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森での演習編
面倒事は先に
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エルフのリシャールを即席の弟子に加えた。
覚えさせるべきことは森の魔力を整え、ダンジョンへの流れを阻害しない事だ。これをエルフにも受け入れられるように名称や理由を変えて教授する。
俺達の都合であってエルフに慮ったわけではない?
当然だ。俺はボランティアで仕事をしているわけではないし、エレオノーラもそんな事をしていたら文句を言うだろう。己の仕事の延長線上で教えて置き、エルフとして行動すべき事や独自に判断すべきことは任せる。それと余暇に何をするかというのは全く束縛するつもりもないしな。
「俺の契約しているダンジョンマスターは森との調和を重視している」
「だからお前さんが成長して森の世話をする事は損には成らない」
「もしお前さんの部族が残って居たら、喧嘩しないような取引をしただろう」
「余計なところまで入り込む気はないし、森が荒れそうならば助力も惜しまなかっただろう。ただ、それは義務でも何でもなく、その方が得だから、喧嘩をしない方が楽だからと言う事を忘れちゃいけない。エルフが居てくれた方が森にとって良いからに過ぎん」
身も蓋も無い損得の話をまず始める。可哀そうな人を助ける義務など無いと。
これを先に言っておかないと勘違いする事もあるし、同時に何を考えているのか判らないと不信感を抱かれることもあるからだ。それ以上の事はおいおい説明すれば良いし、損得ずくであり、自分が居た方が都合が良いのだと理解してくれれば話もやり易いしな。
ここまでで嘘はないし、嘘があるとしたらエルフが協力を受け入れるとは限らないことくらいだ。余所者は気に入らない、ダンジョンマスターも開拓民も森には近づくなと言われた可能性もあるだろう。まあその時はエルフもダンジョンのお客様とすべく、モンスターで接待しただろうけどな。
「利益はあるのですよね? では、何をしたらいけないかを教えてください」
「当然、ダンジョンに影響のある悪い事だな。例えばお前さんはしないと思うが、ゴブリンが憎いからと言って森に火を掛けられたら困る。それと人間の村を守る為にもダンジョンは存在しているから、ゴブリンを追い出すにしても村の方に追い出されたら困る。結局、俺の契約者が何とかする必要が出て来るからな」
今はそんな行動力はないと思うが将来は別だ。
ゴブリン憎しで動く可能性はあるし、他のエルフと合流するのではなくこちらに呼び込んだ場合に、好き放題に動かれては困るという訳だ。そこを説明した上で、次の説明をしておくことにしよう。否定の次は肯定ってやつだな。まあ鞭と飴は何時でもセットであるべきだ。
「モンスターから守るのも仕事の内と言ったが、利用するのは構わん」
「例えば倒せないモンスターをダンジョンの入り口に誘ったり、押し込んだりな」
「ダンジョンと言う物はモンスターを倒したり、大地の恵みを集め利益を得る」
「だからお前さんがゴブリンを連れ込んでもそれはむしろ歓迎だ。それとは別に、森で見つけた薬草や貴重な素材を交換に来てくれても歓迎するだろうよ。何しろモンスターを待ち構えたり、警備の連中を動かすよりも早いからな」
今度はリシャールにとっての利益が、エレオノーラとも重なることを説明する。
難いゴブリン、あるいは自分を脅かすゴブリン、そういった物をダンジョンを利用して殺しても構わない。あるいは森で倒して素材にした後で、そいつを売りに来てくれても構わないと説明しておく。実際にはそこまで利益は出ないのだが、森で暮らして居るエルフがダンジョンに入り込んでくれることで魔力が溜まるので損はしてない。
「そしてこの流れを加速するために、俺はお前さん達に森の世話の仕方を教える」
「別にダンジョンの中に隠れ潜んで居ても文句は言わないが退屈だろう?」
「それにゴブリンに復讐したいって話は聞いたから、叶えてやらないとな」
「こっちとしてもお前さんが薬草の見つけた方を覚え、獲物の取り方や、モンスターの倒し方を覚えてくれれば流れが大きくなるから助かるんだ。そしてお前さんと一緒に居た娘さん達をいずれ起こし、お前さんと一緒に鍛えるのもその為だ。一人よりも三人の方が持ち込まれる物も多くなり、お前さんたちの取り分も増えるからな」
