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第8章

第8章:ストラディゴス四股事件2(別視点:回想)

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「わぁっ!? わ、わりぃ!?」

 フィリシスはストラディゴスのテントに入るなり、濡れ場に遭遇してしまった。
 それは、フィリシスが初めて見るセックスと言う行為であった。

 それが本来は子を成す行為である事を、フィリシスは、まだ知らない。

 それでも、裸の男女が普段見せぬ顔を見せているのを見れば、それが個人的な事であり、他人が踏み入ってよい行為では無い事ぐらいはフィリシスにも分かる。

 ストラディゴスのペニスを膣で受け入れる蛙人族のカルロッタ。
 膣に指を入れられ腰を振る狼人族のコイトス。

 それは、カルロッタの開通式であり、ストラディゴスにとってしてみれば日常。
 ただの三人プレイであった。

「フィリシスもやる?」

 誤魔化す様な笑顔のコイトスに誘われるが、フィリシスは目の前の行為が何なのかさえ分かっていない。



 慌ててテントから逃げると、フィリシスは股から足を伝い水滴が垂れている事に気付き、胸のドキドキが止まらない。
 とても悪い事をした様な気分になりながら、ルイシーを探す。

 怖い夢を見て母親を求めて探す幼子と同じだが、赤面したままのフィリシスには、本当に訳の分からない状況がひたすらに恐ろしかった。

 ストラディゴス達が何をしていたのかも気になるし、この事をルイシーが知っているのかも気になる。
 それに、自分の中の変な気持ちの正体も知りたかった。



 やっと見つけたルイシーは、傭兵団の子供や孤児達を寝かしつけていた。
 声も出さずに血相を変えたフィリシスが助けを求めてルイシーに駆け寄る。

「ス、ストラディゴスが……」

「どうしたの?」

「女の人と裸で、わからない……」

「わからない? ……裸でって事は、セックスでまた変な事でもしてたの?」

「また? セックス? ルイシーは、何か知ってるのか? 教えてくれ!」

「あなたは、知らないの? セックス」

「オレは、今まであんなの見た事ねぇよ。なんか変だった……気持ち悪ぃ……」

「初めてにしては、刺激が強すぎたのかも……フィリシス、良い? この子達を寝かしつけたら、ちゃんと教えてあげるから、まずは深呼吸して落ち着いて」

 フィリシスはルイシーに言われるままに深呼吸をする。

「落ち着いた?」

「少しだけ……」

「いい? 落ち着いて聞いてね。ストラディゴス達がしてたのは、セックスと言って、子供を作ってたのよ」

「子供?」

「ここの子達も、そうやって出来たの。私も、あなただって」

「子供を、作る?」

「そう。女の人のお腹の中に、男の人が種を植えると、お腹が大きくなって赤ちゃんが出来るの」

「どういう事だ?」

「フィリシス、自分のおしっこの穴とお尻の穴の間に、もう一つ穴があるのは分かる?」

「時々、血が出て来る穴だろ?」

「そう。そこに、男の人のおちんちんを入れて、種を付けて貰うと、うまくいくと赤ちゃんが出来るのよ」

「???」

「その穴は、赤ちゃんを産む為の穴なの」

「!?」

 フィリシスは、ずっと膣は時々血の塊が出て来るだけの穴だと思っていた。
 尿道や肛門と同じ様に、排泄器官だと漠然と思っていたのだ。
 イライラしたり体調が悪いと、血を出す、そんな穴だと。

