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11 新しい世界の王様になりました。

11-1 会うべきじゃない。

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             11ー1   会うべきじゃない。

    俺たちの乗った船は、何日もただっぴろい海原を航海していった。
    最初、澄み渡り美しかった海の色は、だんだんと黒く淀みしまいには、異臭を放つ腐った水へと変化していった。
     「どんな魔物でも住むことのできない死の海、それが怪物のすむ場所、だ」
    長は、俺に教えてくれた。
    「怪物は、この腐った海の底に封じられている。神子の力によってな」
    「アメリは・・神子は、どうやってこの海の底の怪物を封じているんだ?」
    俺が問うと長は、俺に告げた。
   「神子は、その力で怪物の影響がこの世界に出ないように封じている。再び、封じるためには、神子は、封印の中に入らなくてはならない。つまり、そういうこと、だ」
    そういうことって・・
    俺は、言葉を失った。
   もしかして、アメリをこの海に突き落としでもするんじゃ・・
    俺は、アメリの身の上が心配だった。
    封印の儀を行えば、アメリは、死んでしまうのだ。
    それが、どんな死かは俺には、わからない。
    だが、少しでも苦しまないことを、俺は、祈っていた。
    だけど。
   その前に、一目、アメリに会いたかった。
    まだ、子供ができたことだって、たぶん、伝わっていない筈だった。
    「アメリは?」
     俺は、長に訊ねた。
    「早く、アメリに会わないと!」
    俺は、焦っていた。
    一刻も早く、アメリのもとに行きたかった。
   長は、俺を感情のこもらない目で見つめていた。
   「恐らく、この辺りで神船に追い付けるだろうが・・」
    俺は、長にきかれた。
   「しかし、もし、追い付けたとしてあんたは、何をどうするつもりなんだ?レンタロウ」
    俺は。
    絶句して立ち尽くしていた。
    俺は、アメリに会ってどうする気なんだ?
    俺には、死んでいくアメリに何ができるっていうんだ?
    俺は、泣くまい、と思っていた。
   俺は、男なんだから。
   みっともなく泣いたりしない。
   だけど。俺は、涙を堪えきれなかった。
    俺は、泣きながら、長に訴えた。
   「会いたい・・アメリに、最後に、一目だけでも、いいから・・」
    「だが、神子に会ってどうする?」
     長は、俺に厳しく問いただした。
    「神子を引き留めるようなことをして、どうするっていうんだ?レンタロウ」
     「そんな・・」
     俺は、嗚咽した。
     アメリに会いたい。
    でも。
    俺には、わかっていた。
    長の言う通り、俺がアメリに会ったからと行って、どうにもならないってことが。
    泣きじゃくっている俺に長は、優しく声をかけた。
   「あんたは、もう神子に会うべきじゃない、レンタロウ」
    その言葉に、俺は、頷いた。
   救えないのに会ってどうするっていうんだ?
    この世界を道連れにして、アメリとともに滅ぶのか?
   そんなことは、できないし、アメリだって望まないだろう。
    それに、俺には、腹の子供たちだっている。
    俺は、アメリと共に滅ぶことすらできないのだ。
    
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