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第5章
第5章:ヴァローナとメイド達2(第2章ifルート:サイドストーリー)
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翌日、早朝のクジ引きにて。
ヴァローナは当たりを引かずに済み、トイレ掃除を回避する事ができた。
昨日のうちに騎士団長のエルムにクレームが届く様にとルイシーに頼んだので、今日のトイレは大丈夫だろう。
今日、トイレ掃除を引いてしまったのは、領主付きではない別のチームのメイドだったが、ヴァローナは自分に感謝するべきだと思いながら、通常業務に戻った。
現在、領主付きのメイドは九人いた。
おおよその序列順で表すと、大体こうなる。
●使用人頭兼リーダーのルイシー:人族・二十代後半・黒髪ボブ・黒瞳・小柄・Bカップ。
ストラディゴスの実質的な正妻でラーナの母。
傭兵団出身者の母親代わり。
●副リーダーのティアリーレ:人族・二十代後半・茶髪ポニー・灰瞳・長身・Dカップ。
ストラディゴスの実質的な妻の一人で、一児の母。
サバサバ系でアグレッシブ。
●レーラー:ドワーフ・二十代前半・茶髪のお団子・緑瞳・身体だけぽっちゃり・Eカップ。
新婚で、領主付きメイドの中では古参。
おっとり系。
●ヴァローナ:人族・二十代前半・赤毛シニヨン・青瞳・むっちり・Dカップ。
クレマティオの妻で一児の母。
噂好きでお喋り。
●ラーナ:人族(半巨人)・十代前半・黒髪ミディアム・黒瞳・中肉中背・Dカップ。
ルイシーとストラディゴスの娘。
傭兵団出身者には、娘みたいに見られている。
●キアラ:人豹族(黒)・二十代前半・金瞳・筋肉質な細身・Cカップ(副乳あり)。
ストラディゴスの彼女。
つかみ所がなく、カルロッタと仲が良い。
●カルロッタ:蛙人族・十代後半・深緑髪ショートレイヤー・赤瞳・細身で短い尻尾有・Aカップ。
ストラディゴスの彼女。
キアラと一緒にいる事が多く、商魂たくましい。
●ピスティ:小人族・二十代前半・赤髪セミショート・茶瞳・小柄・Bカップ。
無口で恥ずかしがり屋。
比較的新人で、みんなの話だけはしっかり聞いている。
●彩芽:人族・二十代前半・金髪だったが最近黒髪に変えたストレートロング・黒瞳・スレンダー・Mカップ。
ストラディゴスが熱をあげている彼女で、四ヶ月目の新人。
彼女達は、揃いのメイド服を身に纏い、領主の身の回りの世話を一手に引き受ける。
それが領主付きのメイドの仕事である。
仕えるのは、マルギアス王国ネヴェル領主であるヴィエニス・オルデン公爵。
彼は、現在二十代。
若くして当主となりながらも、その治世の手腕から、領民に愛されている若き領主様だ。
中性的ともとれる美しい顔立ちに、キューティクルが眩しいオカッパ髪のせいで、トレードマークの蒼い服を着ていないと女性と間違われる事さえある。
多くの領民にとっては、領主であると同時にアイドルの様な憧れの存在であり、妾でも側室でも取れば良いのに恋愛の噂も立たない事で、身持ちの固さも手伝って女性人気は圧倒的であった。
そんな領主の身の回りの世話をする領主付きメイドは、それだけで羨ましがられ、さらに給金も良い。
来客でも無い限りは、九人の内六人が毎日ローテーションで任務に当たり、着替え、湯浴みの手伝い、入る事を許されている領主専用部屋の管理、手紙の仕分け、話し相手から、その他領主の命じるあらゆる雑務を手足の様にこなしていく。
領主は出かける事が多く城をあけがちなので、領主付きメイド達はお喋りを楽しみながらの仕事が日課となっていた。
「ロッテ、キアラ」
寝不足のレーラーが領主の部屋の掃除をしながら、共に掃除をしている二人に手を止めずに声をかけた。
その表情には、顧客満足度の高さが窺え、二人はニヤリと答える。
「使ったね、これは。ねぇ、キアラ」
「どうでした? ご感想は?」
「もうね……すごかった。あんなの初めて。もう、なんて言うか、まるで別人みたいで……」
「でしょ」
「値段の価値は、ありましたでしょ?」
「気が付いたら朝になってたなんて、ほんとに初めて。また、是非お願いしてもいいかしら?」
「ちゃんと仕入れときますから。ねぇ、キアラ」
「この事はみんなには内緒ですよ、レーラー。奪い合いになっては、あなたにお売りする事が……」
ヴァローナは、掃除をしながら聞こえてくる話に聞き耳を立てた。
昨日の夜は、クレマティオに三度も愛され久しぶりに熱い夜を過ごした。
過ごしたのだが、熱かったのは、せいぜい一時間強程度。
三度目には、クレマティオの出す量も快感も少なくなり、ヴァローナを喜ばせようと無理をしているのは分かっていた。
結局、最後はクレマティオの為にイッたフリをして終えたのだが、満足しようと思ってしたせいか、かえって不満が残ってしまった。
それにしても、朝までとは誇張のしすぎでは無いか?
