62 / 109
6 最果ての国へ(3)
6ー3 名残
しおりを挟む
6ー3 名残
「なんだ?これは」
部屋に戻ってきたグリフォン様は、その場の混乱を見て訊ねられた。
客室内には、主な家具はベッドが二台ある他には、テーブルと椅子が2脚。
その狭い空間の中で私を抱いて離そうとしない自称『魔王』の真っ裸の男とその男を睨み付けているランスロットと私が膠着状態で立っていた。
私は、グリフォン様にできるだけ穏やかな声でことのなりゆきを説明した。
「じゃあ、あの犬ころがこの男に変化したってことか?」
グリフォン様が信じがたいという表情できくので私は、頷いた。
もと犬の人は、私をぎゅうぎゅう抱き締めて偉そうにふふん、と笑った。
「犬ころじゃねぇ。魔王様だ!」
「魔王だと?」
グリフォン様がぎろりと男を睨み付けた。
「お前が魔王であるわけがない」
そう。
魔王になれるのは『魔王の種』を持つ者だけだ。
そして、今、『魔王の種』を持つのは最果てに眠るグリフォン様の妹君であるマデリンさんなのだ。
グリフォン様は、しばしの黙考の後、口を開いた。
「お前が魔王であってもなくてもかまわんが、我々が船に乗せることになったのは犬一匹だけだ。お前には、船から降りてもらう」
グリフォン様の言葉にラッシーが黙り込む。
なんか私を抱く手がふるふると震えている?
私は、ちらりとラッシーのことを見上げた。
すると、ラッシーは、泣いていた。
黒い美しい瞳からぽろぽろと涙を流している。
私は、大人の男の泣くところを見たことがなかったのですごく驚いた。
そして、それよりも心を奪われたのはラッシーの美しさだった。
「ら、ラッシー?」
私は、おそるおそる声をかけた。
「どうしたの?お腹でも痛いの?」
「姫・・・」
ラッシーが涙に濡れた瞳で私を見つめる。
「姫も俺を捨てるのか?」
何ですか?
これ。
ラッシーのかわいらしさに私は、胸を打たれていた。
「よしよし」
私は、とりあえずラッシーを泣き止ませようと思って背中に手をまわすとぽんぽんと叩いた。
「大丈夫よ、ラッシー。あなたを捨てたりはしないから」
「本当に?」
ラッシーは、私の頬に鼻先を擦りよせると私の頬をぺろぺろと舐め始めた。
「きゃうっ!」
私は、思わず声をあげてしまった。
ラッシーは、しばらく私の頬を舐めていたがはっと気がついて舐めるのをやめた。
「すまん!」
少し頬を赤らめているラッシーは、破壊的にかわいらしかった。
「犬だったときの名残が」
「なんだ?これは」
部屋に戻ってきたグリフォン様は、その場の混乱を見て訊ねられた。
客室内には、主な家具はベッドが二台ある他には、テーブルと椅子が2脚。
その狭い空間の中で私を抱いて離そうとしない自称『魔王』の真っ裸の男とその男を睨み付けているランスロットと私が膠着状態で立っていた。
私は、グリフォン様にできるだけ穏やかな声でことのなりゆきを説明した。
「じゃあ、あの犬ころがこの男に変化したってことか?」
グリフォン様が信じがたいという表情できくので私は、頷いた。
もと犬の人は、私をぎゅうぎゅう抱き締めて偉そうにふふん、と笑った。
「犬ころじゃねぇ。魔王様だ!」
「魔王だと?」
グリフォン様がぎろりと男を睨み付けた。
「お前が魔王であるわけがない」
そう。
魔王になれるのは『魔王の種』を持つ者だけだ。
そして、今、『魔王の種』を持つのは最果てに眠るグリフォン様の妹君であるマデリンさんなのだ。
グリフォン様は、しばしの黙考の後、口を開いた。
「お前が魔王であってもなくてもかまわんが、我々が船に乗せることになったのは犬一匹だけだ。お前には、船から降りてもらう」
グリフォン様の言葉にラッシーが黙り込む。
なんか私を抱く手がふるふると震えている?
私は、ちらりとラッシーのことを見上げた。
すると、ラッシーは、泣いていた。
黒い美しい瞳からぽろぽろと涙を流している。
私は、大人の男の泣くところを見たことがなかったのですごく驚いた。
そして、それよりも心を奪われたのはラッシーの美しさだった。
「ら、ラッシー?」
私は、おそるおそる声をかけた。
「どうしたの?お腹でも痛いの?」
「姫・・・」
ラッシーが涙に濡れた瞳で私を見つめる。
「姫も俺を捨てるのか?」
何ですか?
これ。
ラッシーのかわいらしさに私は、胸を打たれていた。
「よしよし」
私は、とりあえずラッシーを泣き止ませようと思って背中に手をまわすとぽんぽんと叩いた。
「大丈夫よ、ラッシー。あなたを捨てたりはしないから」
「本当に?」
ラッシーは、私の頬に鼻先を擦りよせると私の頬をぺろぺろと舐め始めた。
「きゃうっ!」
私は、思わず声をあげてしまった。
ラッシーは、しばらく私の頬を舐めていたがはっと気がついて舐めるのをやめた。
「すまん!」
少し頬を赤らめているラッシーは、破壊的にかわいらしかった。
「犬だったときの名残が」
6
お気に入りに追加
1,238
あなたにおすすめの小説
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
へぇ。美的感覚が違うんですか。なら私は結婚しなくてすみそうですね。え?求婚ですか?ご遠慮します
如月花恋
ファンタジー
この世界では女性はつり目などのキツい印象の方がいいらしい
全くもって分からない
転生した私にはその美的感覚が分からないよ
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる