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お嬢様との出会い & お嬢様の奇行①

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一部、下系の話がございますのでご注意下さいませ。









「あら、初めての人ね。お名前は?」

「あ、都築 均って言います……。あのー……、よろしくお願いします?」

「ぷっ……あははははは……!!」

 猫のような目、そして少し淡い栗色が混ざったような柔らかそうな髪。いたずらした時には釣り上がりそうな唇。怒ったときにはしっかりと膨らみそうな柔らかそうな頬。紺色で大きな白いボタンがチャームポイントの膝丈くらいのワンピース。全てが上手く調和し、まるで人形のように思えた女性は、俺の自己紹介が終えた後、しばらく笑い続けていた。


 しかし、今更になって色々とおかしなところに気づく。


 部屋はビルの一室、小さな事務所なら一つ分と言った所だろうか、その部屋を丸々使っている。だが、お世辞にも綺麗とは言えなかった。
 扉入ってすぐ右側には給湯室があり、無くても良いような衝立が2枚だけそこに立っていた。
 左側にはボロボロの革の3人座れるタイプのソファーが向かい合うように置いてあり、少し角が欠けたガラスのテーブルが一つ。

 そして、右奥にはシーツだけは綺麗に見える何年も使い古したようなベッドが一つ置いてあった。
 ベッドの隣には、今更見つけるのも難しいような3つの収納があるカラーボックスが一つだけ。

 そして、2箇所ある窓には内側から鉄格子が取り付けてあるのと、何故か窓枠が溶接されていた。
 ガラスも擦りガラスになっているため、外を覗くことが出来ない。ただ、光が淡く入ってくるだけだった。
 その窓の隣には一つだけ小さな換気扇がついており、なんでこんな所についているのか疑問だった。換気扇は給湯室の所にもあるので、ここにある理由は本当にわからなかった。

 天井には一応エアコンが付いている。ただ、掃除をされているのかわからないくらい汚いものだった。
 他に何か無いかと探すが、もうこれ以上何もなかった。


 そして、もう一つ異常なこと。


 今笑っている彼女が中央の椅子に座って居るのだが、手を後ろにしたままだった。育ちが良さそうな服を着ている為、ある程度礼儀が出来そうな娘だと思っていたが、違うのかと考えた。だが、頭の天辺からゆっくりと下まで観察した所でその異常に気づく。

 両足が椅子にロープで縛り付けられていた。

 彼女の趣味なのかと一瞬思う。そんな趣味には付き合ってられないなとも。だが、先輩社員の一言を思い出す。

「絶対に逃がすな!」

 まさかとは思うが、彼女はここに誘拐されてきているのかと。
 そして、笑っている彼女に恐る恐る近づくと、彼女の両手は後ろで、ロープで縛り付けられていた。

「あら、貴方知らないでここに着たの?」

 少し可愛らしい、だが、よく通る声が彼女から俺に向けてかけられた。
 驚きのあまり、声が出せなかった俺は、何度か頷くしかできなかった。

「こんな美少女を前にして怯えるなんて、酷いわね」

 いや、怯えてるんじゃなくて、驚いているんだが……とも言えず、そのまま黙り込んでしまった。

「貴方面白いわね」

 面白い人とも、面白い顔をしているとも言われたことはない。ジョークは人並み程度には言えるつもりだが、女性を笑わせたことは正直初めてだ。
 これで思い残すことはないというわけではない為、少しうれしい程度にしておく。
 しかし、彼女の表情はいたずらっ子の様になっている。少し怖いが、これも仕事。やらざるを得ないだろう。

「多分、私の名前も聞いてないわね。私は、冨士山 知佳子(ふじやま ちかこ)。18歳の処女よ。白藤学園高校の3年生。彼氏は募集中。キスも未だにしたことがないわ。自慰行為は週に……」

「まったまった!!!」

「何よ。女の知りたいことじゃなくて?」

「普通は名前と年齢だけだろう?!」

「この状況が既に普通では無いわよ?」

「それはそうだけど……」

「私の自慰行為回数とかスリーサイズは知りたくないの?」

「男としてこんなきれいな娘の知りたい……ってそうじゃないだろ!」

「あら、何が違うのかしら?」

 そこまで言われてようやくわかった。俺は普通にからかわれていたんだと。しかし、意外と頭に来ないのは、彼女の一般的には秘匿すべき個人情報が入っていたからかもしれない。あとでスリーサイズ聞いておけばよかったと後悔しそうだが、頭の中の小悪魔を排除して会話を続ける。

