69 / 176
第7章 恋する騎士
7ー3 カフィル
しおりを挟む
7ー3 カフィル
翌日、わたしは、朝早くからそっと起き出すと宿屋の入り口に出て待っていた。
すると、しばらくして黒いローブを着たルシーが現れた。
「おはよう、カイラ」
「おはようございます、ルシーディア様」
わたしが礼をとろうとするとルシーは、慌ててわたしの手をとって歩き出した。
「こんなところで立ち話もなんだし、一緒に来て」
わたしたちは、なぜか手をつないで歩き続けた。
しばらくいくと運河に面した場所にある小さな店があった。
ルシーは、そこにわたしを連れて入ると運河がよく見える大きな窓の側の席に座りわたしにも椅子をすすめた。
「座って、カイラ」
ルシーは、わたしが腰かけると近づいてきた女給に向かっていった。
「カフィルを二つ。後、コンフィを頼む」
女給は、こくりと頷くと店の奥へと消えた。
まだ、早朝だというのに小さな店には、もうちらほらと客の姿があった。
ルシーは、わたしに向かい合うと微笑んだ。
「この店は、小さいけど穴場なんだよ。ここからなら運河がよく見えるだろ?」
確かに。
わたしは、窓の外を眺めた。
朝の光にきらきらと水面が輝き美しい。
わたしたちは、しばらく黙って運河を眺めていた。
店の奥から出てきたさっきの女給がわたしたちの前にカップに入った黒い液体と白いクリームのかかった丸いお菓子らしいものを持ってきた。
いい香りがしてマオがくんくんと鼻を鳴らした。
ルシーは、丸い焼き菓子を一つつまむとマオの鼻先に差し出した。
「食べるかい?」
マオは、少し躊躇したがすぐにぱくっとそのお菓子に食いついた。
もぐもぐしているマオを見て、ルシーが相貌を崩す。
「かわいい従魔だね、カイラ」
ルシーは、湯気のたつその黒い液体が入ったカップをわたしにすすめると自分も手にとって一口飲んだ。
「この街の名物なんだ。君も飲んでごらん」
わたしは、カップを手にすると持ち上げて一口口に含んだ。
それは、すごく苦くて、わたしは、思わず吐き出しそうになるのを我慢した。
「殿下!毒が入ってます!」
わたしにルシーは、笑って見せた。
「毒じゃないよ、カイラ。これは、カフィル。この街で飲まれている苦い豆の汁なんだ」
マジか?
翌日、わたしは、朝早くからそっと起き出すと宿屋の入り口に出て待っていた。
すると、しばらくして黒いローブを着たルシーが現れた。
「おはよう、カイラ」
「おはようございます、ルシーディア様」
わたしが礼をとろうとするとルシーは、慌ててわたしの手をとって歩き出した。
「こんなところで立ち話もなんだし、一緒に来て」
わたしたちは、なぜか手をつないで歩き続けた。
しばらくいくと運河に面した場所にある小さな店があった。
ルシーは、そこにわたしを連れて入ると運河がよく見える大きな窓の側の席に座りわたしにも椅子をすすめた。
「座って、カイラ」
ルシーは、わたしが腰かけると近づいてきた女給に向かっていった。
「カフィルを二つ。後、コンフィを頼む」
女給は、こくりと頷くと店の奥へと消えた。
まだ、早朝だというのに小さな店には、もうちらほらと客の姿があった。
ルシーは、わたしに向かい合うと微笑んだ。
「この店は、小さいけど穴場なんだよ。ここからなら運河がよく見えるだろ?」
確かに。
わたしは、窓の外を眺めた。
朝の光にきらきらと水面が輝き美しい。
わたしたちは、しばらく黙って運河を眺めていた。
店の奥から出てきたさっきの女給がわたしたちの前にカップに入った黒い液体と白いクリームのかかった丸いお菓子らしいものを持ってきた。
いい香りがしてマオがくんくんと鼻を鳴らした。
ルシーは、丸い焼き菓子を一つつまむとマオの鼻先に差し出した。
「食べるかい?」
マオは、少し躊躇したがすぐにぱくっとそのお菓子に食いついた。
もぐもぐしているマオを見て、ルシーが相貌を崩す。
「かわいい従魔だね、カイラ」
ルシーは、湯気のたつその黒い液体が入ったカップをわたしにすすめると自分も手にとって一口飲んだ。
「この街の名物なんだ。君も飲んでごらん」
わたしは、カップを手にすると持ち上げて一口口に含んだ。
それは、すごく苦くて、わたしは、思わず吐き出しそうになるのを我慢した。
「殿下!毒が入ってます!」
わたしにルシーは、笑って見せた。
「毒じゃないよ、カイラ。これは、カフィル。この街で飲まれている苦い豆の汁なんだ」
マジか?
0
お気に入りに追加
253
あなたにおすすめの小説
残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)
SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。
しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。
相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。
そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。
無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!
転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。
今年で33歳の社畜でございます
俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました
しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう
汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。
すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。
そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな
私が豚令嬢ですけど、なにか? ~豚のように太った侯爵令嬢に転生しましたが、ダイエットに成功して絶世の美少女になりました~
米津
ファンタジー
侯爵令嬢、フローラ・メイ・フォーブズの体はぶくぶくに太っており、その醜い見た目から豚令嬢と呼ばれていた。
そんな彼女は第一王子の誕生日会で盛大にやらかし、羞恥のあまり首吊自殺を図ったのだが……。
あまりにも首の肉が厚かったために自殺できず、さらには死にかけたことで前世の記憶を取り戻した。
そして、
「ダイエットだ! 太った体など許せん!」
フローラの前世は太った体が嫌いな男だった。
必死にダイエットした結果、豚令嬢から精霊のように美しい少女へと変身を遂げた。
最初は誰も彼女が豚令嬢だとは気づかず……。
フローラの今と昔のギャップに周囲は驚く。
さらに、当人は自分の顔が美少女だと自覚せず、無意識にあらゆる人を魅了していく。
男も女も大人も子供も関係なしに、人々は彼女の魅力に惹かれていく。
悪役令嬢は最強を志す! 〜前世の記憶を思い出したので、とりあえず最強目指して冒険者になろうと思います!〜
フウ
ファンタジー
ソフィア・ルスキューレ公爵令嬢5歳。 先日、第一王子セドリックの婚約者として初めての顔合わせでセドリックの顔を見た瞬間、前世の記憶を思い出しました。
どうやら私は恋愛要素に本格的な……というより鬼畜すぎる難易度の戦闘要素もプラスしたRPGな乙女ゲームの悪役令嬢らしい。
「断罪? 婚約破棄? 国外追放? そして冤罪で殺される? 上等じゃない!」
超絶高スペックな悪役令嬢を舐めるなよっ! 殺される運命というのであれば、最強になってその運命をねじ伏せてやるわ!!
「というわけでお父様! 私、手始めにまず冒険者になります!!」
これは、前世の記憶を思い出したちょっとずれていてポンコツな天然お転婆令嬢が家族の力、自身の力を用いて最強を目指して運命をねじ伏せる物語!!
※ この小説は「小説家になろう」 「カクヨム」でも公開しております。
上記サイトでは先行投稿しております。
めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜
ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました
誠に申し訳ございません。
—————————————————
前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。
名前は山梨 花。
他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。
動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、
転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、
休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。
それは物心ついた時から生涯を終えるまで。
このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。
—————————————————
最後まで読んでくださりありがとうございました!!
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる