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魔法都市フィラディノート
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せっかくなので、彼女にはぼくの家が置いてある受付のカウンターから、ぼくを抱っこして店の中央のひろ~い作業台の上に移動させてもらう。昨夜、店主が作業したままの道具や、気晴らしに遊んだコレクションのおもちゃが出しっぱなしになっているんだ。これを整理整頓することが毎朝恒例、ぼくの一日で最初のお仕事。
「それじゃあぼくはお掃除しているから。オシモトさんは気にしないで、空いたスペース自由に使ってね」
「はぁーい、いつもありがとね」
オシモトさんは受付に備え付けの貯金箱に、本日の作業台使用量を入れてくれた。そして作業台のすみっこの何も置いてなかったスペースに、持参してきた道具を並べて作業を始める。
ここの店主でぼくを作った主でもある女性、ティッサ・ミュアは大賢者ミモリ・クリングルの公認弟子のひとりとして知られている。彼女が作るのは魔法で動くおもちゃ。つまり、ここは彼女の作ったおもちゃを売るためのおもちゃ屋さんなのだ。
ティッサの作るおもちゃが動く原理は、ぼく達の暮らす旧グラス大陸と呼ばれるルカ、ピノール、グランティスの三大陸で主に使用されている「地脈魔法」という技術による。ミモリ様のようなごくごく一部の例外を除いて、人間は自分自身で魔法を使えるほど魔力を宿していない。だから、魔法を使うためには大地に宿る魔力をお借りしているんだ。
この街、R大陸フィラディノートもそうであるように、人間が暮らす都市はあらかじめそこに大きな魔力を宿した地脈、「魔力溜まり」があることを確認した上で街を作ってきた。六百年ほど前の戦乱の時代には、少しでも魔力量の多い魔力溜まりを人間同士争って奪い合っていたそうだ。
今はすっかり戦乱は遠のいて、ぼくも平和になった世界しか知らない。そんな時代に生まれたティッサも、魔法を戦いの手段としてではなく、自分の大好きなおもちゃ作りに活かすために学んできた。
ぼくの体にも、彼女が作る他のおもちゃ達と同じように、フィラディノートの魔力と接続するための魔法紋が刻まれている。だからぼくはこの街の外を出るとこんな風に動いたり話したり、この目で外の世界を見たりすることも出来ないんだ。人の手のひらの上に乗るような人形でしかないぼくにとって、この街だけだっておなかいっぱいってくらいに広大なんだから、別に構わないんだけどね。
「それじゃあぼくはお掃除しているから。オシモトさんは気にしないで、空いたスペース自由に使ってね」
「はぁーい、いつもありがとね」
オシモトさんは受付に備え付けの貯金箱に、本日の作業台使用量を入れてくれた。そして作業台のすみっこの何も置いてなかったスペースに、持参してきた道具を並べて作業を始める。
ここの店主でぼくを作った主でもある女性、ティッサ・ミュアは大賢者ミモリ・クリングルの公認弟子のひとりとして知られている。彼女が作るのは魔法で動くおもちゃ。つまり、ここは彼女の作ったおもちゃを売るためのおもちゃ屋さんなのだ。
ティッサの作るおもちゃが動く原理は、ぼく達の暮らす旧グラス大陸と呼ばれるルカ、ピノール、グランティスの三大陸で主に使用されている「地脈魔法」という技術による。ミモリ様のようなごくごく一部の例外を除いて、人間は自分自身で魔法を使えるほど魔力を宿していない。だから、魔法を使うためには大地に宿る魔力をお借りしているんだ。
この街、R大陸フィラディノートもそうであるように、人間が暮らす都市はあらかじめそこに大きな魔力を宿した地脈、「魔力溜まり」があることを確認した上で街を作ってきた。六百年ほど前の戦乱の時代には、少しでも魔力量の多い魔力溜まりを人間同士争って奪い合っていたそうだ。
今はすっかり戦乱は遠のいて、ぼくも平和になった世界しか知らない。そんな時代に生まれたティッサも、魔法を戦いの手段としてではなく、自分の大好きなおもちゃ作りに活かすために学んできた。
ぼくの体にも、彼女が作る他のおもちゃ達と同じように、フィラディノートの魔力と接続するための魔法紋が刻まれている。だからぼくはこの街の外を出るとこんな風に動いたり話したり、この目で外の世界を見たりすることも出来ないんだ。人の手のひらの上に乗るような人形でしかないぼくにとって、この街だけだっておなかいっぱいってくらいに広大なんだから、別に構わないんだけどね。
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