こうしてリシャール達を助けるのはビジネスの為って訳だ。
子供でいる間は貸し借りなんか気にせずに生きて行けと言ってやりたいが、部族が壊滅したのならばそうもいかないだろう。だからこちらの利益になるなら、その範囲で助けると告げているのだ。真面目な話、傭兵であるブーの奴にやらせるよりは余程に安価だからな。
ここまで説明したら、+@を説明しておこう。
ただ惰性で流されるだけではなく、意図して行う事の重要性ってやつだな。
「さて、ここまでで基本的な話は終りだ。後は実地の行動とお勉強だが……」
「重要な事を言っとく。繰り返した行動は実績と信用になるってことだ」
「例えばお前さんに会わせて森の事を教えるオークはゴブリンと似た亜人種だ」
「しかし、あいつは傭兵として信用されている。それは金を払っている間は裏切らない。金を払ってやらせたことには手を抜かないからな。そしてソレはお前さんにも通じる。嘘を吐かずに繰り返せば、それは実績と信用になるってことだ。ダンジョンマスターだって他人は怖いさ。だから誰からも信用できる相手なら、自分も信用したくなる」
そこまで言ってリシャールが理解するのを待つ。
基本的には同じことを言葉を変えて説明しているだけなんだが、俺達は相互に協力関係で居ようって事だ。お互いに利用し合い、助けることが自分の利益になるから協力する。嘘をついても良い事はないし、嘘を吐かない方が信用されるし信用できるから嘘を吐かないだけなのだ。その方がなんぼか気が楽だからな。
「信用……ですか」
「そうだ。お前さんだって部族の仲間と比べたら俺を信用してないだろう? だが、それでも会った事のないオークやダンジョンマスターよりも信用している。それはここまでお前に嘘を言ってないからだろう。もっと信用されるには、色んなことを見て『あれは嘘じゃなかった』と繰り返す必要がある。そしてさっきも言ったが、それはお前にも言えるんだ」
同情心が無いわけでもないが、そんな物は理由が出来たら無視するものだ。
だから利益が出るから協力すると言い、何度も繰り返すことで信用が生まれることは教えておかなければならない。それさえ実行してくれれば、後は覚えた技術や知識の分だけこちらも助かるのだから。リシャールが大人に成り、立派な狩人なり薬草師になった時、その後に何をしたいかはリシャール自身が決める事である。だがそこまで成長すれば、何処でもやっていけるし、俺達との繋がりが続くならこっちも助かるって寸法だ。
「お前さんはまだ幼いしエルフで種族が違うからな」
「だから最初から意味が通じるとも、知識や技術が身に付くとも思わない」
「失敗しても構わないから、その内に覚えておいてくれ」
「そして、いつか女の子たちにお前さんが教えるんだ。そしたらお前さんは好きに決めることができる。三人一緒に森で暮らしても良いし、他の部族の所に行っても良い。それまでにこっちの利益は勝手に得ておくよ。ああ、そうだ。他所のエルフを読んでも構わんが、人間嫌いの奴だけは勘弁してくれな」
正直な話、時間があるならここまで説明などしない。
しかし、これから色んな人間い合わせて行くのだ。信用も出来ない相手を連れて行くわけにはいかない。それこそブーに対して『オークだ、殺さないと!』なんて言われても困る。当然だがエオレノーラに『こいつが来たからゴブリンが動いたんだ!』なんて言われても迷惑なだけだしな。
その上で、初歩的な事さえ教えておけば役に立つというのは嘘ではない。
森と往復させるだけも魔力を持ち込んでくれるし、薬草を採りに行くのは面倒くさいのだ。だがリシャールに覚えさせておけば、養育費以上の事は自分でやってくれるだろう。後はダンジョンの育ち具合とか、こいつらの成長で色々変わっていくと思われる。
「完全じゃないですけど、たぶん、判ったと思います」
「まあそうなる様に順番に教えたんだ。まあ大丈夫さ。次は森の手前に配置する兵士とその使い手に合わせる。オークも移動の都合次第でそろそろ合流できるはずだ」
何度も頷くリシャールに純を追って説明していく。
フィリッパとホムンクルスを先に合わせ、ブーとも面会させて色々と積み上げる。そこまでやって、ゴブリン退治で暴走しなければエレオノーラと会わせても問題ないだろう。
それが終わったらゴブリン退治と洒落こもうじゃないか!
