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1章 前編

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 セニィのオッパイを拭いたタオルを桶の中に戻して湯に浸けておく。
 清拭が済んだら、速やかに搾乳へと入る。
 先ほど、サヒラからは400ccほど搾乳した。セニィとセイカからは、約300ccずつもらえばいいだろう。
 そうすれば、ちょうど樽に1リットル入る計算だ。

 この木製の樽は、タガと呼ばれる竹のようなベルト帯のリング数本で木の板を束ねて構成されている。
 樽の上下だけでなく、胴回りに2本の細いタガが付いている。そのラインが、1リットルと2リットルの目安になっている。
 タガとは別に、カッターで少し削ったような30本の横線も樽の表側と内部に等間隔で刻まれている。
 それが、樽の中に入っている液体の体積を量る目盛りになっている。

 セニィから、片乳150ccずつを目安に一気に搾っていく。
 ピンクの先端部分を根本から指で挟んで押すと、そんなに力を込めなくてもピチャピチャとミルクは滴り落ちてくる。

「はぁっはぁっ、らめぇー。体が熱くて、変になっちゃう。気持ちいいよぉ」

 今夜は搾ればそれで終わりというわけではない。この後、他にも作業があるので、手早く済ませなければ。
 両手を使いグイグイと圧迫して、ビュッビュッと樽の中にドリップさせた。

 左乳が済んで、右乳からも搾り終わった。
 予定より出しすぎたようだ。2人目の時点で、樽の中身が800ccになってしまった。

「とりあえず、これくらいにしておくか」

「はぁん、すっきりしたぁ。セニィはもう寝るね。おやすみぃ」

 部屋の奥側に敷いてある布団に向かって、セニィはオッパイを出したまま横向きにバタっと寝てしまった。

「そのまま寝たら、風邪ひいちゃうんじゃないのか。サヒラ、セニィに服を着させてあげて」

「はい。この子、しょうがないですね」

「では、ラストはセイカだ。待たせたな」

 お湯が少し温くなってきたかもしれない。まあ最初の方は熱すぎたが、今は丁度いいくらいとも言えるだろう。

「は、はい」

 ずっと、セイカは腕で胸を押さえたままだった。俺は左手でセイカの腕を掴んでガードを解除し、右手でタオルを押し当てた。
 そのまま、絞った温かいタオルを上下させオッパイを拭き拭きしていく。
 セイカは『ふぅーはー、ふぅーはー』と大きく呼吸をしている。それに合わせて胸部も微妙に前後に動く。
 ふと、セイカの表情を見た。すると彼女は少し顔をそらし瞳を閉じた。

 サヒラと比較すると、セイカに施す作業面積は小さい。さほど時間もかからず胸の洗浄は終わった。
 行きがけの駄賃がわりに、そのままのタオルで彼女の顔も拭いてあげた。

「え、ええ?」

「あ、これは特に意味はないけれどさ」

 うーん。顔を拭いてからオッパイを拭けばいいのか。オッパイを拭いてから、顔を拭けばいいのか。
 どちらの順番が正解なのか、俺には分からない。なんとも哲学的な難問だ。
 さらに、ついでだ。
 脇の下やら、背中までゴシゴシ拭いてみた。

「ひぇっ。くすぐったいです」

「それじゃ搾乳に入るよ。ちょっと違う搾り方を試してみるけど、いいかな?」

 3人目なので、少し趣を変えて搾乳してみることにした。
 樽をセイカの正面に置いて、彼女のヒザに当てた。

「はい? どうすればいいですか?」

「もうちょっと足を開いてみて。そしたら、上半身を少しだけ前に屈んで」

 セイカがアヒル座りをしていたので、ヒザを広げてもらいフトモモの間に樽を挟さませた。
 その座り方は、ペタンコ座りとか、女の子座りとも言われている。
 正座の状態から踵を左右の外側に崩して床に尻を着けている。

「こうですか?」

「よし。じゃあ、始めるよ」

 樽を前から押し込んで、セイカの胴に密着させた。

 あとの搾り方は、基本的には今までと同じで大差はない。コツさえ掴めば、簡単にビューっと、樽に注ぎ続けられるようだ。
 ただし今回は、左右それぞれ1ターンあたりの搾乳量を変えてみた。
 左から50ccほど搾り、次に右から50ccほど搾る。また左に戻って搾っては、右に変えて搾ったりした。
 樽は中央にある。左乳は先端を少し右に向け、ミルクを樽口目掛けて噴射させる。右乳は逆に左方向に向けるだけだ。

