状態を把握している必要がある。
そう言う意味では、団員と話をし、稽古をつけ、相談に乗り、酒を飲み交わすストラディゴスの姿勢は、善き団長その物であった。
フィリシスの目には、奴隷兵士をしていた時代には考えられない、前向きな人同士の繋がりが出来た組織に見え、感動を覚えるレベルでの良い組織に最初は映っていた。
理想的かは別として、フォルサ傭兵団は実際そこまで悪い組織では無いだろう。
戦場では戦果を挙げ、敵味方問わず名声が轟いている。
組織の役割や機能としてみれば、一流と言って良い。
その上で、所属する人間が良い人間なら、完璧にさえ思える。
しかし、フィリシスは気付いたのだ。
ストラディゴスと女性団員との、行き過ぎた交流に。
フィリシスは、セックスを知らずとも、恋愛感情は理解していた。
ルイシーによって、正しいセックスは好きと言う感情の先にあると、セックスについての綺麗な部分を教えられた事で、ストラディゴスの行動が、よけいに気になる様になったのだ。
* * *
ストラディゴスは、フィリシスの目には、とにかく誰とでもセックスをしている様に見えた。
女性団員のテントに入れば、ストラディゴスはセックスをしに行った様にさえフィリシスには見える。
実際、あれからもフィリシスは何度も、プレイ中のストラディゴスと遭遇していた。
人目の無いテントで、森で、岩場で、荒れ地で、場所も時間も関係無く、セックスばかりしているのだ。
相手は毎度違い、日によっては何度も遭遇する事もある。
年齢も種族も関係無く、ストラディゴスは求められれば多少、幼かろうとも求めに応えている様であった。
そうなると、フィリシスの中でセックス自体に対しての気持ち悪さは、次第に減ってくる。
セックスへの得体の知れない気持ち悪さは無くなり、要は男女が性器を繋げて、子種を女へと男が植え付けているだけの事と思えて来る。
気持ち悪く見えた人が繋がった光景も、何度か見れば自分もその画に興奮していた事にも気付き、セックスをする当人達が気持ちよさそうな顔をしている事にも気付いた。
フィリシスは、自分が知らないだけで、セックスとは当たり前の事なのだと気付くに至った。
この世にいる全ての生き物がセックスの末に生まれた事を考えれば、セックスを気持ち悪いと感じていたのは、物を知らないだけであった事は、フィリシスにも分かった。
それでも、ストラディゴスに対する得体の知れない気持ち悪さは消えなかった。
ストラディゴスは、ルイシーもラーナも大事にする。
ルイシー以外との子供も、女達も大事にする。
団員達の事も、新参者のフィリシスだって大事にしてくれる。
そもそも、瀕死のフィリシスを助けてくれたのだ。
悪い人間では無い筈である。
だからこそ、ストラディゴスの時折見せる二面性を見ると、気持ちが悪かった。
フィリシスは、ストラディゴスがセックスをしている時に見せる、ある目が嫌いであった。
ストラディゴスは、セックスの最中、あるスイッチが入ると、まるで女をモノの様に見る瞬間があるのだ。
フィリシスは、最初見た時、セックスも気持ち悪かったが、ストラディゴスの態度が何よりも気持ち悪かったのだ。
ストラディゴスの目は、発情した雄の目である事もある。
ルイシーに対しては、ストラディゴスはいつだって男であった。
ティアリーレもコイトスも、セックスの時は発情した雄の目で見ていた。
しかし、ストラディゴスの雄の目は、性欲の前に相手に対しての愛おしさがあった。
愛おしく思うから、二人の間に子を成したい。
そう言う本能の目なのだ。
だが、ストラディゴス自身、相手をよく知りもしないで抱いている時がある。
カルロッタを犯している時のストラディゴスは、雄の目では無かった。
そう言う時の目は、何も知らないフィリシスを犯した連中の目に近かった。
そこまで澱んでこそいないが、見ていてわかるのだ。
女を愛しているから抱きたいのでは無く、身体その物にこそ興味がある事が。
カルロッタは嫌がっておらず、ストラディゴスや他の女達との関係も良好であり、そこに被害者はいない。
それでも、ストラディゴスは明らかに歪んでいた。
