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3 トカゲの谷と生け贄の姫
3ー8 甘い!
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3ー8 甘い!
マリージアに到着した俺たちは、まずはライドウの家へと向かった。
今夜はライドウの家で泊めてもらって明日、ラダクリフ辺境伯の屋敷へ行くことになっていた。
久しぶりに会ったマリーナさんは、少しふっくらしていた。
マリーナさんは、今、妊娠中だ。
ライドウとマリーナさんの待望の赤ちゃんだ。
「まあ!赤ちゃんが?」
エディットは、ずっとカトラーシュ王国の離宮で暮らしていたから、トカゲの谷に来るまで赤ん坊がどうやって産まれてくるのかもよく知らなかった。
トカゲの谷で初めて赤ん坊が生まれるのを見たわけだったが、俺たちは、哺乳類じゃないからな。
子供は、みな卵で産まれてくる。
だから、エディットは、子供というものはみな卵で産まれてくると思っていたようだ。
そこは、俺がちょっとは説明をしてやったが、どこまで伝わっているかは俺にもよくはわからない。
エディットは、マリーナさんの膨らんだ腹に手を触れるとうっとりとしていた。
「元気なあかちゃんが産まれますように」
ぽうっと暖かな光がマリーナさんを包み込んだ。
これって、聖女の祝福?
まさかな。
俺は、話を変えるためにも手土産に持ってきたグルのパイを空間収納から取り出してマリーナさんに手渡した。
焼きたてのパイの甘い香りが部屋の中に漂う。
これは、酵母を作るときに使ったリンゴと良く似た果物であるグルの実で作ったパイだ。
俺は、最近、森でみつけたミツの木を村で育てていた。
ミツの木からは甘い樹液が採取できる。
それを煮詰めて砂糖を作るのだ。
最近では、トカゲの谷では、クローディア母さんたちによるお菓子作りが流行っている。
もちろんレシピは、俺が考案したものだが、クローディア母さんたちは、覚がはやい。
すぐに、レシピを改良してより美味しいものを作れるようになった。
この手土産は、街で世話になるライドウ夫妻へのクローディア母さんからの心ばかりのお礼なのだ。
だが、パイを見たマリーナさんはどことなく微妙な表情をしていた。
「じゃあ、これは、夕食の後でみんなでいただきましょうね」
マリーナさんは、にっこりと微笑んだ。
うん?
やっぱりパイなんて、ありふれてるからか?
俺たちは、マリーナさんの作ってくれた夕食をご馳走になった。
和気あいあいとした楽しい食事だった。
ライドウ夫妻は、エディットの可愛らしさに目を細め、女の子もいいな、とか言って微笑んでいた。
そして、ついにデザートの時間になった。
マリーナさんが俺の持ってきたグルの実のパイを運んできてテーブルの上でナイフで切り分けていく。
小皿に取り分けられたパイを一口食べたマリーナさんとライドウが顔を見合わせた。
「何、これ!おいしい!」
「甘い?」
ライドウが俺に訊ねた。
「この甘みは、なんだ?果物の味なのか?」
「いや、砂糖で味つけてるんだけど」
俺が答えるとライドウが驚きの表情を浮かべた。
「トカゲの谷には、砂糖があるのか?」
「あるけど」
俺が答えると、ライドウが食いついてくる。
「それは、商品化できるのか?」
マリージアに到着した俺たちは、まずはライドウの家へと向かった。
今夜はライドウの家で泊めてもらって明日、ラダクリフ辺境伯の屋敷へ行くことになっていた。
久しぶりに会ったマリーナさんは、少しふっくらしていた。
マリーナさんは、今、妊娠中だ。
ライドウとマリーナさんの待望の赤ちゃんだ。
「まあ!赤ちゃんが?」
エディットは、ずっとカトラーシュ王国の離宮で暮らしていたから、トカゲの谷に来るまで赤ん坊がどうやって産まれてくるのかもよく知らなかった。
トカゲの谷で初めて赤ん坊が生まれるのを見たわけだったが、俺たちは、哺乳類じゃないからな。
子供は、みな卵で産まれてくる。
だから、エディットは、子供というものはみな卵で産まれてくると思っていたようだ。
そこは、俺がちょっとは説明をしてやったが、どこまで伝わっているかは俺にもよくはわからない。
エディットは、マリーナさんの膨らんだ腹に手を触れるとうっとりとしていた。
「元気なあかちゃんが産まれますように」
ぽうっと暖かな光がマリーナさんを包み込んだ。
これって、聖女の祝福?
まさかな。
俺は、話を変えるためにも手土産に持ってきたグルのパイを空間収納から取り出してマリーナさんに手渡した。
焼きたてのパイの甘い香りが部屋の中に漂う。
これは、酵母を作るときに使ったリンゴと良く似た果物であるグルの実で作ったパイだ。
俺は、最近、森でみつけたミツの木を村で育てていた。
ミツの木からは甘い樹液が採取できる。
それを煮詰めて砂糖を作るのだ。
最近では、トカゲの谷では、クローディア母さんたちによるお菓子作りが流行っている。
もちろんレシピは、俺が考案したものだが、クローディア母さんたちは、覚がはやい。
すぐに、レシピを改良してより美味しいものを作れるようになった。
この手土産は、街で世話になるライドウ夫妻へのクローディア母さんからの心ばかりのお礼なのだ。
だが、パイを見たマリーナさんはどことなく微妙な表情をしていた。
「じゃあ、これは、夕食の後でみんなでいただきましょうね」
マリーナさんは、にっこりと微笑んだ。
うん?
やっぱりパイなんて、ありふれてるからか?
俺たちは、マリーナさんの作ってくれた夕食をご馳走になった。
和気あいあいとした楽しい食事だった。
ライドウ夫妻は、エディットの可愛らしさに目を細め、女の子もいいな、とか言って微笑んでいた。
そして、ついにデザートの時間になった。
マリーナさんが俺の持ってきたグルの実のパイを運んできてテーブルの上でナイフで切り分けていく。
小皿に取り分けられたパイを一口食べたマリーナさんとライドウが顔を見合わせた。
「何、これ!おいしい!」
「甘い?」
ライドウが俺に訊ねた。
「この甘みは、なんだ?果物の味なのか?」
「いや、砂糖で味つけてるんだけど」
俺が答えるとライドウが驚きの表情を浮かべた。
「トカゲの谷には、砂糖があるのか?」
「あるけど」
俺が答えると、ライドウが食いついてくる。
「それは、商品化できるのか?」
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