「君はなんでこんなところにいるんだ?」

「君ではなく、知佳子と呼びなさい。もしくはチカでも良いわ。私は貴方のことをヒトシと呼びますわね」

「あーーー、知佳子……さん……は、なんでここにいるんだ?」

「まあ良いでしょう。私がここにいる理由は、誘拐されたからよ」

「誰に?? なんで??」

「呆れた。ほんとに何も知らないのね」

「ああ、俺自身もなんでここにいるのかさっぱり理解できない」

「ヒトシのいる会社はね、私の父の会社に脅しをかけてきてるのよ。それで、一向に要件を飲まないから、強硬手段に出たって程度のこと。さほど大したことはないわ」

「いやいやいやいや! 十分大したことでしょ!? 何落ち着いてんの?!」

「誘拐される前でしたら慌てますわ。でも、された後で、そんなに慌てる必要はないと思うわ?」

「それでも、無防備な状態で男が近くにいるんだよ? 普通慌てるでしょ?!」

「あら、ヒトシ、私のことを強姦するつもりなの?」

「ご……、そんなつもりは無いよ!」

「なら、慌てる必要は無いわよね?」

「確かに……」

 どうも彼女と話をしていると調子が狂う。いや、元々話が上手かといえばそうではないのだが。しかし、拉致監禁と言うものだろうな。俺の会社何やっちゃってんの?! と言うか、まともに調べなかったから悪かったのか、こんな危ないことしてるとは思いもしなかった……。いや、実際は子会社がやってることだが、確か100%出資子会社と言っていた為、完全に一蓮托生だろうと思う。しかし、見たこともない社長はアホなのかなと考える。こんな怪しい、危ない部門を傘下に入れているなんて……。いや、昨日まで居た所も大概だが……。

 そう考えていた所でふと思い出す。

「あれ、冨士山?」

「あら、ようやく気づいたの?」

「ちょっと! それってあのフジヤマ? 大企業集合体のトップに居るフジヤマ??」

「よくお気づきになられましたね。随分と遅いですが」

「なんで?! なんでそんな大企業の娘さん? で良いのかな、がこんな所に??」

「先程も言ったじゃない。要件を飲まないから誘拐されたと」

「あ……、ああ、そうだった……。驚きすぎて聞いたことが抜けていたよ」

「あら、そうですか。では、自慰行為の回数から……」

「それは良いから!!」

「残念です」

「お願いだからからかわないでよー」

 そう困った表情と困った声で言うと、彼女はまた笑い始めてしまった。でも、そんな彼女を見ているのは正直気分が悪くはなく、どうにかしてあげたいとも思ってしまっていた。

「そろそろ、ロープを外してくださらない?」

「え? 良いの?」

「このままだとトイレも出来ませんわ」

「ああ、すまない。今外すよ」

 そう言って慌てて両手のロープを外し、左足のロープを外しにかかる。すると、彼女の影が動く様子が見えた。

「貴方はホント、お人好しですわね」

「ん?」

「このままヒトシの頭を強打して逃げられると言う事は想定しなかったのですか?」

「あー……。そうだったね……。忘れてた」

「呆れるわね」

 そう言うと彼女は自分の右足のロープを外しにかかった。
 全てのロープを外し、彼女はようやく椅子から開放され、立ち上がって伸びをする。
 彼女の体をようやくはっきりと見ることが出来たが、お嬢様だけあって、四肢は綺麗に伸び、身長も160cmちょいあるだろうか。そして、女性の特徴である胸もしっかりと育ち、体のラインも成熟した女性に匹敵するほど魅力的だった。

 思わず見とれていると、簡単なポーズをいくつかしてくれる。綺麗な娘のポージングはすごく様になり、いくつもファッションモデルの様なポーズを取っているので、思わず拍手が出てしまった。

