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1 スローライフ始めました

1ー2 出会い

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 1ー2 出会い

 私は、メイドが起こしにきてくれた時のために寝室のベッド脇のテーブルの上に朝食はいらないというメモを残すと外出することにした。
 お腹がすいていないわけではない。
 実際、お腹がぐぅぐぅ鳴っていた。
 前日の夕食をとってから、まったく何も食べてなかった。
 これは、いわゆるプチ断食だ。
 空腹状態を保つことによって蓄えられた脂肪を消化させるのだ。
 そして、このときに運動をするとさらにエネルギーの燃焼を促すことになる。
 私は、屋敷の裏の森の奥にある湖まで軽い散歩に出かけるつもりだった。
 軽い散歩とはいえ、徒歩で2~3時間の距離にはなる。
 運動不足の私の体力では、今は、この散歩すらきつかった。
 子供の頃、母と一緒に歩いた道だ。
 私は、歩きながら感慨に耽っていた。
 せめて、お母様が生きておられたなら。
 私は、ぶんぶんと、頭を振った。
 弱音を吐くな!
 私は、これからもっともっと強くならなくちゃいけないんだから!
 休み休み歩いていたため湖にたどり着いたのは昼頃のことだった。
 湖は、春の光を反射してキラキラと眩しく輝いていた。
 ほとりには、美しい花々が咲き乱れていて夢のように美しかった。
 私は、湖のほとりに座り込んだ。
 うん。
 私は、足を伸ばして座ると膝を撫でた。
 膝が痛い。
 推定80キロ近いであろうこの肉体を支えているのだ。
 膝も痛くなるというものだ。
 私は、少し休んだら屋敷へと戻るつもりだった。
 しかし、すっかり疲れてしまって。
 気がついたら私は、その草原で眠りに落ちていた。

 気がつくと、私は、見知らぬ場所にいた。
 「う・・ん・・」
 まどろみの中で私は、懐かしい匂いに包まれていた。
 これは・・・ 
 確か、子供の頃、お母様が可愛がっていた犬の匂い?
 私は、ゆっくりと目覚めた。
 そこは、乱雑にものが積み上げられた中にぽっかりと置かれたベッドの上だった。
 私は、がばっと勢いよく起き上がった。
 ここは、どこ?
 「目が覚めたのか?」
 どこからかきき心地のいい男の声がきこえて私は、身構えた。
 うん。
 大丈夫。
 服装に乱れはない。
 「何、考えている?」
 声の主は、ベッド脇に積み上げられた本の山の向こうからぬっと現れた。
 それは、見知らぬ男だった。
 黒い薄汚れた髪を腰まで伸ばしているその男は、長い無精髭を生やしていてまるで黒い熊のように思われた。
 私は、悲鳴をあげるかどう悩んでいた。
 私の様子にきづいたその男は、慌てて弁解した。
 「落ち着け!俺は、何もしていない。ただ、あんなところで寝てたら風邪をひくか、悪けりゃ獣のエサになっちまうからわざわざここまで運んでやったんだ!」
 
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