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天女と龍
人生でたったひとり
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「俺に彼女が出来てから、芭苗がさ。
学校で話しかけても無視するし。
家に行っても会ってくれないし……
つまんないんだよね」
「彼女って同じ学校だっけ?
そりゃ、そうなるんじゃないの?」
思ったより芭苗の対応が常識的だなぁ、と、葉織にとってはそっちの方が意外だった。
「彼女出来ると女友達とは話すら出来なくなるの~?
それが普通~?」
「普通かどうかは知らないけど……
ハナちゃんはそういうのちゃんと気にして、彼女に気を使ってあげられるタイプだったってだけだろ?
仕方ないじゃん」
「そっか~。
芭苗ってそういうタイプだったか~」
「いや……オレよりみー君の方がわかってないとおかしいだろ?
ハナちゃんのことならさ」
未知夫は頭が良くて成績も学年上位、話し上手でお洒落も気にしてるので女子にモテる。
彼女がいたのも今回が初めてじゃない。
三人目? だったっけ。覚えてないけど。
「彼女のこと好きなら、ハナちゃんのこと気にしてる場合じゃなくない?」
「好きっていうか、告白されたらとりあえず付き合ってるだけだもん」
「好きでもないのに、言われるまま付き合うんだ……」
「いかにも嫌いなタイプだったらさすがに断るけどさ~」
未知夫はテーブルに頬を擦りつけて、煮え切らない顔でぐちぐち言っている。
「彼女がいるせいでハナちゃんと話せなくなるのが嫌っていうのは、彼女よりハナちゃんの方が好きってことなんじゃないの?」
「うん……そうかもしんないって思って、最近」
考えても確信が持てなくて、だから葉織に人形にしてもらえば、自分の本心が見えるかもしれないと思った。
気の毒だとは思うが、そういう方面で自分をあてにされてはキリがない。
一度だけだと言われても許容する気にはなれなかった。
「ハナちゃんが好きならなんで別の子と付き合ったりするんだよ。
意味わかんないんだけど」
「だぁってさー。
芭苗以外の女の子のこと一切知らないで大人になるって、芭苗以外のだぁ~れも知らずに一生終えるってことじゃない?
それってなんか不安じゃない?
はっちだって似たような立場じゃん」
「オレが?」
「このまましおちゃんと一生一緒にいるとしたら、それ以外の女の子のこと知る機会がないじゃん。
おまけにしおちゃん相手じゃ女の子っていうより、きょうだいとか家族なんだろ?
家族になる前の女の子とのあまぁ~い幸せ、知らないままの人生でいいのかなって思わないの?」
それはそれで潔すぎて俺にだって理解出来ないよ。
そんな未知夫の言葉はちょっとだけ、胸に痛く突き刺さる感覚があった。
葉織にとっては助け舟となったが、そのタイミングでハツがお茶を淹れて戻ってきた。
よたよたとした足取りで熱いお茶を三つも載せたお盆を持っているから気が気でなく、葉織は急ぎ足でハツの元へ行き、お盆を受け取る。
話は中断してしまったものの葉織に悩みを話した直後に甘い物を食べて熱い緑茶で寛いだ効果か、未知夫も少し気が紛れたようだ。
帰り際、家を出て見送る時。
「悪いね~、急に押しかけて情けない話しちゃって。
でも、はっちだけじゃなくしおちゃんの為にも、今後のことは考えた方がいいんじゃない」
「まぁ……それは、そう。考えるよ」
半蔵も帰ってきたのでハツを任せて、葉織は自室に戻った。
勉強机の椅子に座りこんで、波雪の遺影と窓の外の海を眺めて考えに耽る。
自分と羽香奈の、未来のことを。
学校で話しかけても無視するし。
家に行っても会ってくれないし……
つまんないんだよね」
「彼女って同じ学校だっけ?
そりゃ、そうなるんじゃないの?」
思ったより芭苗の対応が常識的だなぁ、と、葉織にとってはそっちの方が意外だった。
「彼女出来ると女友達とは話すら出来なくなるの~?
それが普通~?」
「普通かどうかは知らないけど……
ハナちゃんはそういうのちゃんと気にして、彼女に気を使ってあげられるタイプだったってだけだろ?
仕方ないじゃん」
「そっか~。
芭苗ってそういうタイプだったか~」
「いや……オレよりみー君の方がわかってないとおかしいだろ?
ハナちゃんのことならさ」
未知夫は頭が良くて成績も学年上位、話し上手でお洒落も気にしてるので女子にモテる。
彼女がいたのも今回が初めてじゃない。
三人目? だったっけ。覚えてないけど。
「彼女のこと好きなら、ハナちゃんのこと気にしてる場合じゃなくない?」
「好きっていうか、告白されたらとりあえず付き合ってるだけだもん」
「好きでもないのに、言われるまま付き合うんだ……」
「いかにも嫌いなタイプだったらさすがに断るけどさ~」
未知夫はテーブルに頬を擦りつけて、煮え切らない顔でぐちぐち言っている。
「彼女がいるせいでハナちゃんと話せなくなるのが嫌っていうのは、彼女よりハナちゃんの方が好きってことなんじゃないの?」
「うん……そうかもしんないって思って、最近」
考えても確信が持てなくて、だから葉織に人形にしてもらえば、自分の本心が見えるかもしれないと思った。
気の毒だとは思うが、そういう方面で自分をあてにされてはキリがない。
一度だけだと言われても許容する気にはなれなかった。
「ハナちゃんが好きならなんで別の子と付き合ったりするんだよ。
意味わかんないんだけど」
「だぁってさー。
芭苗以外の女の子のこと一切知らないで大人になるって、芭苗以外のだぁ~れも知らずに一生終えるってことじゃない?
それってなんか不安じゃない?
はっちだって似たような立場じゃん」
「オレが?」
「このまましおちゃんと一生一緒にいるとしたら、それ以外の女の子のこと知る機会がないじゃん。
おまけにしおちゃん相手じゃ女の子っていうより、きょうだいとか家族なんだろ?
家族になる前の女の子とのあまぁ~い幸せ、知らないままの人生でいいのかなって思わないの?」
それはそれで潔すぎて俺にだって理解出来ないよ。
そんな未知夫の言葉はちょっとだけ、胸に痛く突き刺さる感覚があった。
葉織にとっては助け舟となったが、そのタイミングでハツがお茶を淹れて戻ってきた。
よたよたとした足取りで熱いお茶を三つも載せたお盆を持っているから気が気でなく、葉織は急ぎ足でハツの元へ行き、お盆を受け取る。
話は中断してしまったものの葉織に悩みを話した直後に甘い物を食べて熱い緑茶で寛いだ効果か、未知夫も少し気が紛れたようだ。
帰り際、家を出て見送る時。
「悪いね~、急に押しかけて情けない話しちゃって。
でも、はっちだけじゃなくしおちゃんの為にも、今後のことは考えた方がいいんじゃない」
「まぁ……それは、そう。考えるよ」
半蔵も帰ってきたのでハツを任せて、葉織は自室に戻った。
勉強机の椅子に座りこんで、波雪の遺影と窓の外の海を眺めて考えに耽る。
自分と羽香奈の、未来のことを。
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