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8 最果ての国へ(5)

8ー4 防壁

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 8ー4 防壁

 それから私は、こってりとランスロットからお叱りを受けた。
 ランスロットは、私に言った。
 「姉上は、警戒心がなさすぎなのです」
 「はい、これからは気をつけます」
 私は、ランスロットにこごとを言われてしゅんとうなだれていた。
 確かに私は、淑女にあるまじきことをしたのかもしれない。
 いくら師匠とはいえ男の人のいる部屋で肌を露出するなんて間違いだったのかも。
 だけど、どうしても一刻もはやく体を清めたかったのだ。
 汗の匂いが気になって。
 それをグリフォン様に気づかれたくなかったから。
 「だからといって許されることではないですよ、姉上」
 ランスロットは、まだぶちぶちといっている。
 「だいたい姉上に体臭なんてないでしょう。あったとしても決して不快なものではありませんよ?」
 はい?
 私がランスロットを見上げるとランスロットは、少し頬を赤らめて視線を泳がせていた。
 絶体に思い出しちゃ行けないことを思い出してる!
 私は、ランスロットが何を思い出しているのか考えて頬がかぁっと熱くなった。
 「とにかく!」
 ランスロットがごほん、と咳払いをした。
 「もう二度とこんなことはしないでくださいね、姉上」
 「はい、わかりました」
 私は、しおらしく頷いた。
 そんな私をじっと見つめていたランスロットがふと私に訊ねた。
 「姉上は、もしかしてグリフォンのことがお好きなのですか?」
 「ええ、好きよ」
 私は、即答した。
 「だって、師匠ですもの」
 「そういうことではなく」
 ランスロットがため息をつく。
 「異性としてということです」
 はい?
 私は目をぱちくりさせた。
 私が?
 グリフォン様のことを好き?
 そうなの?
 私は、少し考え込んだ。
 私は、グリフォン様のことが好きなの?
 実は、私は、前世から恋愛というものに疎かった。
 というか、恋をしたことがなかったのかもしれない。
 私は、愛という不確かな概念が理解できなかった。
 家族や友人はいたし、そういった人たちには好意を持ってはいたが、それが愛というものなのかといわれるとよくわからない。
 私は、常に他人との関係に一線を引いていたような気がする。
 なぜかはわからないけど、いつも私は、心に防壁を築いていた。
 
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