いくらドワーフが体力に優れた種族とはいえ、レーラーは何時間を愛し合う事に費やしたのか細かい所が気になってしまう。
すると、レーラーが洗濯物をとってくると席を外し、カルロッタとキアラは、この時を待っていたかのようにヴァローナの方に近づいて挟む様に掃除を始めた。
「なんです?」
「またまた、レーラーの聞いてたでしょ。顔を見れば分かりますって先輩」
「昨日はクレオの事意識したんじゃない? それで、どうでした?」
「どうって?」
「またまた、満足出来なかったのなんて反応を見れば分かりますって。ねぇ、キアラ」
「あなたのクレオ自慢が聞こえて来ないなんて、おかしいですからね。ねぇ、ロッテ」
「……バカを言わないでください。ちゃんと昨日なんて、三度もいかされちゃって……」
「それはお盛んな事で、でもヴァローナ、それが倍に増えるって聞いたら、どうかしら?」
「倍?」
ヴァローナは、思わず聞き返してしまい、しまったと思った。
「身体に悪い物は何も入っていませんから、一度試してみては?」
完全に、危ない薬を勧めるテイストの誘い文句だったにも関わらず、ヴァローナはお試しにと薬を一本受け取って、持ち帰って来てしまった。
クレマティオに飲ませれば、すぐに効果は分かると言われたが、飲ませるタイミングが見つからない。
料理に混ぜても良いと言われたが、直接飲むのが一番効くと言う話だ。
その日は結局、薬は飲ます事はせず、いつも通りに一度だけ愛し合う。
遠くで、発情した猫の様な声が聞こえた気がした。
煩い。
そう思いながら、ヴァローナは悶々としながら眠るのであった。
* * *
翌日。
ヴァローナは、何の嫌がらせかと思った。
これだけ大勢使用人がいると言うのに、またトイレ掃除クジに当たり、掃除をしに行ってみれば非番のストラディゴスの声がトイレから聞こえてくるのだ。
「掃除したいのですけど!」
「ヴァローナか、悪いが当分取り込み中だ!」
「せめて綺麗に使ってくださいね!」
溜息をつき、先に下の階から掃除しようとトイレに入ると、竪穴の上の方から声が聞こえてくる。
ヴァローナが聞き耳を立てると、彩芽とストラディゴスの会話が聞こえて来た。
「く、くるしぃよぅ、もう、これ以上は入らな……」
「もうすぐ、全部出し切るから、もう少し……ん、んぁ、はぁはぁ…………そう、そこに立って、ほら、もっと見える様に」
「ほ、本当に見たいの?」
「見たい。はやく見せてくれ、ほら、広げて」
「ちょ、この体勢きついから、ささえてて」
「これでどうだ?」
少しすると、ちょろちょろと水が流れる音がして、その後は竪穴をじょぼじょぼと音を立てて大量の水が流れ落ち始めた。
小便にしても彩芽に出せる量ではない。
タライに貯めた水を、ゆっくりと便器の中へ流していく様な水音と、聞こえてくるおならの様な音。
水の音が途切れると、再び二人の会話が聞こえて来た。
「こんなのが良いの? あ、まって、汚いから」
「お前の身体に汚い所なんて無い」
どうやら、懲りずにトイレで始めてしまったらしい。
二人共非番だからと言って、自由過ぎる。
仕方なく、二人の行為の声を聞きながら掃除を始める。
昨夜の猫の鳴き声が彩芽の喘ぎ声だった事に気付き、ヴァローナはイラつく。
しばらく掃除をしていると、一向に上の階の情事は終わる気配がない。
なんとも艶めかしく、気持ちの良さそうな声が聞こえ続ける。
あれが演技で無いのなら、自分も経験してみたい。
そんな事を思ってしまう自分を戒め、現行犯で一言モノ申してやろうと上の階へと戻ると、丁度トイレからコソコソと二人が出て来る所に遭遇した。
「ヴァローナ、待たせたな」
「待たせたなじゃないですから!」
ヴァローナがトイレを開けると、行為の臭いが個室にたちこめていた。
だが、トイレ自体は綺麗なままだ。
「的は外さなかったみたいですね」
「あ、さては言いつけたのお前だな? ルイシーに怒られて酷い目に遭ったんだぞ」