「んんっ。そ、そんな……。左右を代わる代わるなんて。いぁっ、あぐぅっ」

 チェンジを繰り返すのは動作に無駄があるが、今夜はセイカで終わりだ。左右を交互に揉みほぐす。
 気づいたら、もう樽は1リットルのラインを超え1100ccに到着しそうだ。既に、当初の予定搾乳量は終わっている。
 3人分を合わせても、開始前に想定していたのより早い時間で完了したのだ。
 あらかじめ、彼女たちが上着を脱いでいてくれた分だけ、短縮に繋がったのかもしれない。

 せっかくだから、アディッショナルタイムに突入することにした。黙っていれば、普通に搾乳しているのと違いは分からないだろう。
 今までは左右の手で1本の片乳を両手持ちしてきた。今度は試しに二刀流をして、両方を同時に揉み揉みした。
 それから、少し硬く尖った先端を人差し指1本で小刻みに弾いてみた。樽に少量ずつミルクをピチャピチャと垂らし入れる。
 あまり多く搾りすぎる必要はないが、もし不足していると面倒だ。
 1050ccなど中途半端な容量になるのは、あまり好きではない。
 1100ccの目盛りピッタリになるよう、最後の微調整をしたのだ。

「くふぅっ、はふぅん。うんっ、くぅぅ」

 ピンクの突起が、最も敏感なようだな。俺の人差し指を振動させて刺激するたびに、セイカは息を漏らす。
 足元でフトモトをモジモジとクネらせてもいる。何だか、とても可愛いな。
 既に試合は終了していたのだが、俺が搾乳量をコントロールできるよう修行をさせてもらった。

「坊ちゃま。その搾り方では、あまりミルクが出ないのではないですか?」

 しまった、サヒラに見られていた。
 女の第6感で、俺がセイカにいかがわしいことでもしたのではないかと誤解されてしまったのだろうか。

「いや、その……。搾乳は概ね済ませたのでな。こうやると胸が大きくなると聞いたことがあって。一種の豊胸マッサージみたいなものさ。変な意図は一切ない」

「そうなのですか? それは存じ上げませんでした。流石は坊ちゃまです」

「あ、まだ効果があると確認されたわけじゃない。ある程度、継続的に試してみないと本当に大きくなるのかは分からないんだ」

「でも、坊ちゃまの考えることなら、やってみる価値はあるかと。それは私にも、してくださらないのですか?」

 何とかサヒラの疑問を払拭できたようだ。ところが、同じことをサヒラにもしないのか問いただされてしまった。

「うーん、サヒラは既に十分大きいから大丈夫じゃないかな。セイカは、自分で小さいって言って気にしていたからだ。続きはいずれ、また次の機会にな。とりあえず今夜の搾乳は終わりだ」

「はい。ありがとうございました」

「いやいや、こちらこそ。サヒラ、セニィ、セイカ、3人ともお疲れ様」

 俺はミルク樽に蓋をした。そろそろ店仕舞いすることにする。桶のお湯を触ってみると、まだ温かい。これが風呂なら適温くらいなんだろうけど。

「では私は、ヒビキ様の部屋に戻って寝ようと思います」

「そうだ、ちょっと待って。サヒラとセニィも顔を拭いてやろう」

 四度、タオルを桶に浸け、ジャブジャブしてから絞った。

「乳拭きタオルで、顔をですか?」

「別にコレは胸を拭く専用になったわけじゃないから。その都度、お湯を絞れば体のどこを拭いたっていいんだよ。さ、こっちに来て」

 サヒラが体を俺に近づけてくる。顔をタオルで拭いてあげた。

「先ほどは、胸にしていただきましたが、顔も気持ちいいものですね」

「そうだろ。3人とも美人なんだからさ。こうやって温かく湿らせたタオルで優しく拭けば、血行が良くなって、もっと綺麗になるに違いないよ」

 サヒラが終わったら、最後に寝ているセニィの顔とヨダレも拭いておいた。

「ううんっ? サヒラのオッパイ重いよぉ。ムニャムニャ」

 もう半分くらい寝てるな。おかしな寝言みたいなのを発しているし。

「そんじゃ退散させてもらうよ。まだ俺、このあと最後の一工程が残ってるから」

「はい、おやすみなさい」

「おやすみ」

  ふぅー。
 搾っただけじゃ終わりじゃないんだよなぁ。この後の作業が重要なのに。
 オッパイを堪能しただけで、やり遂げたような気分になってしまってはダメだ。
 俺は気力を振り絞って台所へと戻った。