エルフのリシャールを即席の弟子に加えた。
覚えさせるべきことは森の魔力を整え、ダンジョンへの流れを阻害しない事だ。これをエルフにも受け入れられるように名称や理由を変えて教授する。
俺達の都合であってエルフに慮ったわけではない?
当然だ。俺はボランティアで仕事をしているわけではないし、エレオノーラもそんな事をしていたら文句を言うだろう。己の仕事の延長線上で教えて置き、エルフとして行動すべき事や独自に判断すべきことは任せる。それと余暇に何をするかというのは全く束縛するつもりもないしな。
「俺の契約しているダンジョンマスターは森との調和を重視している」
「だからお前さんが成長して森の世話をする事は損には成らない」
「もしお前さんの部族が残って居たら、喧嘩しないような取引をしただろう」
「余計なところまで入り込む気はないし、森が荒れそうならば助力も惜しまなかっただろう。ただ、それは義務でも何でもなく、その方が得だから、喧嘩をしない方が楽だからと言う事を忘れちゃいけない。エルフが居てくれた方が森にとって良いからに過ぎん」
身も蓋も無い損得の話をまず始める。可哀そうな人を助ける義務など無いと。
これを先に言っておかないと勘違いする事もあるし、同時に何を考えているのか判らないと不信感を抱かれることもあるからだ。それ以上の事はおいおい説明すれば良いし、損得ずくであり、自分が居た方が都合が良いのだと理解してくれれば話もやり易いしな。
ここまでで嘘はないし、嘘があるとしたらエルフが協力を受け入れるとは限らないことくらいだ。余所者は気に入らない、ダンジョンマスターも開拓民も森には近づくなと言われた可能性もあるだろう。まあその時はエルフもダンジョンのお客様とすべく、モンスターで接待しただろうけどな。
「利益はあるのですよね? では、何をしたらいけないかを教えてください」
「当然、ダンジョンに影響のある悪い事だな。例えばお前さんはしないと思うが、ゴブリンが憎いからと言って森に火を掛けられたら困る。それと人間の村を守る為にもダンジョンは存在しているから、ゴブリンを追い出すにしても村の方に追い出されたら困る。結局、俺の契約者が何とかする必要が出て来るからな」
今はそんな行動力はないと思うが将来は別だ。
ゴブリン憎しで動く可能性はあるし、他のエルフと合流するのではなくこちらに呼び込んだ場合に、好き放題に動かれては困るという訳だ。そこを説明した上で、次の説明をしておくことにしよう。否定の次は肯定ってやつだな。まあ鞭と飴は何時でもセットであるべきだ。
「モンスターから守るのも仕事の内と言ったが、利用するのは構わん」
「例えば倒せないモンスターをダンジョンの入り口に誘ったり、押し込んだりな」
「ダンジョンと言う物はモンスターを倒したり、大地の恵みを集め利益を得る」
「だからお前さんがゴブリンを連れ込んでもそれはむしろ歓迎だ。それとは別に、森で見つけた薬草や貴重な素材を交換に来てくれても歓迎するだろうよ。何しろモンスターを待ち構えたり、警備の連中を動かすよりも早いからな」
今度はリシャールにとっての利益が、エレオノーラとも重なることを説明する。
難いゴブリン、あるいは自分を脅かすゴブリン、そういった物をダンジョンを利用して殺しても構わない。あるいは森で倒して素材にした後で、そいつを売りに来てくれても構わないと説明しておく。実際にはそこまで利益は出ないのだが、森で暮らして居るエルフがダンジョンに入り込んでくれることで魔力が溜まるので損はしてない。
「そしてこの流れを加速するために、俺はお前さん達に森の世話の仕方を教える」
「別にダンジョンの中に隠れ潜んで居ても文句は言わないが退屈だろう?」
「それにゴブリンに復讐したいって話は聞いたから、叶えてやらないとな」
「こっちとしてもお前さんが薬草の見つけた方を覚え、獲物の取り方や、モンスターの倒し方を覚えてくれれば流れが大きくなるから助かるんだ。そしてお前さんと一緒に居た娘さん達をいずれ起こし、お前さんと一緒に鍛えるのもその為だ。一人よりも三人の方が持ち込まれる物も多くなり、お前さんたちの取り分も増えるからな」
こうしてリシャール達を助けるのはビジネスの為って訳だ。