ストラディゴスは、自分が悪いのに悪びれる事なく、悪事を娘から母親に告げ口された父親の様な甘い態度でヴァローナに言った。
「アヤメさんに掃除させておいて、何言ってるんですか」
「アヤメ、そんな事していたのか!? ウィクトルの仕事だって言ったのに」
「私はいいから、ヴァローナ、掃除の邪魔しちゃってごめんね」
「ウィクトルさん、今仕事を休んでるんですよ。ストラディゴスさんは、そんな事も知らないんですか?」
「なんだって!? あいつ、どうりで来ないと……ウィクトルの奴、俺に一言も無しで……」
「なんでストラディゴスさんに断らないといけないんですか。まったく、もぉ」
「ヴァローナ、今日は嫌にカリカリしてるな、クレマティオと上手く行ってないのか?」
「ああもぅ! みんなしてなんでそう言う事言うんですか! 上手くいってます!」
「……それなら良いが、邪魔して悪かったな」
逃げる様にストラディゴスと彩芽が去ると、ヴァローナは釈然としない気持ちのまま掃除を始める。
みんなで幸せそうにして、まるでクレマティオと自分を否定されている様で腹が立ちながら。
その夜。
「クレオ、他の人のセックスって見た事ある?」
「……そりゃ、あるさ」
「誰の?」
「副長とルイシーさん、ほら、昔はテントだっただろ。何人かで覗きに行くのが楽しみだった」
「どんなだった?」
「どんなって、エロかった。決まってるだろ」
「私達って、二人みたいに出来てるのかな?」
「副長みたいには、なぁ……巨人とじゃ比べ物にならないから。ヴァローナは、やっぱり俺じゃ満足できないのか?」
「ううん。でも、今日ね、偶然アヤメがストラディゴスさんとしてる声を聞いちゃったんだけど、なんだか全然違ったの。私も、あなたであんな風になってみたいって」
「副長みたいにって言われると、俺も断言する自信が無いよ。副長のちんこ見た事あるか?」
「え、あるけど。浴場でも見るし、時々裸で歩いてるし」
「大きくなった時」
「それは、無いけど、あれが立つだけじゃないの?」
ヴァローナは正確に計測した事など無いが、四十センチメートルほどだろうと思う。
「副長のは、お前の腕ぐらいになるんだ」
ヴァローナは自分の腕を見た。
肘までで、大体そのぐらいだろう。
やはり予想通りだと思うが、クレマティオがヴァローナの肩を触る。
「こんなのとくらべらちまうとな。ルイシーさんかコイトスさんに一緒に相談に行ってみるか?」
驚きながらヴァローナは、自身の肩までをペニスに見立てて想像してみた。
腕の長さは七十センチメートル弱あった。
確かに、比べる物としては間違えている気がする。
* * *
二人が非番の日。
クレマティオに肩車されたケルシュとヴァローナの三人は、揃ってコイトスのいる会計係の部屋へと尋ねていた。
入り口で老齢の会計係ヴァ―ルが迎えてくれると、部屋の奥で計算をしているコイトスを呼んでくれる。
計算していて二人の来訪に気付いていなかった様で、ヴァ―ルの呼び声に狼耳を立てて反応したのが見えた。
「二人ともこんな所にどうしたの?」
「あの、相談したい事があって」
「相談?」
ヴァ―ルにケルシュを任せ、三人はコイトスの席で話をした。
「まんねりだねぇ……」
「まんねりですか……」
「私に相談に来たって事は、本でしょ? はいこれ」
「いつも持ち歩いてるんですか、こんなおっきいのに」
「悩める若者は多いのよ」
ヴァローナは本を広げると、びっしりと字の波が視界を襲う。
すぐにわかった。
これを全て読むのは、恐らく無理だ。
クレマティオも、読書の習慣は無く、夫婦がお互い相手に読んでもらってからリードして欲しがっているのがすぐに分かった。
二人共、字こそ読めるが本の読み方を知らないのだ。
ケルシュにせがまれる絵本でさえ、字が多いと苦痛と言うレベル。
「コイトスさん、この中でおススメの方法をサラッと聞かせて貰えたりは……」
