デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢、前世の記憶を駆使してダイエットする～自立しようと思っているのに気がついたら溺愛されてました～

5 最果ての国へ(2)

5ー8 スカウト

　５ー８　スカウト

　どんなにすごい魔道具でも国が豊かでなければ受け入れられない。
　そう、カイさんは言った。
　「俺たちは、今、イグニス王国の黄金期を築き上げようとしているのだからな」
　カイさんの話をきいていると胸が高鳴ってくる。
　なんだか私も未来に向けて何かしなくては、という気持ちになる。
　そんなことを話していると商会の人が書類を何枚か持ってきてカイさんに差し出した。
　それは、この国で正式な文書を取り交わすときに使われる羊皮紙だった。
　カイさんは、それに目を通すと頷いて私とランスロットにそれを渡した。
　私とランスロットは、それぞれその書類に目を通すとそれにサインをしてカイさんに返した。
　カイさんは、私たちのサインを目にして驚きの声をあげた。
　「エリンちゃん、あんたがエヴァンジェリン・オ・ロランダム伯爵令嬢だったのか？」
　「はい、そうですが」
　私がキョトンとしているとカイさんが身を乗り出して私に迫ってきた。
　「魔道具屋のランカイからきいてないのか？俺があんたに会いたがってるってさ」
　「はぁ・・」
　そういえば領地を出るときにランカイさんのとこに挨拶に言ったときそんなことを言ってたっけ。
　私は、カイさんに訊ねた。
　「それで、なんで私に会いたがってたんですか？」
　「そのことなんだが、な、エリンちゃん。あんた、うちの商会の魔道具開発部門に入る気はないか？」
　はい？
　私は、最初、どういうことかよくわからなかった。
　数分おいてから私は、それが仕事のスカウトだと理解できた。
　それは、このイグニス王国においては一風変わったお誘いだった。
　イグニス王国において貴族の女が働くことなんて考えられない。
　だから私は、自立するためにグリフォン様のもとで魔法を学ぼうと思ったりいろいろと画策していたのだった。
　それが、こんなに簡単にチャンスが降ってわいてくるなんて。
　信じられない！
　突然のことに私は、戸惑いを隠せなかった。
　そんな私にカイさんが背中を押してくれるように告げた。
　「何、別に難しい話じゃないさ。魔道具の開発に協力してくれればいいだけだ。別に実際にエリンちゃんが魔道具を作れなくたってかまわない。エリンちゃんは、新しい魔道具のアイディアを出してくれればいいんだよ」