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中学生になったよ
入学式
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中学校は、江ノ島島内でも奥の方にある潮崎家から歩くにはかなり距離がある。
電車に乗ろうにも、そもそも駅までにかなり歩いているし、そこからモノレールに乗って数駅先で下車、なんて効率が悪い。
交通費だって、歩けばタダである。
日頃から早起きが習慣になっているのもあって、起きる時間を変えたりしなくても良いのだから、ふたりは歩いて通学することにした。
「今日から毎朝、葉織くんと一緒に通学出来るの嬉しい!」
「ごめん、半年も待たせて……」
「もー、謝らないでよぉ。
そういう意味で言ったんじゃないもん」
歩く時間が長かろうが、葉織と一緒なら羽香奈はご機嫌だ。
今日は入学式。
中学なら両親、祖父母等と連れだって参列する家庭も多いが、ハツにこの長距離を歩かせるのは難しい。
ハツから目を離せない半蔵も家に残っている。
「あっ、来た来た!
おーい、しおちゃ~ん!
はっち~」
校門前では芭苗と未知夫が待っていて、歩く人波の中から芭苗がいち早く葉織達を見つけて手を振る。
往来でもお構いなしの大声で呼びかける。
彼女を見たのは葉織にとってはもう一年振りくらいだが、相変わらず元気なんだなぁと思う。
そういう溌剌としたところが彼女の長所だなぁ、ともつくづく感じる。
「はっち来たんだ。久しぶり!」
葉織はきっと中学からは復学できる、一緒に通うと約束したから。
芭苗も未知夫も羽香奈からすでにそれを聞いて知っていたから、未知夫はごく自然にそう声掛けした。
「ふたりとも、ありがとう。
オレがいない間、羽香奈と仲良くしてくれて」
「はあ~?
はっちとかカンケーなくて、あたしが好きでしおちゃんと友達になっただけですけどー?」
「そーそー。
お礼言われるようなことじゃなくない?」
「だーよねー」
芭苗はにこにこ笑顔で羽香奈に抱きついてから、羽香奈の髪を撫でまわした。
しかし手つきに遠慮がなさ過ぎて、髪が乱れてしまっている。
「あーあー、まぁたやっちゃった。
ごめんねしおちゃん~、うちのガサツな芭苗がさぁ」
未知夫は制服のポケットから小さ目の櫛を取り出して、当たり前のように羽香奈の髪を整え始めた。
葉織ですらそこに直接手で触れた覚えはないのでちょっと面食らう。
この半年、小学校でも似たような場面が何度もあったから三人にとってはそんなに大事ではないのだ。
「ガサツって何よ!
親愛の証なんですけど!」
いつもだったら頭を叩いてツッコミしがちな芭苗だったが、「中学生になったら、いくらツッコミでもそう簡単に人を叩いてはいけない」と両親と約束していたため、今日は手を出さなかった。
電車に乗ろうにも、そもそも駅までにかなり歩いているし、そこからモノレールに乗って数駅先で下車、なんて効率が悪い。
交通費だって、歩けばタダである。
日頃から早起きが習慣になっているのもあって、起きる時間を変えたりしなくても良いのだから、ふたりは歩いて通学することにした。
「今日から毎朝、葉織くんと一緒に通学出来るの嬉しい!」
「ごめん、半年も待たせて……」
「もー、謝らないでよぉ。
そういう意味で言ったんじゃないもん」
歩く時間が長かろうが、葉織と一緒なら羽香奈はご機嫌だ。
今日は入学式。
中学なら両親、祖父母等と連れだって参列する家庭も多いが、ハツにこの長距離を歩かせるのは難しい。
ハツから目を離せない半蔵も家に残っている。
「あっ、来た来た!
おーい、しおちゃ~ん!
はっち~」
校門前では芭苗と未知夫が待っていて、歩く人波の中から芭苗がいち早く葉織達を見つけて手を振る。
往来でもお構いなしの大声で呼びかける。
彼女を見たのは葉織にとってはもう一年振りくらいだが、相変わらず元気なんだなぁと思う。
そういう溌剌としたところが彼女の長所だなぁ、ともつくづく感じる。
「はっち来たんだ。久しぶり!」
葉織はきっと中学からは復学できる、一緒に通うと約束したから。
芭苗も未知夫も羽香奈からすでにそれを聞いて知っていたから、未知夫はごく自然にそう声掛けした。
「ふたりとも、ありがとう。
オレがいない間、羽香奈と仲良くしてくれて」
「はあ~?
はっちとかカンケーなくて、あたしが好きでしおちゃんと友達になっただけですけどー?」
「そーそー。
お礼言われるようなことじゃなくない?」
「だーよねー」
芭苗はにこにこ笑顔で羽香奈に抱きついてから、羽香奈の髪を撫でまわした。
しかし手つきに遠慮がなさ過ぎて、髪が乱れてしまっている。
「あーあー、まぁたやっちゃった。
ごめんねしおちゃん~、うちのガサツな芭苗がさぁ」
未知夫は制服のポケットから小さ目の櫛を取り出して、当たり前のように羽香奈の髪を整え始めた。
葉織ですらそこに直接手で触れた覚えはないのでちょっと面食らう。
この半年、小学校でも似たような場面が何度もあったから三人にとってはそんなに大事ではないのだ。
「ガサツって何よ!
親愛の証なんですけど!」
いつもだったら頭を叩いてツッコミしがちな芭苗だったが、「中学生になったら、いくらツッコミでもそう簡単に人を叩いてはいけない」と両親と約束していたため、今日は手を出さなかった。
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