異世界に転生したもののトカゲでしたが、進化の実を食べて魔王になりました。

10 ２人の聖女と偽りの魔王

10ー4 治癒魔法ですか？

　10ー４　治癒魔法ですか？

　「ぐぁああぁっ！」
　勇者が悲鳴をあげる。
　瘴気に蝕まれた勇者の肉体にエディットの聖なる光が染み込んでいく。
　光と闇のせめぎあいに苦痛の叫びを漏らす勇者の手をとりエディットはその力を注ぎ込む。
　しばらく聖なる力を注ぎ込むとエディットは力尽きて肩で息をしながらその場に崩れ落ちた。
　「エディット！」
　思わずエディットの名を呼び歩み寄り助け起こした。
　「クロ様・・・」
　エディットは、俺の腕の中で意識を失った。
　魔力が不足している。
　すぐにリリウスとオウラが駆け寄ってきてエディットにポーションを飲ませる。
　「んっ・・」
　エディットがこくっとポーションを飲み込みほうっと吐息をついた。
　俺は、エディットを抱き上げると家の奥の部屋へと運んでいきベッドに休ませた。
　エディットは、目を閉じて眠っている。
　俺は、エディットの額に張り付いたハチミツ色の髪をはらってやる。
　「クロ様・・」
　エディットが囁く。
　「ごめんなさい」
　「何を謝ることがあるんだ？」
　俺は、そっとエディットの柔らかい髪を撫でた。
　しばらくするとエディットは、すぅすぅと寝息をたてて眠りに落ちていった。
　「クロ！」
　リリウスが俺を呼んだ。
　オウラとルウシエも俺を待っていた。
　「どうするんだ？これから」
　リリウスにきかれて俺は、考え込んだ。
　俺がエディットのことを隠していたことを勇者は知ってしまった。
　「ここで勇者を倒すか？」
　リリウスが剣を指し示す。
　だが俺は、頭を振った。
　「少し勇者にききたいことがある」
　俺は、３人に話した。
　「俺には、今回のことが勇者だけの仕業とは思えない。何かの他の力が働いているような気がするんだ」
　あの迷宮。
　あんな古代魔法を利用することなんてとても勇者一人にできることとは思えない。
　俺は、それを勇者に確かめたかった。
　俺は、勇者のもとへと戻った。
　勇者は、エスメラルダ姫の手で介抱されていた。
　エスメラルダ姫に抱かれて横たえている勇者は、いくらかは瘴気が浄化されたためか顔色もよくなってきていたがまだ完全には癒されてはいない。