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8 最果ての国へ(5)

8ー5 鏡

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 8ー5 鏡

 誰のことも受け入れるけど、心の中までは誰も入り込ませない。
 それが、私だった。
 だから、結局、いつも一人ぼっちだった。
 なぜか、私は、ぞくっとして体が震えた。
 なんだか。
 寒い。
 私は、ポツリと呟いた。
 「わからないわ、ランスロット。私には、そういうの、よくわからないの」
 「姉上・・・」
 ランスロットは、憐れむような目で私を見た。
 「大丈夫です。姉上だって、いつか、それを理解するときがきますよ」
 「そうなのかしら?」
 私は、まっすぐにランスロットを見つめた。
 ランスロットは、優しく微笑むとそっと私の頬に触れた。
 「そうであって欲しいと私は、思っています」
 私は、目を閉じてランスロットの手に触れた。
 冷たい手。
 でも、ランスロットは、優しくて。
 私は、なぜか理由もなく泣きたくなる。
 しばらくしてグリフォン様が戻ってくるとランスロットは立ち上がりグリフォン様に歩み寄った。
 「いいですか?あなたが姉上を自分のために利用するのを私は許すつもりはありませんが、今回だけは姉上にめんじて見逃すことにします。ですが、もし、姉上を悲しませるようなことがあれば、そのときは、必ず私の手であなたを罰しますからそのつもりでいてください」
 「ああ、約束しよう」
 グリフォン様は、頷いた。
 「決して俺は、エリンのことを悲しませたりはしない」
 そうなの?
 私は、二人が話しているのをぼんやりと眺めていた。
 ランスロットは、グリフォン様に決して私に手を出さないと誓わせると自分の部屋へと戻っていった
 ほんとにランロットは、過保護なのだ。
 私は、ため息をついた。
 グリフォン様は、私の方へとくるとにっこりと微笑んだ。
 「ランスロットは、お前のことが大好きなんだな。いい奴だ。弟としてはあれだけど」
 弟、か。
 私は、昔、亡くなったお母様に言われたことを思い出した。
 『愛情とは、鏡のようなものなのよ、エリン。あなたが愛せば、きっと相手もあなたを愛してくれるわ』
 私は、ほんとにちゃんとランスロットのことを愛せているのかな?
 前は、嫌われていると思っていたし、私もそんなに好きじゃなかった。
 だけど、今は。
 私は、ふぅっと吐息を漏らした。
 
 
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