 夕飯を作ったときの残り火が、まだ少し燻っている。竈に柴を足して、火を再燃させた。
 火力が高まるまで、土鍋をよく洗って水を切っておいた。上手く行くのか不安になって緊張する。
 とりあえず、さっき搾った生乳の状態を確認してみよう。

「パイサーチ!」

『牛乳:飲料 品質B 賞味期限C+』

 ほほう。搾りたてのナマチチ、いやセイニュウは賞味期限がCプラスなのか。
 これが時間の経過とともに、CからDへと劣化していくのだと思う。

 それに、ミルクにはONF記号も表示されていない。オッパイのある女性以外にパイサーチをするとONFとなるはずだった。
 おそらく、ミルクはオッパイであり、オッパイはミルクなのだろう。
 肉体と魂、表と裏、太陽と月のような関係に近いかもしれない。
 オッパイをサーチすることは、ミルクをサーチすることでもある。この魔法を、俺はそのように解釈した。

 そろそろ、空炊きして水分を飛ばし鍋が温まってきたようだ。さっき3人から搾った夜の分のミルクを鍋に投入した。
 火にかけている間、ずっと鍋を見ていなければならない。レンジのタイマーで自動的に時間が経てばチンと終わるわけではない。
 加熱し続けたまま放置していては、大事なミルクが蒸発しすぎてしまう。
 何℃で何秒くらい加熱すればいいのか、そんなノウハウは持っていない。この世界で、俺が自分で検証していくしかないのだ。
 沸騰すれば100℃近くに加熱されている。10秒くらいで大丈夫だと思う。

 ミルクがグツグツと言い出したら、水で濡らしたタオルを鍋掴み代わりにして火から離した。こんな物を素手で触ったりしたら、間違いなく火傷するだろう。

 放置して少し冷ますことにした。その待ち時間、コップに水を注いで1杯飲む。
 ぷはぁー。
 一仕事やり終えたあとの水は美味い。厳密にはまだ完了はしていないのだが。
 台所とダイニングの間をウロウロしたりしながら、暇を潰す。

 他の家族はみんな、それぞれの部屋に戻って眠りついている頃だろうか。
 俺1人が、台所の鍋を覗いてはミルクの様子を確認する。放置したまま外でもどこでも出かけて小一時間くらい彷徨ってきても大丈夫かもしれない。
 ただ、うっかり俺が目を離したすきに、大事なホットミルクを飢えたハイエナにでも横取りされたら、たまったものではない。
 樽の耐熱耐久度がどれくらいなのか分からないが、80度くらいに下がればたぶん大丈夫だろう。
 濡れタオルを使って鍋を持ち上げ、樽の中にドバドバと1リットル移し戻した。

 さて、確認してみるか。

「パイサーチ!」

 樽の中のミルクを鑑定した。

『温乳:飲料 品質B 賞味期限B』

 成功したのか? さっき鑑定した生乳は、搾りたてなのに賞味期限はC+だった。それがBに変わっているのだから、賞味期限が伸長している。
 よし、よし。いい感じだ。
 あとは一晩寝かせてみて、明日の朝にも再度の鑑定をしてみよう。
 樽の蓋をしっかりと閉めた。

 樽には1リットルのミルクが入っている。鍋には少し余ったミルクが残っている。おそらく50ccほどだろう。今夜、3人から合計で1100ccは搾乳していたが、沸騰させたら5%くらい減ってしまったようだ。
 鍋に指をピチャリと浸け、そのまま舌で舐めて味見をしてみた。
 うん、ウマイ。まったく、美少女から直に搾り取ったホットミルクは最高だぜ。

 寝る前に、明日の朝食の下準備をしておくことにした。
 ミルクを沸かした鍋の中に、小麦粉500グラムをドバっと投入する。残乳と混ぜあわせコネていく。砂糖も少し加えてみた。
 いい感じのミルクパンが出来そうだ。
 行商人にミルクを納品するとき、おそらく最低500cc単位でしか買ってもらえないのだと思う。少量の余りは料理用に自家消費した方が良さそうだな。
 パン生地のベースが出来た。焼きは朝するので、そのまま放置して寝かせておく。

 さて、寝ることにしよう。長い一日を終え、自分の部屋へと戻った。
 はぁ、疲れ果てた。既にハルナとアキホは眠っているようだ。俺も布団へと潜りこんだ。
 そういえば、まだMPって余っているのかな。寝て起きれば明日にも回復するのかもしれない。
 隣で寝ている妹に対して、掌を向けて魔法を唱えてみた。

「パイサーチ!」 

『アキホ:牛人種メス 7歳 ONF』

 女なのにONF……。
 ツルペタ幼女のオッパイは、魔法に認識されないようだな。
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