「あんた難しい事言うねぇ。二人の好みがわからないと何とも言えなけど、普段はどんな感じなの?」
ヴァローナは、ヴァ―ルに遊んでもらっているケルシュを見てからコイトスのヒヤリングに応じる。
「あの子が寝てから、ベッドで二人で触り合って、それから入れて貰って……」
「ちょっと待って、どこでやってるの?」
「自分達の部屋です」とクレマティオ。
「ケルシュは?」
「寝てます」
とクレマティオが言うと、ヴァローナが頷く。
「まずは、ケルシュを誰かに預けて、二人っきりの時間を作ってみたら? あとは、道具を使ってみるとか」
「道具って?」とヴァローナ。
「二人なら、オイルで身体の滑りを良くしたりぐらいからかな……」
「オイルですか……」とクレマティオ。
「あとは、ルイシーに直接教えて貰うとか」
「それって、クレオをルイシーさんとって事!? 嫌ですそれは、いくらルイシーさんでも……」
「いやいや、ルイシーにメンターをして貰って、二人は指示を受けながらやるの。それに、ルイシーはストラディゴス一筋だから、クレオとは向こうも嫌がると思うよ」
「そ、そうですよね。でも、ルイシーさんに見られながらって言うのも、ちょっと」
ヴァローナが嫌そうにしているのを見て、言いこそしなかったがクレマティオは昔覗いていた相手に今度は見られるのは興奮すると密かに思い、想像した。
「ケルシュは、なんならウチで預かるよ。一人も二人も一緒だし、そうすれば二人は色々新しく試せるんじゃない?」
ヴァローナは当たりを引かずに済み、トイレ掃除を回避する事ができた。
昨日のうちに騎士団長のエルムにクレームが届く様にとルイシーに頼んだので、今日のトイレは大丈夫だろう。
今日、トイレ掃除を引いてしまったのは、領主付きではない別のチームのメイドだったが、ヴァローナは自分に感謝するべきだと思いながら、通常業務に戻った。
現在、領主付きのメイドは九人いた。
おおよその序列順で表すと、大体こうなる。
●使用人頭兼リーダーのルイシー:人族・二十代後半・黒髪ボブ・黒瞳・小柄・Bカップ。
ストラディゴスの実質的な正妻でラーナの母。
傭兵団出身者の母親代わり。
●副リーダーのティアリーレ:人族・二十代後半・茶髪ポニー・灰瞳・長身・Dカップ。
ストラディゴスの実質的な妻の一人で、一児の母。
サバサバ系でアグレッシブ。
●レーラー:ドワーフ・二十代前半・茶髪のお団子・緑瞳・身体だけぽっちゃり・Eカップ。
新婚で、領主付きメイドの中では古参。
おっとり系。
●ヴァローナ:人族・二十代前半・赤毛シニヨン・青瞳・むっちり・Dカップ。
クレマティオの妻で一児の母。
噂好きでお喋り。
●ラーナ:人族(半巨人)・十代前半・黒髪ミディアム・黒瞳・中肉中背・Dカップ。
ルイシーとストラディゴスの娘。
傭兵団出身者には、娘みたいに見られている。
●キアラ:人豹族(黒)・二十代前半・金瞳・筋肉質な細身・Cカップ(副乳あり)。
ストラディゴスの彼女。
つかみ所がなく、カルロッタと仲が良い。
●カルロッタ:蛙人族・十代後半・深緑髪ショートレイヤー・赤瞳・細身で短い尻尾有・Aカップ。
ストラディゴスの彼女。
キアラと一緒にいる事が多く、商魂たくましい。
●ピスティ:小人族・二十代前半・赤髪セミショート・茶瞳・小柄・Bカップ。
無口で恥ずかしがり屋。
比較的新人で、みんなの話だけはしっかり聞いている。
●彩芽:人族・二十代前半・金髪だったが最近黒髪に変えたストレートロング・黒瞳・スレンダー・Mカップ。
ストラディゴスが熱をあげている彼女で、四ヶ月目の新人。
彼女達は、揃いのメイド服を身に纏い、領主の身の回りの世話を一手に引き受ける。
それが領主付きのメイドの仕事である。
仕えるのは、マルギアス王国ネヴェル領主であるヴィエニス・オルデン公爵。
彼は、現在二十代。
