デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢、前世の記憶を駆使してダイエットする～自立しようと思っているのに気がついたら溺愛されてました～

1 スローライフ始めました

1ー1 再出発

　１ー１　再出発

　魔法学園の卒業記念パーティーの悪夢から１ヶ月がすぎた。
　私は、今、王都から遠くはなれた
場所でのんびりと暮らしていた。
　伯爵領ロンバヌスは、王都から北へ馬車で３日ほどかかるところにある街だった。
　私は、その町外れにあるロランダム伯爵家の屋敷へと戻っていた。
　どうせ学園を卒業した後は、イグニス王家の居城であるランスドール城へ移り住み妃修行に励む予定だったため、婚約を破棄された私には、何の予定もなく完全にフリーの状態だった。
　父も母もカルロ様に婚約破棄された私のことなど見るのも嫌がり、王都の屋敷には居づらくなったこともあった。
　私は、逃げるように王都から領地へと戻った。
　だが、父も母も私が王都を去ることに反対などすることはなかった。
　それどころか厄介払いができるとすら思っているようだった。
　私は、二度と王都へ、というか家族の住む屋敷には戻る気はなかった。
　もう、家や男に振り回される人生はこりごりだ。
　私は、自立した女になるのだ。
　手に職を持ち、１人で強く生きていく。
　そう心を決めていた。
　そのために私は、領地の屋敷へと戻ってきたのだ。
　かつて幼い頃に実の母と暮らした領地に戻ってきた私に屋敷の使用人たちは、困惑を隠せなかった。
　無理もない。
　かつて、母と暮らした頃を知るような使用人は、もう１人も残ってはいなかった。
　新しい母が昔を知る者を全て追い出してしまったから。
　今の使用人たちからすれば、私は、馴染みのないただのお客様のようなものだ。
　しかも、扱いにくい。
　おそらく私が婚約破棄されたということは、この領地にまで拡散されていることだろうし。
　案の定、みな、私のことを腫れ物にさわるように接してきた。
　しかし、私は、かまわなかった。
　私は、領地に戻った翌日からさっそく人生の再出発を始めた。
　それは、もちろんダイエットであり、そして、手に職をつけるための活動だった。
　私は、朝、メイドたちが起こしにくるより早く起き出すと自分で服を着替えて身だしなみを整えた。
　まずは、体力をつける必要があった。
　私は、王都暮らしでまったく体力が落ちていた。
　これでは、ダイエットどころではなかった。