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8 魔王の降臨とマリージアの奇跡

8ー5 穢れですか?

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 8ー5 穢れですか?

 俺が部屋から出てくるのを待っていたオルティスが声をかけてきた。
 「クロージャー様」
 オルティスは、俺が両手に抱えている薄汚れた包帯を見ると眉をひそめた。
 俺は、オルティスにきいた。
 「この包帯は、どこで洗えばいい?」
 「それは、もう廃棄するしかありません」
 オルティスが汚らわしいものを見るように俺の手の中の包帯を見た。
 「それは、瘴気の穢れが染み付いているので焼却炉で燃やすしかないのです」
 オルティスが言うには、燃やすのもただの炎ではなく女神の教会で分けてもらってきた神聖な炎で燃やさなくてはならないのだという。
 「普通の人間では、その包帯にすら触れることができません。それほど勇者の穢れは、濃いものなのです」
 そうなの?
 俺、わりと普通に触れてるんですけど?
 俺は、自分が竜人族だからなのかな、とか思って納得していた。
 だが、オルティスが話したことをきいて驚いた。
 オルティスは、以前女神の教会で捕らえられた魔族の尋問をラダクリフ辺境伯がしたときに側に付き添っていたことがあったのだという。
 「そのとき、魔族は、言ったのです。『瘴気を抑えることができるのは魔王だけだ』と」
 マジですか?
 俺は、初耳だった。
 オルティスは続けた。
 「魔族は、それ故に『魔王』に従うのだとその魔族は言っていました」
 そうなんですか?
 俺は、以前ライドウからきいたことがある話を思い出していた。
 近年瘴気による被害が魔界国と国境を接するアナトリア公国にまで拡がっているのだという。
 それって、もしかして魔王が死んでしまったことと関係があるの?
 俺が一瞬考え込んでいるとオルティスが俺の名を呼んだ。
 「クロージャー様?」
 「は、はいぃっ!」
 俺が驚いて変な声をあげるとオルティスがおかしな顔をした。
 「こちらへ。その包帯をはやく燃やしてしまわなくては」
 俺は、オルティスの後に続いて廊下を歩いていった。
 オルティスは、俺を連れて裏庭へと出ていくと屋敷から離れたところにある焼却炉を指して俺を促した。
 「はやくそこへ包帯を捨ててください、クロージャー様」
 俺は、オルティスに言われるままに焼却炉へと包帯を捨てた。
 すると、オルティスは、焼却炉の端っこにぶらさげえられていたランプを手に取りそれに息を吹きかけた。
 ランプの炎がごうっと音をたてて燃え上がり、焼却炉の中に捨てられた包帯が燃えて消えていくのが見えた。
 オルティスは、俺にそこで待つように言うと屋敷の中へと姿を消した。
 しばらくしてオルティスは、何やら壺を持って現れた。
 「この水で手を清めてください」
 俺が手を出すとオルティスが俺の手に壺の中の水を流しかけた。
 なんか、ちょっと手の平がぴりっと痛かった。
 「これは、教会からいただいてきた聖水です。これで洗わなくては、瘴気の穢れは落ちません」
 
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