若くして当主となりながらも、その治世の手腕から、領民に愛されている若き領主様だ。
中性的ともとれる美しい顔立ちに、キューティクルが眩しいオカッパ髪のせいで、トレードマークの蒼い服を着ていないと女性と間違われる事さえある。
多くの領民にとっては、領主であると同時にアイドルの様な憧れの存在であり、妾でも側室でも取れば良いのに恋愛の噂も立たない事で、身持ちの固さも手伝って女性人気は圧倒的であった。
そんな領主の身の回りの世話をする領主付きメイドは、それだけで羨ましがられ、さらに給金も良い。
来客でも無い限りは、九人の内六人が毎日ローテーションで任務に当たり、着替え、湯浴みの手伝い、入る事を許されている領主専用部屋の管理、手紙の仕分け、話し相手から、その他領主の命じるあらゆる雑務を手足の様にこなしていく。
領主は出かける事が多く城をあけがちなので、領主付きメイド達はお喋りを楽しみながらの仕事が日課となっていた。
「ロッテ、キアラ」
寝不足のレーラーが領主の部屋の掃除をしながら、共に掃除をしている二人に手を止めずに声をかけた。
その表情には、顧客満足度の高さが窺え、二人はニヤリと答える。
「使ったね、これは。ねぇ、キアラ」
「どうでした? ご感想は?」
「もうね……すごかった。あんなの初めて。もう、なんて言うか、まるで別人みたいで……」
「でしょ」
「値段の価値は、ありましたでしょ?」
「気が付いたら朝になってたなんて、ほんとに初めて。また、是非お願いしてもいいかしら?」
「ちゃんと仕入れときますから。ねぇ、キアラ」
「この事はみんなには内緒ですよ、レーラー。奪い合いになっては、あなたにお売りする事が……」
ヴァローナは、掃除をしながら聞こえてくる話に聞き耳を立てた。
昨日の夜は、クレマティオに三度も愛され久しぶりに熱い夜を過ごした。
過ごしたのだが、熱かったのは、せいぜい一時間強程度。
三度目には、クレマティオの出す量も快感も少なくなり、ヴァローナを喜ばせようと無理をしているのは分かっていた。
結局、最後はクレマティオの為にイッたフリをして終えたのだが、満足しようと思ってしたせいか、かえって不満が残ってしまった。
それにしても、朝までとは誇張のしすぎでは無いか?
いくらドワーフが体力に優れた種族とはいえ、レーラーは何時間を愛し合う事に費やしたのか細かい所が気になってしまう。
すると、レーラーが洗濯物をとってくると席を外し、カルロッタとキアラは、この時を待っていたかのようにヴァローナの方に近づいて挟む様に掃除を始めた。
「なんです?」
「またまた、レーラーの聞いてたでしょ。顔を見れば分かりますって先輩」
「昨日はクレオの事意識したんじゃない? それで、どうでした?」
「どうって?」
「またまた、満足出来なかったのなんて反応を見れば分かりますって。ねぇ、キアラ」
「あなたのクレオ自慢が聞こえて来ないなんて、おかしいですからね。ねぇ、ロッテ」
「……バカを言わないでください。ちゃんと昨日なんて、三度もいかされちゃって……」
「それはお盛んな事で、でもヴァローナ、それが倍に増えるって聞いたら、どうかしら?」
「倍?」
ヴァローナは、思わず聞き返してしまい、しまったと思った。
「身体に悪い物は何も入っていませんから、一度試してみては?」
完全に、危ない薬を勧めるテイストの誘い文句だったにも関わらず、ヴァローナはお試しにと薬を一本受け取って、持ち帰って来てしまった。
クレマティオに飲ませれば、すぐに効果は分かると言われたが、飲ませるタイミングが見つからない。
料理に混ぜても良いと言われたが、直接飲むのが一番効くと言う話だ。
その日は結局、薬は飲ます事はせず、いつも通りに一度だけ愛し合う。
遠くで、発情した猫の様な声が聞こえた気がした。
煩い。
そう思いながら、ヴァローナは悶々としながら眠るのであった。
* * *
翌日。
ヴァローナは、何の嫌がらせかと思った。
