荒ぶる獣たちは、荒野に愛を叫ぶ～捨てられたゴブリン少女は、獣人の王に溺愛されてます～

第４章 変わらない世界

その1

　この世界は、不平等だとわたし、クロト・エルダーは、知っている。
　だって、実際、そうなんだし。
　たった今も思い知らされた。
　今日は、成人の儀式。
　その目玉は、邪神様の神殿で神託を得ること。
　そして、今、目の前で聖女が誕生した。
　聖女に選ばれたのは、 低級学校で同級生だったアンナ・クリークっていう女の子。
　光輝くような金の髪を長く伸ばしててね、瞳は、見たことないぐらいの澄んだ青色。
　目鼻立ちがくっきりしてて、色は、透けるように白い。
　見たこともないぐらいの美少女で男の子達にも、大人たちにもちやほやされてるこの子が聖女に選ばれるのは、なんか当然のことって感じ。
　もう、回りの連中は、アンナのことで頭がいっぱいで残ったわたしたちのことなんて忘れちゃってるけど、まだ神託を受けてない子もいるんだから！
　そう思っていると幼馴染みのキース・リードが呼ばれた。
　キースは、いつみてもカッコいい。
　白銀色の髪を肩まで伸ばしててそれをわたしが去年の誕生日にプレゼントした編み紐でまとめている。
　今日は、真っ白な式服を着ているけどとっても似合ってて王子様みたい。
　きらびやかな式服を着た神官長様がキースの頭上に手を差し出して目を閉じる。
　「この子は、武の祝福を受けているようだ」
　神官長様が目を開く。
　「キース・リード、剣聖」
　わっと辺りの人々が沸く。
　何しろ、こんな辺境の町から聖女と剣聖が誕生したんだし。
　もう、数人の子が残ってるにも関わらず神官たちは、お祭りモード。
　でも、神官長様は、わたしのことも忘れてなかった。
　「クロト・エルダー」
　「はいっ！」
　わたしは、元気いっぱいに返事をすると前にでていく。
　神官長様の前で頭を下げて跪くと白いドレスが回りにふわっと広がった。
　このドレスは、わざわざ妖魔の森の奥深くまで行ってニモネに依頼して作ってもらったドレスなんだ。
　この年で一人であんな遠くの森にまで行けるのはわたしか、伝説の魔女ミリアぐらいだってキースが言ってた。
　もちろん、キースからはもう、一人で行っちゃダメって釘をさされたけど。