フィリシスは、その思ったままをルイシーに伝え、自分が変なのかを聞いた。
ストラディゴスには、ルイシーだけを愛して貰いたいと思うのは、この傭兵団の中では間違っているのかと。
ルイシーは真面目に話を聞き、ルイシー自身、フィリシスに言われてストラディゴスの歪みの正体にようやく気付いた様であった。
ストラディゴスが皆を愛する事を良しとしてきたが、確かに、ここ数年のストラディゴスは、歪んでいた。
まさしく、女で遊んでいる状態であったのだ。
愛しているから抱くのではなく、抱いてから愛するでは順番が逆である。
結果が同じでも、ストラディゴスが全員をちゃんと愛せていないのは、もう分かっている。
女達の中にも、ストラディゴスの身体が目当てとなっている者が数多くいるのだ。
ルイシーは、人見知りのフィリシスの抱えた、モヤモヤの相談という捌け口となった形であった。
だが、フィリシスからもたらされた、外から来た人間だからこそ見え、言えた客観的な意見は、ルイシーにとっても大事なモノであった。
だからこそ、その気付きを得たフィリシスにルイシーは、ストラディゴスの事を頼もうと思ったのであった。
「それなら、フィリシスがストラディゴスに一途さを教えてあげて」
それは、ルイシーからの、個人的なお願いであった。
しかし、一途さならルイシーに勝る者はいない。
そうフィリシスは考えていた。
ストラディゴスがどんなに他の女達に種付けをしても、ルイシーが他の男に抱かれているのを見た事が無いのだ。
ルイシーと共にいれば分かる。
ルイシーが、ストラディゴス以外と寝る気が無い事は。
そのルイシーに教えられない事を、フィリシスがストラディゴスに教える事が出来るのか。
聞くと、ルイシーは「自分は一途なのではない」と言う。
「一途とは、自分を持って相手を思い続ける事よ」
既に今の様な、大勢の女でストラディゴスを愛する関係になって長いストラディゴスとルイシーの間には、自分と相手の境界線が溶けてなくなっている部分があった。
もともと、お互いが自分の心の傷を癒そうと相手を癒している依存関係から始まっている。
その為、相手が満たされると自分も満たされる様な気持ちに自然となってしまい、ストラディゴスがルイシー以外の恋人を作っても、ルイシーはまるで自分が愛し愛されている様に感じてしまう。
そして、ストラディゴスは、ルイシーに対しては、その澱んだ目を見せた事が無い。
つまり、ストラディゴスの悪い変化を見る事さえ出来ないルイシーでは、ストラディゴスを変える事は出来ないのだ。
仲間を心から愛して、愛に応える為に相手を愛する。
そんな自分と出会った頃の巨人を守りたかったルイシーは、新参者で、ハーレムに飲まれていないフィリシスだからこそ教えられると期待をした。
ルイシーに頼まれ、フィリシスはストラディゴスに愛を思い出させる事を決意したのであった。
* * *
「フィリシスと同じテントで暮らせだって???」
フィリシスの怪我が治って傭兵団の一員になってからも、人見知りが一向に治らないフィリシスは、ストラディゴスとルイシーのテントの近くで寝泊まりしていた。
「ええ」
「何だってまた急に?」
「急じゃないわ。最近、また仲間が増えたでしょ? テントが足りないんだけど、フィリシスが私達と同じテントで良いって言うから」
「え~、でもよぉ~」
「テントを増やすまでだから」
ルイシーとフィリシスは、まずフィリシスがストラディゴスと共にいる時間を増やし、監視しやすくする事から始めた。
ストラディゴスは、フィリシスを仲間として気に入っていたが、その人見知りな性格と、竜人族と言う事で、自分から夜這いをかける様な事は、避けていた。
下手をすると、拒否された挙句、本当に殺されかねないと勝手に警戒していたのだ。
ストラディゴスにとってのそんな存在が、ルイシーの頼みでストラディゴスの私生活に介入してくるのは、迷惑でしかなかった筈である。
だが、ルイシーの頼みとあっては、ストラディゴスは一度は受け入れる他に無かった。
ストラディゴスは戦場から帰ってくると、昼夜問わずに団員達のテントを忙しく訪ねていた。
その大半は、真面目に仕事をしているか、団員との交流をしている。
