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第1章 お化けの姫君

1ー10 知らない部屋

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 1ー10 知らない部屋

 気がつくとわたしは、どこか知らない部屋のベッドに横たわっていた。
 すごくふかふかのベッドで、わたしは、雲の上にいるのかと思ってしまった。
 しかも、シーツは、さらさらだし。
 真っ白で染み一つない。
 それに、なんだかいい匂いがする。
 「気がついた?カイラ」
 マオがわたしの枕元から顔を出すとそのざらざらの舌でわたしの頬をぺろりと舐めた。
 「マオ」
 わたしは、マオを見上げると訊ねた。
 「ここは、どこ?」
 「ここは、領都にある領主様のお屋敷よ」
 はい?
 わたしは、目をしばたいた。
 なんで、わたしが領主様のお屋敷に?
 「気がついたかね」
 ドアが開いて見知らぬおじさんが入ってきたのでわたしは、身構えた。
 「わたし、どうして?」
 「案じることはない、カイラ」
 領主様は、わたしに微笑みかけた。
 「お前は、聖女様をかばって大怪我をしたんだよ」
 わたしは、意識を失う直前のことを思い出していた。
 そうだ。
 あのとき、何かに背後から襲われてわたしは、倒れたんだ。
 それで。
 夢を見て。
 夢?
 わたしは、ベッドの上に体を起こしながら頭を振った。
 いや、あれは。
 わたしの目の前にいくつもの小さな光が飛んでいるのを見てわたしは、確信した。
 あれは、夢じゃない。
 わたしは、精霊界の王の娘サラサリアだった。
 この世界に転生したのだ。
 はぁ、っとわたしは、ため息をついた。
 手違いって。
 わたしは、頭を抱えていた。
 なんで、孤児?
 お父様、せめて普通に家族のいる子供に生まれ変わらせて欲しかった。
 「まだ、混乱しておるのだな。無理もない。お前は、あれから3週間も意識が戻らなかったのだからな」
 領主様が心配そうにわたしを覗き込んだ。
 「しばらくは、私の屋敷で療養するといい」
 「でも」
 わたしは、領主様に告げた。
 「わたし、孤児院に帰らなくては」
 そうだ。
 はやく薬草を持って帰らなくては。
 ってか、3週間?
 マジですか?
 わたしは、ベッドから出ようとしてくらりとよろめいた。
 領主様は、わたしを受け止めるともう一度ベッドへと横たわらせた。
 「無理をしては、いけないよ、カイラ」
 「でも、わたしが薬草を持って帰らないとみんなが」
 わたしが言うのをきいて領主様は、にっこりと微笑んだ。
 「大丈夫、だ。お前のいた孤児院には、ちゃんと医者を派遣した。みんな、快癒している」
 ほんと?
 わたしは、ほっと息をついた。
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