これだけ大勢使用人がいると言うのに、またトイレ掃除クジに当たり、掃除をしに行ってみれば非番のストラディゴスの声がトイレから聞こえてくるのだ。
「掃除したいのですけど!」
「ヴァローナか、悪いが当分取り込み中だ!」
「せめて綺麗に使ってくださいね!」
溜息をつき、先に下の階から掃除しようとトイレに入ると、竪穴の上の方から声が聞こえてくる。
ヴァローナが聞き耳を立てると、彩芽とストラディゴスの会話が聞こえて来た。
「く、くるしぃよぅ、もう、これ以上は入らな……」
「もうすぐ、全部出し切るから、もう少し……ん、んぁ、はぁはぁ…………そう、そこに立って、ほら、もっと見える様に」
「ほ、本当に見たいの?」
「見たい。はやく見せてくれ、ほら、広げて」
「ちょ、この体勢きついから、ささえてて」
「これでどうだ?」
少しすると、ちょろちょろと水が流れる音がして、その後は竪穴をじょぼじょぼと音を立てて大量の水が流れ落ち始めた。
小便にしても彩芽に出せる量ではない。
タライに貯めた水を、ゆっくりと便器の中へ流していく様な水音と、聞こえてくるおならの様な音。
水の音が途切れると、再び二人の会話が聞こえて来た。
「こんなのが良いの? あ、まって、汚いから」
「お前の身体に汚い所なんて無い」
どうやら、懲りずにトイレで始めてしまったらしい。
二人共非番だからと言って、自由過ぎる。
仕方なく、二人の行為の声を聞きながら掃除を始める。
昨夜の猫の鳴き声が彩芽の喘ぎ声だった事に気付き、ヴァローナはイラつく。
しばらく掃除をしていると、一向に上の階の情事は終わる気配がない。
なんとも艶めかしく、気持ちの良さそうな声が聞こえ続ける。
あれが演技で無いのなら、自分も経験してみたい。
そんな事を思ってしまう自分を戒め、現行犯で一言モノ申してやろうと上の階へと戻ると、丁度トイレからコソコソと二人が出て来る所に遭遇した。
「ヴァローナ、待たせたな」
「待たせたなじゃないですから!」
ヴァローナがトイレを開けると、行為の臭いが個室にたちこめていた。
だが、トイレ自体は綺麗なままだ。
「的は外さなかったみたいですね」
「あ、さては言いつけたのお前だな? ルイシーに怒られて酷い目に遭ったんだぞ」
ストラディゴスは、自分が悪いのに悪びれる事なく、悪事を娘から母親に告げ口された父親の様な甘い態度でヴァローナに言った。
「アヤメさんに掃除させておいて、何言ってるんですか」
「アヤメ、そんな事していたのか!? ウィクトルの仕事だって言ったのに」
「私はいいから、ヴァローナ、掃除の邪魔しちゃってごめんね」
「ウィクトルさん、今仕事を休んでるんですよ。ストラディゴスさんは、そんな事も知らないんですか?」
「なんだって!? あいつ、どうりで来ないと……ウィクトルの奴、俺に一言も無しで……」
「なんでストラディゴスさんに断らないといけないんですか。まったく、もぉ」
「ヴァローナ、今日は嫌にカリカリしてるな、クレマティオと上手く行ってないのか?」
「ああもぅ! みんなしてなんでそう言う事言うんですか! 上手くいってます!」
「……それなら良いが、邪魔して悪かったな」
逃げる様にストラディゴスと彩芽が去ると、ヴァローナは釈然としない気持ちのまま掃除を始める。
みんなで幸せそうにして、まるでクレマティオと自分を否定されている様で腹が立ちながら。
その夜。
「クレオ、他の人のセックスって見た事ある?」
「……そりゃ、あるさ」
「誰の?」
「副長とルイシーさん、ほら、昔はテントだっただろ。何人かで覗きに行くのが楽しみだった」
「どんなだった?」
「どんなって、エロかった。決まってるだろ」
「私達って、二人みたいに出来てるのかな?」
「副長みたいには、なぁ……巨人とじゃ比べ物にならないから。ヴァローナは、やっぱり俺じゃ満足できないのか?」
