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史上初の女性剣闘士を目指して、頑張ります!

応援してくれるって、信じていたのに!

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 わたくしとコーリィのやり取りに、シホはお腹を抱えて大笑いしています。笑いすぎて目尻に浮き出て来ていた水滴を、はー、はー、と息を整えながら指先ですくいます。

「今日はオレもコーリィに十硬貨ほど賭けてっから、初勝利頑張ってもぎ取れよな~」


「そうなのか? それは素直に嬉しいよ」

「ちょっと、シホ! あの流れからして、今日はわたくしを応援してくださるものと思っていたのに!」

 昨夜あなたが応援してくれたから頑張ろうと思っていたので、わたくしはことのほか、精神に打撃を受けてしまいました。大事な試合の直前なのに!

「悪いなぁ。オレもこいつコーリィが二年間、勝てなくて悔し泣きしながらも予選会参加し続けてる姿をずっとを見てきてるからよ。その努力が報われるといいなぁと思うわけよ」

「悔しがってはいたけど泣いてない! 人前では!」

 人目のないところでは泣いていたと自爆してしまっているような気がしますが、そこをつついて本人に気付かせてしまう方が気の毒だと思って、わたくしはその点は聞かなかったことにしました。

「失礼ですが、二年にも渡って一度も勝てなかったというのに、心を折らずに続けられたのは何故ですか? わたくしは、皆様より経験も腕力も遥かに劣ります。他人事のように思えなくて……」

「えーとですね。俺みたいにグランティスで生まれ育った男にとっちゃ、剣闘士って一度は憧れる職業なんですよね。かっこ良くて。大抵は大人になる前に現実見て別の道いきますけど、俺は予選会まで出ちゃいましたし。それで『一勝も出来ずに辞めました』って記録だけ残るの、かっこ悪いじゃないですか」

「予選会で一勝もしていないとなると、報奨金を受け取れないですよね。生計はどのように立てているのですか」

「国内に実家があるんでそこに住んでて、試合のない日に非正規労働で稼いで親に生活費として渡してます」

 極めて現実的なお話しを聞いてしまって、無性に申し訳ない気持ちになりました。わたくしは王族ゆえ、生活費の心配も苦労もなく、「やってみたい」と言えば試合に参加させていただけたのですものね……。

 親の家と金が当てに出来るだけ恵まれてる方だぜ、と、シホはちょっと羨ましそうにぼやきながらコーリィの肩を叩きました。
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