竜の国のカイラ～前世は、精霊王の愛し子だったんですが、異世界に転生して聖女の騎士になりました～

第８章 二人の悪役令嬢

8ー9 夜の話

　８ー９　夜の話

　みんなが戻ってきたところでちょっと早めの夕食をとる。
　それからわたしたちは、二人一組で火の番をすることになった。
　最初は、セシリア様とレイナだった。
　わたしたちは、火を取り囲んで毛布をかぶって眠りについた。

　明け方近くにわたしは、ルシーに揺り起こされた。
　「カイラ、起きて」
　「んっ・・」
　わたしは、目を擦りながら起きると火の側へと向かった。
　ルシーは、すでに起きて何やらメモをとっていた。
　わたしは、ルシーの隣に腰を下ろすと他のみんなを見回した。
　みな、日中の疲れのせいかぐっすりと眠っているようだった。
　「カイラは、この学園を卒業したら聖女様のもとへ行くのか？」
　ルシーがわたしにきいた。
　わたしは、炎に照らされて輝くルシーの横顔を眺めながら考えていた。
　「おそらく、そうなるかと」
　「そうか」
　ルシーは、わたしを見つめて微笑んだ。
　「聖女様は、孤独な人だ。きっと君が側にくる日を楽しみにしておられることだろう」
　「ルシーは、聖女アニノマス様にお会いしたことがあるの？」
　わたしが訊ねるとルシーは、目を細めた。
　「ずいぶん前に一度だけ。僕の立太子の儀式のときだったな」
　このメルロープ王国では、王を任命するのは、創生の女神ラナンだった。
　だが女神がそのために降臨することはまずない。
　女神の名のもとに聖女であるアニノマス様が任命するのだ。
　だが、そんなことでもなければおそらく聖女様がいつもおられる聖女の神殿から外へと出られることはないのだろう。
　あの、わたしと出会ったときは、そういう行事のおりの移動中のことだった。
　だとしたらすごい確率でわたしと聖女アニノマス様は、出会えたのだ。
　そこは、創生の女神に感謝するべきなのかもしれない。
　聖女アニノマス様との出会いがわたしの人生を逆転させたのだから。
　「僕は、あの方が騎士を選ばれるならそれは、きっとセツラウスだろうと思っていた」
　ルシーは、とつとつと話した。
　「だけど、あの方は、セツラウスを騎士には選ばなかった」