 それから、テントの中の子供達を見た。

 孤児もいれば、ルイシーの娘ラーナも、コイトスやティアリーレの子供もそこにはいる。
 今まで、どうすれば子供が出来るか等、考えた事も無かった。

「じゃあ、ルイシーも、ああやってストラディゴスとラーナを作ったのか?」

「今ストラディゴスがどんな事をしてるかにもよるけど……まあ、その通りよ」

 ルイシーは、想像を超えたプレイをされていて、それと一緒にされるのはちょっとと思ったが、面倒なので肯定した。

「なんで、あんな気持ち悪い事をして子供を?」

「フィリシス、気持ち悪いって、具体的には?」

「ここに、その……あれが、繋がって見えた……」

「それは、まあ、普通ね。そうやって男の人は赤ちゃんの種を植え付けるの」

「しょんべんが出る所だろ!?」

「そうだけど、種も出せるの」

「間違って、しょんべんしちまわないのか?」

 フィリシスは、性に興味の無い幼子の様に、おしっこをする器官は汚いと言う知っている知識をベースにしか話が出来ない。

「大丈夫よ。私も同じ事が気になってストラディゴスに聞いた事があるけど、おしっこが出る時とは全然違うんだって」

「でもよ、種なんて、あんな小さな穴から、痛くねぇのか?」

 フィリシスの言葉にルイシーは思わず吹き出してしまう。

「あはははははっ、やだ、ごめんなさい。種って言っても、水っぽいものだから。ふふふふふ、やだ、可笑しい……」

「水?」

「白くて粘々した水が出るの。精液って言うのよ」

「???」

「この子達を寝かしたら、ちゃんと教えてあげるから」



 * * *



 フィリシスは、その時初めてルイシーから性教育を受けた。
 そして、奴隷だった時に、自分はセックスをそれと認識せずに経験していた事にもようやく気付いた。

 子供を作る行為。

 戦場での戦い方しか知らなかったフィリシスには、セックスは未知の物であった。

「なあ、じゃあ、オレはなんで子供が出来なかったんだ?」

「必ず出来る訳じゃないし、その時はまだ、子供を作れる身体じゃなかったのかもね」

「じゃあさ、じゃあさ、オレが百人とセックスしたら百人の赤ちゃんが出来るのか?」

「一度でって事? いいえ、その中の誰かの子しか出来ないと思う」

「なんでだ?」

「一度に百人もお腹の中に赤ちゃんが出来たら、お母さんの方が動けなくなっちゃうでしょ? だから、一人赤ちゃんが出来たら、あとは出来ないの」

「なら、どうやって相手を決めたらいいんだ?」

「それなら、一人ずつ……って、そこじゃないのか……え~と、フィリシス、セックスは好きな人としかしちゃだめなの」

「……ストラディゴスは、なんでルイシー意外としてたんだ? ルイシーが好きなんだろ?」

「男の人は、種を植える側だから、あと彼もみんなも、お互いの事が好きだからよ」



 フィリシスは、ルイシーの説明でセックスについてはボンヤリとした理解を示したが、好きな人としかしてはいけないセックスをルイシー以外としていたストラディゴスに対してはモヤモヤとした物が残っていた。

 フィリシスは、ルイシーとストラディゴス以外には心をまだ開けていないし、ルイシーの事が間違い無く一番好きである。

 そんな彼女には、好きをみんなに振りまけるストラディゴスの行動も、それを許すルイシーの事も、セックスと同じぐらい訳の分からない物に見えた。



 好きじゃない相手と子供を作るのは悪い事。
 それは、奴隷兵士をしていた経験から素直に悪と受け入れやすい。

 好きな相手と子供を作るのは良い事。
 それは、ストラディゴスとルイシーとラーナの親子関係を見ていれば、善と受け入れやすい。

 だが、好きの程度が軽い相手と子供を作るのは、良い事なのか悪い事なのか。
 それは、コイトスとカルロッタがストラディゴスに犯されていたのを一度見ただけでは分からない。



 それでも、フィリシスは、ストラディゴスにはルイシーだけを愛して欲しいと思っていた。

 竜人族としての本能だろう。
 自分の好きな物を独占したい本能が、そこにはあった。

 その強烈な感覚だけは、嘘偽りなく理解できている。

 フィリシスは、ルイシーを独占したい。
 だが、ルイシーがストラディゴスと相思相愛である事も分かっている。
 他人の独占欲にも敏感故、ルイシーをストラディゴスから引き裂く事は出来ない。

 人間不信で、共感性が磨かれていないフィリシスには、ルイシーが独占欲の様な感情を我慢し、ストラディゴスが女達を独占している様に見えていた。
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