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9 魔王と聖者と浄化の旅(3)
9ー1 学友です!
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9ー1 学友です!
僕は、アリシアさんと共にイグルトからの迎えの馬車に乗り込んだ。
アリシアさんと僕は、馬車の中で互いに口をきくこともなかった。
僕らは、沈黙を守ったまま目的地まで目をそらし過ごした。
ヤマトとイグルトの宿泊している宿屋へと到着すると僕らは、案内役の兵士に馬車から降りるようにと促された。
案内役の兵士は、僕らをその宿屋でたぶん一番いい部屋へと導いた。
そこは、広々としていてみるからに豪華そうな家具が置かれた部屋で、その中心にあるソファには、一人の白髪の男が座っていた。
それは、不思議な雰囲気を持つ男だった。
僕と同じ白い髪だったが、瞳の色は青かった。
服装は、戦に立つ戦士のようには見えず、どちらかというと文官タイプのように思われた。
「お連れいたしました、イグルト様」
兵士の言葉に男は、頷いた。
「ご苦労。下がっていいぞ、ニト」
この男が魔王軍の四天王の一人、イグルト?
僕がぼぅっとしているとアリシアさんが跪くようにと僕を促した。
ハッとして僕がその場に膝をつくとイグルトは僕たちに言葉をかけた。
「アリシア、お前にも苦労をかけるがすまんな」
「いえ、光栄でございます」
アリシアさんが顔をあげることなく応じると、イグルトは訊ねた。
「それが新しい女か?なかなか美しいな。だが、アルビノの人間などよく手に入ったものだ」
「はい」
アリシアさんは、イグルトに答えた。
「蛇の道は蛇、でございます」
アリシアさんの答えにイグルトは、満足そうに頷く。
「どういう経路でこのアルビノの人間を手に入れたのかは知らんが、よくやったな、アリシア」
「はっ!」
アリシアさんは、ますます深く頭を垂れる。
「おほめの言葉をありがとうございます、イグルト様」
「しかし」
イグルトが笑いを含んだ声できいた。
「かの国は魔力量の多いアルビノを重要視して管理下に置いている筈。なぜ、このような場所にいるのか、説明せよ」
「それは」
アリシアさんが口ごもった。
「実は、わたしもよくは存じません。見知らぬ猫の獣人の番が売りにきたのですが、何やら聖者様とあさからぬ関係のようなので買って連れて参りました」
「ほう、聖者殿と、な」
イグルトが歩み寄ってくると僕の顎に手をかけて上を向かせた。
「お前、名はなんという?」
「あ、あの、ぼ、わたしは」
僕は、緊張していた。
「ラム・・ラムと申します」
「聖者とはどういった関係だ?」
イグルトは、僕に穏やかな様子で問いかけた。
僕はどう答えるべきか迷ったが正直に話すことにした。
「わたしは、聖者様がターナンシェ王国王立魔法学園に通われていたときのご学友でございます」
「なるほど学友か。学友がなぜ、ここに?」
僕は、アリシアさんと共にイグルトからの迎えの馬車に乗り込んだ。
アリシアさんと僕は、馬車の中で互いに口をきくこともなかった。
僕らは、沈黙を守ったまま目的地まで目をそらし過ごした。
ヤマトとイグルトの宿泊している宿屋へと到着すると僕らは、案内役の兵士に馬車から降りるようにと促された。
案内役の兵士は、僕らをその宿屋でたぶん一番いい部屋へと導いた。
そこは、広々としていてみるからに豪華そうな家具が置かれた部屋で、その中心にあるソファには、一人の白髪の男が座っていた。
それは、不思議な雰囲気を持つ男だった。
僕と同じ白い髪だったが、瞳の色は青かった。
服装は、戦に立つ戦士のようには見えず、どちらかというと文官タイプのように思われた。
「お連れいたしました、イグルト様」
兵士の言葉に男は、頷いた。
「ご苦労。下がっていいぞ、ニト」
この男が魔王軍の四天王の一人、イグルト?
僕がぼぅっとしているとアリシアさんが跪くようにと僕を促した。
ハッとして僕がその場に膝をつくとイグルトは僕たちに言葉をかけた。
「アリシア、お前にも苦労をかけるがすまんな」
「いえ、光栄でございます」
アリシアさんが顔をあげることなく応じると、イグルトは訊ねた。
「それが新しい女か?なかなか美しいな。だが、アルビノの人間などよく手に入ったものだ」
「はい」
アリシアさんは、イグルトに答えた。
「蛇の道は蛇、でございます」
アリシアさんの答えにイグルトは、満足そうに頷く。
「どういう経路でこのアルビノの人間を手に入れたのかは知らんが、よくやったな、アリシア」
「はっ!」
アリシアさんは、ますます深く頭を垂れる。
「おほめの言葉をありがとうございます、イグルト様」
「しかし」
イグルトが笑いを含んだ声できいた。
「かの国は魔力量の多いアルビノを重要視して管理下に置いている筈。なぜ、このような場所にいるのか、説明せよ」
「それは」
アリシアさんが口ごもった。
「実は、わたしもよくは存じません。見知らぬ猫の獣人の番が売りにきたのですが、何やら聖者様とあさからぬ関係のようなので買って連れて参りました」
「ほう、聖者殿と、な」
イグルトが歩み寄ってくると僕の顎に手をかけて上を向かせた。
「お前、名はなんという?」
「あ、あの、ぼ、わたしは」
僕は、緊張していた。
「ラム・・ラムと申します」
「聖者とはどういった関係だ?」
イグルトは、僕に穏やかな様子で問いかけた。
僕はどう答えるべきか迷ったが正直に話すことにした。
「わたしは、聖者様がターナンシェ王国王立魔法学園に通われていたときのご学友でございます」
「なるほど学友か。学友がなぜ、ここに?」
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