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天女と龍
龍の正体
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「羽香奈の気持ちが落ち着いてからでいいし、なんだったら今日じゃなくてもいい。
ちょっと、付き合って欲しい場所があるんだ」
「えっ、何? どこ?」
葉織から直々のお誘いを、羽香奈が断るはずもない。
それは言う前からわかっていたし無理はして欲しくはないんだけど。
休んでからにしようと言っても無駄かなと苦笑して、葉織は出かけることにした。
彼女を連れて、望むままに。
付き合って欲しい場所などともったいつけたが、そこは何のことはない、家から出てほんの数歩の先にある。
今やすっかり、羽香奈の足にもなじんだ、奥津宮への道を歩む。
週末なので平日よりは観光客の姿も多い。
なるべく人の少ない、拝殿から離れた場所、木の密集した場所を選んで並び立つ。
もう間もなく、夏至を迎えるこの時期は、陽射しも最も強い気がする。
江ノ島の地面も強い光を受けて白く輝く場所と、分厚い木々の葉に遮られて濃い影を落とす場所とで両極端だ。
温室でなくても南国の植物を育てられるようなこんな場所に住んでいても葉織はそんなに暑いのが好きではないから、木陰はありがたい味方だった。
言われるままについてきたものの、ここで葉織が何をしたいのかさっぱりわからず、不思議そうに葉織を見上げる。
出会った頃はそんなに身長差もなかったふたりだったが、中学生になってからは葉織も成長期で、少しずつ差が開いてきた。
同い年のきょうだい、から、「男女の体」に変わってきている。
体が変わってしまっても、時が流れても、心の持ちようまでは変わらなくていい。
先ほどひとりで考えて葉織はそう結論付けて、それを羽香奈にも伝えたかったのだ。
羽香奈の足元を見る。
真っ黒な木陰の中に、白い靄がぽつんと落ちている。
不自然に。
葉織はしゃがみこんでそれを手にすくい上げて、いつかの元旦にそうしたように流木を与える。
あの時と同じような龍の形に変わったが、違うところもある。
表情だ。
あの時の龍はどこか不満がありそうに口元がやや曲がっていたが、今日の龍はその目から自信が溢れていた。
『やっとわかったんだな。オレが何なのか』
「やっとわかったんだ。
この白いのは、オレの心の色だったんだって」
「え……? だったら、どうして龍の形になるの?」
「話すとすごーく長くなるから、それはまた今度でいい?
今は先に、羽香奈に聞いて欲しいことがあって」
「うん……葉織くんがそう言うなら」
ちょっと、付き合って欲しい場所があるんだ」
「えっ、何? どこ?」
葉織から直々のお誘いを、羽香奈が断るはずもない。
それは言う前からわかっていたし無理はして欲しくはないんだけど。
休んでからにしようと言っても無駄かなと苦笑して、葉織は出かけることにした。
彼女を連れて、望むままに。
付き合って欲しい場所などともったいつけたが、そこは何のことはない、家から出てほんの数歩の先にある。
今やすっかり、羽香奈の足にもなじんだ、奥津宮への道を歩む。
週末なので平日よりは観光客の姿も多い。
なるべく人の少ない、拝殿から離れた場所、木の密集した場所を選んで並び立つ。
もう間もなく、夏至を迎えるこの時期は、陽射しも最も強い気がする。
江ノ島の地面も強い光を受けて白く輝く場所と、分厚い木々の葉に遮られて濃い影を落とす場所とで両極端だ。
温室でなくても南国の植物を育てられるようなこんな場所に住んでいても葉織はそんなに暑いのが好きではないから、木陰はありがたい味方だった。
言われるままについてきたものの、ここで葉織が何をしたいのかさっぱりわからず、不思議そうに葉織を見上げる。
出会った頃はそんなに身長差もなかったふたりだったが、中学生になってからは葉織も成長期で、少しずつ差が開いてきた。
同い年のきょうだい、から、「男女の体」に変わってきている。
体が変わってしまっても、時が流れても、心の持ちようまでは変わらなくていい。
先ほどひとりで考えて葉織はそう結論付けて、それを羽香奈にも伝えたかったのだ。
羽香奈の足元を見る。
真っ黒な木陰の中に、白い靄がぽつんと落ちている。
不自然に。
葉織はしゃがみこんでそれを手にすくい上げて、いつかの元旦にそうしたように流木を与える。
あの時と同じような龍の形に変わったが、違うところもある。
表情だ。
あの時の龍はどこか不満がありそうに口元がやや曲がっていたが、今日の龍はその目から自信が溢れていた。
『やっとわかったんだな。オレが何なのか』
「やっとわかったんだ。
この白いのは、オレの心の色だったんだって」
「え……? だったら、どうして龍の形になるの?」
「話すとすごーく長くなるから、それはまた今度でいい?
今は先に、羽香奈に聞いて欲しいことがあって」
「うん……葉織くんがそう言うなら」
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