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6 最果ての国へ(3)

6ー3 名残

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 6ー3 名残

 「なんだ?これは」
 部屋に戻ってきたグリフォン様は、その場の混乱を見て訊ねられた。
 客室内には、主な家具はベッドが二台ある他には、テーブルと椅子が2脚。
 その狭い空間の中で私を抱いて離そうとしない自称『魔王』の真っ裸の男とその男を睨み付けているランスロットと私が膠着状態で立っていた。
 私は、グリフォン様にできるだけ穏やかな声でことのなりゆきを説明した。
 「じゃあ、あの犬ころがこの男に変化したってことか?」
 グリフォン様が信じがたいという表情できくので私は、頷いた。
 もと犬の人は、私をぎゅうぎゅう抱き締めて偉そうにふふん、と笑った。
 「犬ころじゃねぇ。魔王様だ!」
 「魔王だと?」
 グリフォン様がぎろりと男を睨み付けた。
 「お前が魔王であるわけがない」
 そう。
 魔王になれるのは『魔王の種』を持つ者だけだ。
 そして、今、『魔王の種』を持つのは最果てに眠るグリフォン様の妹君であるマデリンさんなのだ。
 グリフォン様は、しばしの黙考の後、口を開いた。
 「お前が魔王であってもなくてもかまわんが、我々が船に乗せることになったのは犬一匹だけだ。お前には、船から降りてもらう」
 グリフォン様の言葉にラッシーが黙り込む。
 なんか私を抱く手がふるふると震えている?
 私は、ちらりとラッシーのことを見上げた。
 すると、ラッシーは、泣いていた。
 黒い美しい瞳からぽろぽろと涙を流している。
 私は、大人の男の泣くところを見たことがなかったのですごく驚いた。
 そして、それよりも心を奪われたのはラッシーの美しさだった。
 「ら、ラッシー?」
 私は、おそるおそる声をかけた。
 「どうしたの?お腹でも痛いの?」
 「姫・・・」
 ラッシーが涙に濡れた瞳で私を見つめる。
 「姫も俺を捨てるのか?」
 何ですか?
 これ。
 ラッシーのかわいらしさに私は、胸を打たれていた。
 「よしよし」
 私は、とりあえずラッシーを泣き止ませようと思って背中に手をまわすとぽんぽんと叩いた。
 「大丈夫よ、ラッシー。あなたを捨てたりはしないから」
 「本当に?」
 ラッシーは、私の頬に鼻先を擦りよせると私の頬をぺろぺろと舐め始めた。 
 「きゃうっ!」
 私は、思わず声をあげてしまった。
 ラッシーは、しばらく私の頬を舐めていたがはっと気がついて舐めるのをやめた。
 「すまん!」
 少し頬を赤らめているラッシーは、破壊的にかわいらしかった。
 「犬だったときの名残が」
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