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二章:ジャンという少年

18.厩舎の掃除

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 エマ姉ちゃんと別れて、帰路につく。

「ただいまー。母さん、買ってきたよー」
「ありがとうジャン」

 玄関の扉を開けて、家に入り、買ってきた物をダイニングテーブルに置く。

「テーブルに置いておくね。あ、そう言えば帰り道でエマ姉ちゃんに会ったよ」
「あら、どうだった?」
「いつも通り」
「あの子らしいわね」

 エマ姉ちゃんと会った事を報告すれば、母さんは楽しそうに笑う。

 気の強い我が家の女性陣だけど、なんだかんだ仲はいいので、お嫁に行ったエマ姉ちゃんが元気そうなのが嬉しいのだろう。

「他に、手伝うことある?」
「大丈夫よ。ジャックに薪割りは頼んだし、あなたはダミアンの手伝いしてあげてきて」
「はーい」

 他に手伝う事がないという事に、内心喜びながら、足取り軽く厩舎に向かう。

「ダミアン兄ちゃーん。手伝う事あるー?」
「帰ってきたのか。あー……そうだなぁ。牧草の刈り取りは、マルセルと叔父さん達に頼んだから……敷き藁変えておいてくれ。終わったら馬達のブラッシングでも、調教でも、好きな事していいぞ」
「ほんと!やった!」

 敷き藁交換は大変だけど、それが終われば実質遊んでいいという許可が出たので喜ぶ。

 領主様の馬だから注意して世話しなきゃいけないけど、馬と触れあえるのは僕にとってご褒美なのだ。

「それじゃあ、手押し車使うね!」
「ああ、裏手に置いてあるから、使ったら倉庫に戻しておいてくれ」
「はーい!」

 浮かれた気分で、ダミアン兄ちゃんの言葉に返事し、一度厩舎の裏手に回る。

 朝に使ったまま、置かれていた手押し車を押して、厩舎へと入り、物置からピッチフォークを取り出して、手押し車へと乗せた。

「ごめんねー。掃除するよー」

 手押し車を馬房の近くまで押して、中の馬へと声をかける。言葉は通じないだろうけど、気持ちの問題だ。

「ちょっと、こっち来てね」

 掃除中、邪魔にならないように部屋の主を他の空いている馬房のへと移してから、中の敷き藁を変える。

 ピッチフォークで敷き藁を掬っては、手押し車に乗せて、手押し車が一杯になったら外の廃棄藁置き場に捨てて、敷き藁を保存している倉庫から藁を運んで馬房に敷く。

 一人でやるには重労働だけど、綺麗になった馬房に馬がいるのは気持ちいい。まあ……すぐ汚されちゃう事もあるんだけどね。

 親子、子馬、親子、親子、子馬、親子……と、部屋の主ごとに移動を繰り返して、掃除を続けていき……終わった頃には、夕方になっていた。

「あー……終わったー」

 普段は、みんなでやるからもうちょっと早く終わるんだけど……牧草刈りに行ってるから本当に大変だったな。

 牧草がないと馬達のご飯がないから、仕方ない。掃除も牧草狩りもどっちも大事な仕事なのだ。

 疲れたと思いながらも、使った手押し車を洗ってから倉庫に戻して、ピッチフォークも物置に片付ける。

 そして、ピッチフォークの代わりに馬用のブラシを物置から取り出し、これからお楽しみタイムだと、ウキウキしながら厩舎の通路へと足を踏み出した。
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