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ハッピーエンドへ sideグレス

笑顔の再会

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 剣闘場の廃止から二年後。わたくしは思わぬ形で、ランセル殿と再会しました。

 

「お久しぶりです、グレス様! ……えっ、知り合いなのかって? 今のグランティスってクラシニアと仲が良いじゃない? グレス様が姉さんとの会合でクラシニアに来てくださった時に紹介されたんだ~」

 

 はい。まさかノア様とランセル殿がいつの間にかお知り合いになっていて、ランセル殿を伴ってわたくしを訪ねてくださるなんて、予測できるはずがありませんよ。

 

 ノア様は隣国クラシニア現女王のナナ様の伴侶、コウ・ハセザワ・クラシニア様の義弟だそうです。クラシニアでは王家の血統第一主義。女王と結婚したからといってコウ様が王族の一員になるわけではありません。コウ様は王宮にお住まいですが王族ではなく、その義弟であるノア様も一般市民のままです。

 

 しかし、正統な王族であるナナ様と彼女達の実子のサナ様、ソウタ様は、クラシニアの法律によって王宮から出られません。ノア様のお仕事は外に出られないナナ様に代わって、彼女の個人的なお知り合いの皆様との連絡を取り持つこと。わたくしも、クラシニアに出向くまでではないけれどお伝えしたいことのある際に、ノア様の手をお借りしています。

 

「テラだってグレス様と何度もお会いしたことあるでしょ? 剣闘士やってる時に。やっぱり今でも残念なんだよ、ボクも一度でいいからテラが本気で試合してるところ見てみたかったからさ~」

 

 ノア様の言葉を受けて、ランセル殿はちょっとだけ照れたような表情で、わたくしに一礼してくださいました。わたくしにとっては長年に渡って慕う方ですが、彼にとってのわたくしはほんの何回か、仕事上の用で対面したことがあるだけの関係でしかありません。その距離感をありありと感じる表情に、ほんの少し寂しさを覚えてしまいます。

 

 それにしても、ノア様の読心術はすごいです。一切言葉を口に出さないランセル殿が何を言いたいのか読み取って、彼の代わりに自分が言葉にすることで、円滑な対話を進めています。その読みが合っているのかそうではないのか、ランセル殿自身にしかわかりません。けれど、きっと正誤など問題ではないのです。

 

 言葉を出していないのに、まるで出しているかのように、当たり前に会話を繋げてくださるのですから。ノア様とご一緒しているランセル殿は、グランティスで孤独に頑張っておられたあの頃とは、まるで違う表情をしています。何の憂いも無く、心から楽しそうに、にこにこと笑っています。
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