傭兵団長と言う仕事は、自傭兵団の団員達の状態を把握している必要がある。
そう言う意味では、団員と話をし、稽古をつけ、相談に乗り、酒を飲み交わすストラディゴスの姿勢は、善き団長その物であった。
フィリシスの目には、奴隷兵士をしていた時代には考えられない、前向きな人同士の繋がりが出来た組織に見え、感動を覚えるレベルでの良い組織に最初は映っていた。
理想的かは別として、フォルサ傭兵団は実際そこまで悪い組織では無いだろう。
戦場では戦果を挙げ、敵味方問わず名声が轟いている。
組織の役割や機能としてみれば、一流と言って良い。
その上で、所属する人間が良い人間なら、完璧にさえ思える。
しかし、フィリシスは気付いたのだ。
ストラディゴスと女性団員との、行き過ぎた交流に。
フィリシスは、セックスを知らずとも、恋愛感情は理解していた。
ルイシーによって、正しいセックスは好きと言う感情の先にあると、セックスについての綺麗な部分を教えられた事で、ストラディゴスの行動が、よけいに気になる様になったのだ。
* * *
ストラディゴスは、フィリシスの目には、とにかく誰とでもセックスをしている様に見えた。
女性団員のテントに入れば、ストラディゴスはセックスをしに行った様にさえフィリシスには見える。
実際、あれからもフィリシスは何度も、プレイ中のストラディゴスと遭遇していた。
人目の無いテントで、森で、岩場で、荒れ地で、場所も時間も関係無く、セックスばかりしているのだ。
相手は毎度違い、日によっては何度も遭遇する事もある。
年齢も種族も関係無く、ストラディゴスは求められれば多少、幼かろうとも求めに応えている様であった。
そうなると、フィリシスの中でセックス自体に対しての気持ち悪さは、次第に減ってくる。
セックスへの得体の知れない気持ち悪さは無くなり、要は男女が性器を繋げて、子種を女へと男が植え付けているだけの事と思えて来る。
気持ち悪く見えた人が繋がった光景も、何度か見れば自分もその画に興奮していた事にも気付き、セックスをする当人達が気持ちよさそうな顔をしている事にも気付いた。
フィリシスは、自分が知らないだけで、セックスとは当たり前の事なのだと気付くに至った。
この世にいる全ての生き物がセックスの末に生まれた事を考えれば、セックスを気持ち悪いと感じていたのは、物を知らないだけであった事は、フィリシスにも分かった。
それでも、ストラディゴスに対する得体の知れない気持ち悪さは消えなかった。
ストラディゴスは、ルイシーもラーナも大事にする。
ルイシー以外との子供も、女達も大事にする。
団員達の事も、新参者のフィリシスだって大事にしてくれる。
そもそも、瀕死のフィリシスを助けてくれたのだ。
悪い人間では無い筈である。
だからこそ、ストラディゴスの時折見せる二面性を見ると、気持ちが悪かった。
フィリシスは、ストラディゴスがセックスをしている時に見せる、ある目が嫌いであった。
ストラディゴスは、セックスの最中、あるスイッチが入ると、まるで女をモノの様に見る瞬間があるのだ。
フィリシスは、最初見た時、セックスも気持ち悪かったが、ストラディゴスの態度が何よりも気持ち悪かったのだ。
ストラディゴスの目は、発情した雄の目である事もある。
ルイシーに対しては、ストラディゴスはいつだって男であった。
ティアリーレもコイトスも、セックスの時は発情した雄の目で見ていた。
しかし、ストラディゴスの雄の目は、性欲の前に相手に対しての愛おしさがあった。
愛おしく思うから、二人の間に子を成したい。
そう言う本能の目なのだ。
だが、ストラディゴス自身、相手をよく知りもしないで抱いている時がある。
カルロッタを犯している時のストラディゴスは、雄の目では無かった。
そう言う時の目は、何も知らないフィリシスを犯した連中の目に近かった。
そこまで澱んでこそいないが、見ていてわかるのだ。
女を愛しているから抱きたいのでは無く、身体その物にこそ興味がある事が。
カルロッタは嫌がっておらず、ストラディゴスや他の女達との関係も良好であり、そこに被害者はいない。
それでも、ストラディゴスは明らかに歪んでいた。