「ううん。でも、今日ね、偶然アヤメがストラディゴスさんとしてる声を聞いちゃったんだけど、なんだか全然違ったの。私も、あなたであんな風になってみたいって」
「副長みたいにって言われると、俺も断言する自信が無いよ。副長のちんこ見た事あるか?」
「え、あるけど。浴場でも見るし、時々裸で歩いてるし」
「大きくなった時」
「それは、無いけど、あれが立つだけじゃないの?」
ヴァローナは正確に計測した事など無いが、四十センチメートルほどだろうと思う。
「副長のは、お前の腕ぐらいになるんだ」
ヴァローナは自分の腕を見た。
肘までで、大体そのぐらいだろう。
やはり予想通りだと思うが、クレマティオがヴァローナの肩を触る。
「こんなのとくらべらちまうとな。ルイシーさんかコイトスさんに一緒に相談に行ってみるか?」
驚きながらヴァローナは、自身の肩までをペニスに見立てて想像してみた。
腕の長さは七十センチメートル弱あった。
確かに、比べる物としては間違えている気がする。
* * *
二人が非番の日。
クレマティオに肩車されたケルシュとヴァローナの三人は、揃ってコイトスのいる会計係の部屋へと尋ねていた。
入り口で老齢の会計係ヴァ―ルが迎えてくれると、部屋の奥で計算をしているコイトスを呼んでくれる。
計算していて二人の来訪に気付いていなかった様で、ヴァ―ルの呼び声に狼耳を立てて反応したのが見えた。
「二人ともこんな所にどうしたの?」
「あの、相談したい事があって」
「相談?」
ヴァ―ルにケルシュを任せ、三人はコイトスの席で話をした。
「まんねりだねぇ……」
「まんねりですか……」
「私に相談に来たって事は、本でしょ? はいこれ」
「いつも持ち歩いてるんですか、こんなおっきいのに」
「悩める若者は多いのよ」
ヴァローナは本を広げると、びっしりと字の波が視界を襲う。
すぐにわかった。
これを全て読むのは、恐らく無理だ。
クレマティオも、読書の習慣は無く、夫婦がお互い相手に読んでもらってからリードして欲しがっているのがすぐに分かった。
二人共、字こそ読めるが本の読み方を知らないのだ。
ケルシュにせがまれる絵本でさえ、字が多いと苦痛と言うレベル。
「コイトスさん、この中でおススメの方法をサラッと聞かせて貰えたりは……」
「あんた難しい事言うねぇ。二人の好みがわからないと何とも言えなけど、普段はどんな感じなの?」
ヴァローナは、ヴァ―ルに遊んでもらっているケルシュを見てからコイトスのヒヤリングに応じる。
「あの子が寝てから、ベッドで二人で触り合って、それから入れて貰って……」
「ちょっと待って、どこでやってるの?」
「自分達の部屋です」とクレマティオ。
「ケルシュは?」
「寝てます」
とクレマティオが言うと、ヴァローナが頷く。
「まずは、ケルシュを誰かに預けて、二人っきりの時間を作ってみたら? あとは、道具を使ってみるとか」
「道具って?」とヴァローナ。
「二人なら、オイルで身体の滑りを良くしたりぐらいからかな……」
「オイルですか……」とクレマティオ。
「あとは、ルイシーに直接教えて貰うとか」
「それって、クレオをルイシーさんとって事!? 嫌ですそれは、いくらルイシーさんでも……」
「いやいや、ルイシーにメンターをして貰って、二人は指示を受けながらやるの。それに、ルイシーはストラディゴス一筋だから、クレオとは向こうも嫌がると思うよ」
「そ、そうですよね。でも、ルイシーさんに見られながらって言うのも、ちょっと」
ヴァローナが嫌そうにしているのを見て、言いこそしなかったがクレマティオは昔覗いていた相手に今度は見られるのは興奮すると密かに思い、想像した。
「ケルシュは、なんならウチで預かるよ。一人も二人も一緒だし、そうすれば二人は色々新しく試せるんじゃない?」
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