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9 最果ての国へ(6)
9ー10 小袋
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9ー10 小袋
私たちは、宿を出発すると『イリスク』の街を出て都へと向かった。
都に近づいていくにつれて街道の周辺にはいろいろな露店が軒を連ねていた。
どんどんと賑やかになっていき見たこともないような種族の魔族たちが街道を行き来していた。
私は、好奇心一杯で小声でライさんに質問をしていた。
「あれは、何ですか?」
私が露店で売っていた薄い衣をつけて油であげているものを指差してきくとライさんは、教えてくれた。
「あれは、ユーミクというお菓子です。干した果物に水で溶いた小麦粉の衣をつけて揚げているんです」
そうなの?
私は、ごくりと唾を飲んだ。
おいしそう。
それに健康的な感じ?
ライさんが私のためにユーミクを一つ買ってくれた。
ほんとは、ダイエット中なんだけど、今日は特別!
テートデイだもの。
私は、受け取ったユーミクをふうふうしながらはむっと一口食べた。
口一杯にほのかな甘みが拡がる。
「おいひい!」
私がいうとライさんが嬉しげに笑った。
なんというか。
この露店を見ていてわかったのだが、魔族たちの暮らしは、想像していたよりもずっと素朴なものらしい。
まるで前世の世界でいうところの中世のような暮らしだな。
もともとがこの世界は、どこも中世ヨーロッパみたいな感じだけど、魔族たちはもう少し時を遡った感じがする。
少しだけ魔族たちの方が人間の文化より遅れている?
そのまま歩き続けると、ぐるりと都を囲んだ高い塀と関所のような門が見えてきた。
門番らしい兵士が何人か立っていてそこを通る人々に目を光らせている。
私たちは、入り口に入るために並んでいる人々の列に加わった。
どんどん私たちの順番が近づいてくるにつれ私は、胸が早鐘を打つのを感じていた。
もし、ここで人間だということがばれたら。
私たちは、確実に殺される!
周囲は、全て魔物だ。
緊張感のあまり私は、足がもつれそうになる。
グリフォン様がそっと私のことを支えてくれる。
グリフォン様は、じっと私を見つめると頷いた。
うん。
私は、ふぅっと息を吐いた。
行くしかないんだ!
これからの人生を切り開くためにも私は、ここを通らなくてはならない。
私たちの番がきてライさんが代表で兵士たちの前に立った。
うん?
なんか話しながらライさんは、兵士たちにそっと小袋を渡した。
私たちは、宿を出発すると『イリスク』の街を出て都へと向かった。
都に近づいていくにつれて街道の周辺にはいろいろな露店が軒を連ねていた。
どんどんと賑やかになっていき見たこともないような種族の魔族たちが街道を行き来していた。
私は、好奇心一杯で小声でライさんに質問をしていた。
「あれは、何ですか?」
私が露店で売っていた薄い衣をつけて油であげているものを指差してきくとライさんは、教えてくれた。
「あれは、ユーミクというお菓子です。干した果物に水で溶いた小麦粉の衣をつけて揚げているんです」
そうなの?
私は、ごくりと唾を飲んだ。
おいしそう。
それに健康的な感じ?
ライさんが私のためにユーミクを一つ買ってくれた。
ほんとは、ダイエット中なんだけど、今日は特別!
テートデイだもの。
私は、受け取ったユーミクをふうふうしながらはむっと一口食べた。
口一杯にほのかな甘みが拡がる。
「おいひい!」
私がいうとライさんが嬉しげに笑った。
なんというか。
この露店を見ていてわかったのだが、魔族たちの暮らしは、想像していたよりもずっと素朴なものらしい。
まるで前世の世界でいうところの中世のような暮らしだな。
もともとがこの世界は、どこも中世ヨーロッパみたいな感じだけど、魔族たちはもう少し時を遡った感じがする。
少しだけ魔族たちの方が人間の文化より遅れている?
そのまま歩き続けると、ぐるりと都を囲んだ高い塀と関所のような門が見えてきた。
門番らしい兵士が何人か立っていてそこを通る人々に目を光らせている。
私たちは、入り口に入るために並んでいる人々の列に加わった。
どんどん私たちの順番が近づいてくるにつれ私は、胸が早鐘を打つのを感じていた。
もし、ここで人間だということがばれたら。
私たちは、確実に殺される!
周囲は、全て魔物だ。
緊張感のあまり私は、足がもつれそうになる。
グリフォン様がそっと私のことを支えてくれる。
グリフォン様は、じっと私を見つめると頷いた。
うん。
私は、ふぅっと息を吐いた。
行くしかないんだ!
これからの人生を切り開くためにも私は、ここを通らなくてはならない。
私たちの番がきてライさんが代表で兵士たちの前に立った。
うん?
なんか話しながらライさんは、兵士たちにそっと小袋を渡した。
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