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10 聖母と海の民と怪物

10-4 誘拐ですか?

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               10ー4   誘拐ですか?

    「神子だけではなく光の精霊王と魔王の子まで宿したとは」
    誰かの声が背後でした。
   「お前は、この世界の均衡を崩す者、だな、レンタロウ」
    俺は、首もとに突きつけられた刃にごくりと息を飲んでいた。
   「俺をどうするつもりだ?」
    「さあ」
     声の主は、おどけた様に笑った。
   「どうして欲しい?」
    「このまま、ほっといてくれるかな?」
     俺は、ひきつり気味の笑顔を浮かべた。
    声の主が高らかに笑ったんで、俺もおずおずと笑い声をあげた。
    「そんなわけがないだろう!」
      声の主に言われて、俺は心の中で声をあげた。
    だよねーっ!
     俺は、まだ、裸だったのでとにかくシーツで体を隠した。
    声の主は、低く笑った。
  「そんな恥じらいの心があるんだな」
    けっ!
    俺は、声を出さずに毒づいていた。
   好きで、裸なわけじゃねえし!
    俺の気持ちを無視して、そいつは、俺に命じた。
   「立て、レンタロウ。お前には、俺と一緒に来てもらう」
    俺は、後ろを振り向こうとした。
   誰だ?
   俺は、なんとなくこいつのことを知っているような気がしていた。
    だが、俺が振り向くより前に不意に俺の目の前は暗くなった。
    「ええっ?」
     「安心しろ。少しの間、お前の目を封じさせてもらっただけだ」
    「でも、これじゃ、歩けないし」
    俺が抗議すると、声の主は、俺をいきなり抱き上げた。
    「これで文句はあるまい」
     はいぃっ?
    俺は、暗闇の中でなぜか、そいつに触れられた場所がやけに敏感に感じていた。
    横抱きにされて運ばれて、俺は、鼓動が高鳴っていた。
    何?
    俺は、そいつの聞き覚えのある声に、懐かしいような匂いに、ときめきに近い感覚を抱いていた。
     なんだ?
    この感覚は?
    俺は、そいつに抱かれて顔がかぁっと熱くなるのを感じていた。
      俺、なんで、こんな・・
     俺は、そいつの腕の中で抗おうとした。
    「お、おろせっ!歩く、から!」
     「危ない。暴れるな!」
       声の主は、なぜか、優しい声音で囁いた。
    「お腹の子に障るぞ」
     そいつは、俺を家の外へと運んでいくと待たせていたらしい馬車へと乗せると、御者に命じて出発させた。
     
     
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