フィリシスは、その思ったままをルイシーに伝え、自分が変なのかを聞いた。
ストラディゴスには、ルイシーだけを愛して貰いたいと思うのは、この傭兵団の中では間違っているのかと。
ルイシーは真面目に話を聞き、ルイシー自身、フィリシスに言われてストラディゴスの歪みの正体にようやく気付いた様であった。
ストラディゴスが皆を愛する事を良しとしてきたが、確かに、ここ数年のストラディゴスは、歪んでいた。
まさしく、女で遊んでいる状態であったのだ。
愛しているから抱くのではなく、抱いてから愛するでは順番が逆である。
結果が同じでも、ストラディゴスが全員をちゃんと愛せていないのは、もう分かっている。
女達の中にも、ストラディゴスの身体が目当てとなっている者が数多くいるのだ。
ルイシーは、人見知りのフィリシスの抱えた、モヤモヤの相談という捌け口となった形であった。
だが、フィリシスからもたらされた、外から来た人間だからこそ見え、言えた客観的な意見は、ルイシーにとっても大事なモノであった。
だからこそ、その気付きを得たフィリシスにルイシーは、ストラディゴスの事を頼もうと思ったのであった。
「それなら、フィリシスがストラディゴスに一途さを教えてあげて」
それは、ルイシーからの、個人的なお願いであった。
しかし、一途さならルイシーに勝る者はいない。
そうフィリシスは考えていた。
ストラディゴスがどんなに他の女達に種付けをしても、ルイシーが他の男に抱かれているのを見た事が無いのだ。
ルイシーと共にいれば分かる。
ルイシーが、ストラディゴス以外と寝る気が無い事は。
そのルイシーに教えられない事を、フィリシスがストラディゴスに教える事が出来るのか。
聞くと、ルイシーは「自分は一途なのではない」と言う。
「一途とは、自分を持って相手を思い続ける事よ」
既に今の様な、大勢の女でストラディゴスを愛する関係になって長いストラディゴスとルイシーの間には、自分と相手の境界線が溶けてなくなっている部分があった。
もともと、お互いが自分の心の傷を癒そうと相手を癒している依存関係から始まっている。
その為、相手が満たされると自分も満たされる様な気持ちに自然となってしまい、ストラディゴスがルイシー以外の恋人を作っても、ルイシーはまるで自分が愛し愛されている様に感じてしまう。
そして、ストラディゴスは、ルイシーに対しては、その澱んだ目を見せた事が無い。
つまり、ストラディゴスの悪い変化を見る事さえ出来ないルイシーでは、ストラディゴスを変える事は出来ないのだ。
仲間を心から愛して、愛に応える為に相手を愛する。
そんな自分と出会った頃の巨人を守りたかったルイシーは、新参者で、ハーレムに飲まれていないフィリシスだからこそ教えられると期待をした。
ルイシーに頼まれ、フィリシスはストラディゴスに愛を思い出させる事を決意したのであった。
* * *
「フィリシスと同じテントで暮らせだって???」
フィリシスの怪我が治って傭兵団の一員になってからも、人見知りが一向に治らないフィリシスは、ストラディゴスとルイシーのテントの近くで寝泊まりしていた。
「ええ」
「何だってまた急に?」
「急じゃないわ。最近、また仲間が増えたでしょ? テントが足りないんだけど、フィリシスが私達と同じテントで良いって言うから」
「え~、でもよぉ~」
「テントを増やすまでだから」
ルイシーとフィリシスは、まずフィリシスがストラディゴスと共にいる時間を増やし、監視しやすくする事から始めた。
ストラディゴスは、フィリシスを仲間として気に入っていたが、その人見知りな性格と、竜人族と言う事で、自分から夜這いをかける様な事は、避けていた。
下手をすると、拒否された挙句、本当に殺されかねないと勝手に警戒していたのだ。
ストラディゴスにとってのそんな存在が、ルイシーの頼みでストラディゴスの私生活に介入してくるのは、迷惑でしかなかった筈である。
だが、ルイシーの頼みとあっては、ストラディゴスは一度は受け入れる他に無かった。
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