「そんなにお気に召しましたか。また今度致しましょうかね」

 俺だけのためにポーズを取ってくれるのはとても特別感があり、嬉しかった。その為、その次に言われた言葉がすぐに飲み込めなかった。

「ヒトシ、トイレ用のおまるを取ってきてくださる?」

「ん??」

「おまるですわ。おわかりになって?」

 2回目言われたことで拍手が止まる。何を言ってるのだろうかと。
 おまる? おまるって単語で思い浮かぶのは、赤ちゃんの頃にトイレトレーニングをする時に使う物だと。俺も小さい頃に使っていたと言われ、すごく恥ずかしくなったことがある。しかし、それを持ってきてくれと彼女が言う。

「ほわっ!?」

「なんで今だけ英語になるの?」

「い……いや、英語ではなく驚いただけだけど……、あ、ある意味あってるのか……。そうじゃなくて、なんでおまるなの?!」

「貴方、私がこの部屋から出る許可が取れると思って?」

 そう言われると、確かにそうだった。彼女はこの部屋から出てはいけない。逃がすなと言われていた。そして、慌てて部屋の中を見ると、トイレ……、らしきものは一つもなかった。個室になりそうな物も無いし、困り果ててしまった。

「おまるは貴方達のトイレにあると言っておりましたわ。お願いいたしますわね?」

 彼女にそう言われて部屋を出る。奥の突き当りに男女兼用のトイレが有り、そのトイレの掃除用具入れに流しにおまるが乗っかっていた。
 トイレットペーパーと一緒におまるを持って部屋に戻る。しかし、本当にあるとは思っても見なかった物があり、すごく驚いてしまっている。
 しかも、形状が子供向けで作られている白鳥をデザインしたものであり、大きさも子供向けだった。

「あら、すぐ見つかったのですね。では、すぐに済ませますので少々お待ち下さいね」

 そう言うと彼女はおまるをうけとり、下に置く。そして、すぐに下着を脱ぎ始める。

「ちょっと!!!」

 俺は慌てて彼女に背を向ける。一瞬見えてしまった彼女の下着は白で、そしてレースの刺繍があった。

「あら、見ていてもかまわないですわよ?」

「そうは言っても、普通恥ずかしがるところだろう!?」

「でも、昨日もしてませんし、そろそろ限界でしたので」

「なんで昨日できなかったのよ?!」

「一昨日、私の女性の世話係の人が逃げ出したそうです。それで、昨日は一度もトイレが出来ませんでした」

「俺で良いのかよ?!」

「そうですねぇ。良いんじゃないですか?」

「あのねぇ……」

 そう言った瞬間、彼女の排泄の音が聞こえてしまった。液体の音、そして粘性の個体の音。換気!と思ったが、窓は溶接されているため開けることが出来ない。だから、彼女の方を見ないようにして二つの小さな換気扇の紐を引っ張り、回す。そして、出入り口近くに付いているエアコンのスイッチを入れ、空気の入れ替えが少しでも早まるようにと換気設定にする。

 そこまでし終えて一息付いた辺りで彼女の方から空気の漏れる音が聞こえた。

 人間だから仕方がないとはおもう。だが、完全に不意を突かれる形になってしまった為、俺は思わず赤面し、耳が真っ赤になってしまった。

 本来は彼女がそうなるはずだろう。しかし、綺麗な美少女のその様な物や音を聞く事なんて考えたことも無かった俺の心情も察してほしい。
 紙の切れる音、そして擦れる音が終わり、そして布の擦れる音が終わった後、彼女から声がかかる。

「ヒトシ、これをお願いしますね」

 蓋を締めたおまるを彼女は俺に手渡してくる。
 正直臭いも漂ってくるが、ここで手を離したり、拒否しても彼女に対して恥の上塗りをしてしまうことだろう。
 努めて冷静に返事をして受け取る。

「わかった……」

 しかし、子供用と言うのは子供専用ということなのだろう。蓋がしっかりと閉まっていなかった。いや、閉められなかったのかもしれない。だから、俺はドアを出た後、できるだけ揺らさないように早歩きでトイレに向かい、中身を捨て、トイレットペーパーで拭き、流した。
 しかし、元々綺麗だった為、多分前の女性担当者が洗い流していたのだろう。それを思い出し、用具室の流しでゴム手袋をしながら洗った。





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