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第7章 恋する騎士

7ー9 音楽

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 7ー9 音楽

 祭りの当日がきた。
 わたしとラティマ先生は、奉納の舞台にたつための特別な衣装に身を包んだ。
 薄い衣を何枚も重ねた衣装は、まるで花のように美しかった。
 わたしの髪をすきながらアギタスさんの奥さんのルーリさんが感嘆した様子で呟いた。
 「なんてきれいな髪なのかしら。まるで虹色のように輝く銀髪なんてほんとに珍しいわね」
 ルーリさんは、わたしの髪を結い上げるとライファの花を飾り付けた。
 「ほんとにきれいよ、カイラ。まるでラナンの神子のよう」
 ルーリさんは、マオにもライファの花を飾ってくれた。
 というのもまだ竜人の歌唄いが到着してなかったので本番もマオが唄うことになったからだ。
 マオは、本来の大きい猫竜の姿になっていた。
 わたしの背丈よりも大きなマオが、緊張してぷるぷる震えている。
 わたしは、笑いながらマオの背を撫でた。
 「大丈夫。わたしも一緒よ」
 ゆっくりと撫でてやっているうちにマオの震えはおさまっていった。
 「さあ、音楽の時間だ」
 ラギタスさんが声をあげて舞台が始まった。
 わたしとラティマ先生の奏でるティンパロにあわせて静かにラギタスさんが唄い始める。
 静まり返った神殿の中に音楽が流れていく。
 わたしのティンパロの音色にラティマ先生の音が絡み合ってそこにラギタスさんの声が響く。
 美しいときが過ぎていく。
 そして、マオのパートが始まる。
 マオは、口を開くとゆったりとした調子で唄い始めた。
 その歌声は、神殿の中に響き渡り、やがて空へとかえっていく。
 すべてが完璧だった。
 すべてが絡み合い、溶け合って。
 そして、わたしたちは、音楽になっていた。
 
 奉納の曲が終わってもわたしたちは、身動きがとれなかった。
 われんばかりの拍手喝采。
 わたしは、ラティマ先生を見つめた。
 ラティマ先生は、艶やかに微笑んだ。
 「これが音楽よ」
 わたしは、頷いた。
 ラティマ先生は、そっとわたしの肩に手を置くと囁いた。
 「あなたの不思議なお友だちの力、感じたわ」
 うん。
 わたしは、こくこくと頭を振った。
 精霊たちが音楽と一緒に飛び交い、この場にいるすべてを祝福しているのをわたしは、感じていた。
 わたしは、そっと小声で呟いた。
 「ありがとう、みんな」
 
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