子供でいる間は貸し借りなんか気にせずに生きて行けと言ってやりたいが、部族が壊滅したのならばそうもいかないだろう。だからこちらの利益になるなら、その範囲で助けると告げているのだ。真面目な話、傭兵であるブーの奴にやらせるよりは余程に安価だからな。
ここまで説明したら、+@を説明しておこう。
ただ惰性で流されるだけではなく、意図して行う事の重要性ってやつだな。
「さて、ここまでで基本的な話は終りだ。後は実地の行動とお勉強だが……」
「重要な事を言っとく。繰り返した行動は実績と信用になるってことだ」
「例えばお前さんに会わせて森の事を教えるオークはゴブリンと似た亜人種だ」
「しかし、あいつは傭兵として信用されている。それは金を払っている間は裏切らない。金を払ってやらせたことには手を抜かないからな。そしてソレはお前さんにも通じる。嘘を吐かずに繰り返せば、それは実績と信用になるってことだ。ダンジョンマスターだって他人は怖いさ。だから誰からも信用できる相手なら、自分も信用したくなる」
そこまで言ってリシャールが理解するのを待つ。
基本的には同じことを言葉を変えて説明しているだけなんだが、俺達は相互に協力関係で居ようって事だ。お互いに利用し合い、助けることが自分の利益になるから協力する。嘘をついても良い事はないし、嘘を吐かない方が信用されるし信用できるから嘘を吐かないだけなのだ。その方がなんぼか気が楽だからな。
「信用……ですか」
「そうだ。お前さんだって部族の仲間と比べたら俺を信用してないだろう? だが、それでも会った事のないオークやダンジョンマスターよりも信用している。それはここまでお前に嘘を言ってないからだろう。もっと信用されるには、色んなことを見て『あれは嘘じゃなかった』と繰り返す必要がある。そしてさっきも言ったが、それはお前にも言えるんだ」
同情心が無いわけでもないが、そんな物は理由が出来たら無視するものだ。
だから利益が出るから協力すると言い、何度も繰り返すことで信用が生まれることは教えておかなければならない。それさえ実行してくれれば、後は覚えた技術や知識の分だけこちらも助かるのだから。リシャールが大人に成り、立派な狩人なり薬草師になった時、その後に何をしたいかはリシャール自身が決める事である。だがそこまで成長すれば、何処でもやっていけるし、俺達との繋がりが続くならこっちも助かるって寸法だ。
「お前さんはまだ幼いしエルフで種族が違うからな」
「だから最初から意味が通じるとも、知識や技術が身に付くとも思わない」
「失敗しても構わないから、その内に覚えておいてくれ」
「そして、いつか女の子たちにお前さんが教えるんだ。そしたらお前さんは好きに決めることができる。三人一緒に森で暮らしても良いし、他の部族の所に行っても良い。それまでにこっちの利益は勝手に得ておくよ。ああ、そうだ。他所のエルフを読んでも構わんが、人間嫌いの奴だけは勘弁してくれな」
正直な話、時間があるならここまで説明などしない。
しかし、これから色んな人間い合わせて行くのだ。信用も出来ない相手を連れて行くわけにはいかない。それこそブーに対して『オークだ、殺さないと!』なんて言われても困る。当然だがエオレノーラに『こいつが来たからゴブリンが動いたんだ!』なんて言われても迷惑なだけだしな。
その上で、初歩的な事さえ教えておけば役に立つというのは嘘ではない。
森と往復させるだけも魔力を持ち込んでくれるし、薬草を採りに行くのは面倒くさいのだ。だがリシャールに覚えさせておけば、養育費以上の事は自分でやってくれるだろう。後はダンジョンの育ち具合とか、こいつらの成長で色々変わっていくと思われる。
「完全じゃないですけど、たぶん、判ったと思います」
「まあそうなる様に順番に教えたんだ。まあ大丈夫さ。次は森の手前に配置する兵士とその使い手に合わせる。オークも移動の都合次第でそろそろ合流できるはずだ」
何度も頷くリシャールに純を追って説明していく。
フィリッパとホムンクルスを先に合わせ、ブーとも面会させて色々と積み上げる。そこまでやって、ゴブリン退治で暴走しなければエレオノーラと会わせても問題ないだろう。
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